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人手不足から在留資格のない外国人を雇用したとして、鉾田市のキムチ製造会社の元社長(45)が先月、水戸地裁から執行猶予付きの有罪判決を受けた。本県は、不法就労外国人数が昨年まで2年連続で全国最多。大手スーパーに卸すほどの実績ある企業でも、不法滞在者を雇わなければならないほど人手不足に陥っている実態が明らかになり、本県の不法就労問題の根深さを改めて浮き彫りにした。(椿央樹、久保田夢)
■製造追いつかず
「大口の発注に製造が追いつかず、やむを得ず不法滞在の外国人を雇用した」
先月9日の被告人質問で、同市のキムチ製造会社「今泉食品」元社長の男性は、そう本音を漏らした。同社のキムチは多数の販売先を持ち、「唐辛子が利いていて、後を引くおいしさがある」と地元でも愛される逸品だった。
判決などによると、男性は広告代理店勤務などを経て、同社に入社。社長に就任し、先代から経営を引き継いだ当初は赤字が続く苦しい経営状況だったが、8年前に「ヤオコー」「成城石井」など大手スーパーから大口の契約を取り付け、少しずつ風向きも変わった。「これで何とか挽回できるかな」と心が躍ったという。
■身分確認なし
だが、すぐにひずみが生じた。急増した受注量に製造が追いつかなくなったのだ。男性は求人サイトで従業員を募ったが、力仕事も多い製造部門に応募してくる働き手はほとんどいなかった。元従業員の女性から、担い手となる外国人を紹介されたのは、ちょうどその頃だった。不法滞在者であることは「うすうす感じていた」が、製造を止めるわけにもいかず、わらにもすがる思いですぐに採用した。
「顔合わせ」と称した形ばかりの面接では、本来必要なパスポートや在留カードなどでの身分確認は一切しなかった。とにかく受注をさばくだけの「人手が必要だった」という。時給は日本人とほぼ同じ960円で、昇給もある「好待遇」(県警幹部)だ。こうした外国人は、数珠つなぎに採用が決まっていき、やがて社の存続に欠かせない労働力になっていた。今年7月時点で雇用していた外国人は18人に上ったが、全員が不法滞在者だった。
同月、この外国人らが入管難民法違反容疑で集団摘発され、同社は業務が回らなくなり休業した。間もなく男性も逮捕され、受注額も最盛期の1~2割程度に落ち込んだ。懲役1年、執行猶予3年、罰金60万円の有罪判決を言い渡されると、男性は「家族や取引先に多大な迷惑をかけ、後悔しかない」と言葉を絞り出した。
不法就労外国人全国最多 昨年 摘発強化、就労支援も必要
出入国在留管理庁によると、昨年の本県の不法就労外国人は2748人で全国最多だった。全国ワーストの背景には、農業が盛んな本県では農家の人手不足により就労先が多く存在することなどがあるとされる。
こうした現状に対し、県警は入管当局と協力し、不法滞在者の「合同摘発」を進めている。今年上半期は28回実施し、昨年同期比の5倍以上となる計112人を摘発。JAなど外国人材を雇用する団体には、各警察署の署長が赴き、身分確認の徹底を呼びかけている。
ただ、後継者が不足し、経済的にも正規に従業員を雇用する余裕がない一部の農家などでは、不法滞在者と分かっていながら、都合のいい労働力として安く雇用してしまうケースもある。
外国人技能実習生らの支援を行っている会社「交流中心」(鉾田市)の馬興栄専務は「そもそも不法滞在とならないよう、日本に来て働く外国人への就労支援を手厚くすることが必要だ」と訴える。