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立川のNPO
立川市の認定NPO法人「育て上げネット」が、不登校や家族関係の不和などで学校や自宅に居場所がなく、孤立する若者たちに、午後9時まで過ごすことができる場所を提供している。新宿・歌舞伎町の「トー横」と呼ばれるエリアでは、若者らが集まり、相次ぐトラブルが社会問題となっているが、同法人の工藤啓理事長は「夜も安心して過ごせる場所と、悩みを受け止められる大人の存在が必要だ」と訴えている。(水戸部絵美)
11月25日夕、同市高松町のビルに設けられたフリースペース「夜のユースセンター」に若者たちが次々と訪れ、ソファに座って談笑していた。棚には漫画やボードゲームなどが置かれ、ギターなどの楽器やパソコンも自由に使うことができる。無料の夕食やお菓子が用意され、ティッシュや生理用品などを持ち帰ることもできる。
「ここに来ると、気持ちが安らぐ」。そう話すのは、昨年から利用している土木作業員の男性(19)だ。父親が暴力を振るうため、家で両親と会話することはなくなった。「スタッフや顔見知りになった利用者となら話しやすい」と笑顔で語る。
毎週立ち寄っているという男子大学生(21)は「大学では勉強をするだけの生活。ここでみんなと話をするだけで、気分をリフレッシュできる」と話していた。
センターは今年4月にスタートし、毎週土曜の午後6時から午後9時に開いている。ひきこもりや不登校、ネグレクトなどによって、家庭や学校に居場所がない10歳代後半から20歳代の若者を中心に、1日30人ほどが集まる。試行実施した2022年度は、1年間で延べ約1000人が利用した。同法人では、04年から若者の就労支援をしていて、センターで相談することもできる。
行政や民間団体による若者支援の窓口は日中に開かれることが多く、生活サイクルが夜型だったり、日中に学校やアルバイトに行ったりする若者と接点を持つことが難しかった。そこで、センターのように夜間に受け入れることでつながることができたケースも多いという。トー横に行っていたという若者も来ており、同市内だけでなく、近隣からも若者が訪れている。
同法人のスタッフ、山崎梓さんは「トー横のような場所では、売春や違法薬物、闇バイトの紹介など悪意のある大人も集まってくる。夜であっても、安心して一息つける空間で、若者たちと信頼関係を築いていきたい」と語る。
立川市では、センターの運営費用の一部を賄うため、ふるさと納税制度を活用したガバメントクラウドファンディング(GCF)を実施している。
目標金額は300万円で、利用者の夕食や生活用品代、光熱費、スタッフの人件費などに活用される。寄付の募集期間は12月末までで、寄付サイト「ふるさとチョイス」で受け付けている。
GCFは市としての初めての試みで、「悩みを抱えた子どもたちを、市も応援していきたい」としている。問い合わせは、市総務課(042・528・4306)へ。