『イスラエルとパレスチナ』
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『イスラエルとパレスチナ』ヤコヴ・ラブキン著
[レビュアー] 岡美穂子(歴史学者・東京大准教授)
二〇二三年一〇月に始まったイスラエルとガザの紛争は、今もなお戦禍を拡大しながら続き、終わりの見えない緊張と絶望に包まれている。「報復」を通り越した過度の軍事攻撃に振り切ったイスラエルに対する非難の中では、イスラエルとユダヤ教徒全般を混同するものも少なくない。
イスラエル建国の政治思想的支柱であるシオニズムは、全世界のユダヤ教徒から支持されているわけではない。シオニズムはユダヤ教徒に共通する二〇〇〇年の歴史を通じた悲願などではなく、近代ヨーロッパのナショナリズムの副産物であると著者のラブキンは指摘する。またラブキンはシオニズムが厳格なユダヤ教徒が重んじる聖典教義から逸脱したものであるという主張を長年続けてきた。
本書ではイスラエルの建国まで、そして建国後の国内でも、パレスチナのムスリムとの共生を唱える人々は迫害され、時には命を絶たれてきた。本書を読むと、文明の交差地点であるパレスチナへの淡い憧れは吹き飛び、現代に至るまで続くナショナリズムの功罪に直面せざるを得なくなる。鵜飼哲訳。(岩波ブックレット、880円)