北新地放火で亡くなった院長の思いやり胸に…上司らに退職迫られた男性、6年10か月ぶり職場復帰

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 大阪・北新地クリニック放火殺人事件で亡くなった院長・西沢弘太郎さん(当時49歳)の診療を受けていた大阪府の男性(50)が11月、6年10か月ぶりに職場復帰を果たした。上司らに退職を迫られ、うつ病を発症したが、労災認定を後押ししたのも西沢さんの意見書だった。事件は17日で発生から3年。男性は「今の自分があるのは先生のおかげ」と話している。(岸田藍)

退職迫られ

 労災認定の決定書などによると、男性は府内の学校法人に勤めていた2016年7月、複数の幹部から退職を勧められ、職員研修への出席を指示された。8月の研修では受講者全員の前で外部講師に「もうチャンスはやらない」「職員としてあなたという存在はいらないと言われている」などと退職を迫られた。

クリニックがあったビルの近くで西沢院長とのやりとりを振り返る男性(5日、大阪市北区で)
クリニックがあったビルの近くで西沢院長とのやりとりを振り返る男性(5日、大阪市北区で)

 男性は人格を否定されたと感じて眠れなくなり、食事の味も感じなくなった。翌日から、妻の勧めで西沢さんが院長を務めていた大阪市北区の心療内科「西梅田こころとからだのクリニック」に通い始めた。研修などでの出来事や、不安で何も考えられないことを打ち明けると、西沢さんはじっと耳を傾けてくれた。うつ病と診断され、月に1回程度、カウンセリングを受けるようになった。

 だが、法人幹部に再び退職を迫られ、症状が悪化。18年1月から休職を余儀なくされた。その後、茨木労働基準監督署に労災を申請したが、研修とうつ病発症の因果関係を認められず、大阪労働者災害補償保険審査官に不服申し立てを行った。

励まし支え

 西沢さんは、先行きが見通せない不安を受け止め、「焦らずいきましょう」と男性を励ましてくれた。労災の認定に向け、男性の心理状態を把握するため、診療に弁護士が同席することも快諾し、必要な資料をすぐにそろえてくれた。男性の代理人を務めた谷真介弁護士(大阪弁護士会)は「弁護士への協力に消極的な医師もいるが、西沢先生は『役に立てるなら』と労をいとわなかった」と語る。

 男性は、21年12月17日の事件で西沢さんが犠牲になったと知ったが、しばらく受け入れられず、クリニックに近づくこともできなかった。その2週間前、西沢さんから認定に必要な意見書を受け取ったばかりだった。労基署はうつ病の発症時期を研修前としていたが、審査官は西沢さんの意見などを踏まえ、発症は研修後だとして因果関係を認定。22年12月、労災が認められた。

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