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神戸徳洲会病院(神戸市)で医療事故が相次いだ問題で、病院側は、死亡例など15件に対して行った院内検証をおおむね終えた。ただ、調査報告書には事実関係の誤りが見つかるなど、不適切な検証のあり方も透けて見える。思わぬ形で身内を亡くした遺族は、病院側の説明をどう受け止めたのか。(中田智香子)
◇突然の別れ
「終始、説明が人ごとのようで納得がいかない」。昨年1月、心臓のカテーテル(医療用の細い管)検査後に亡くなった80歳代男性の遺族は不満を漏らす。
男性は
男性は受診時には歩けていた。医師も当初は「命に関わるほどではない」と言っており、「突然の死」だった。死因は肺炎とされ、詳しい説明はなかった。
昨年7月、ある報道が遺族の心をざわつかせた。同病院でカテーテルの検査・治療関連の死亡が複数あるとの告発を受け、神戸市が調査に入った、という。
その後、カテーテル以外での「事故疑い」の死亡も相次ぎ、病院は死亡4件を医療事故調査制度の対象として調査。この男性の事例を含む他の11件(うち生存1件)についても、院内で検証する方針を示した。
◇別人の筆跡?
遺族は死亡した原因がわかると期待した。だが、病院がまとめた検証結果で逆に疑念が深まったという。
今年5月末に届いた「個別検証報告」は実質3ページほどで、死亡とカテーテル検査の関連性は認められないと結論付けていた。受診日に明らかな誤記があったほか、読んでも治療経過すらよくわからない。
不信感からカルテの開示請求を行うと、別人とみられる筆跡で、男性の妻の署名の入った見覚えのない同意書が出てきた。
さらに外部専門家の協力を得てカルテと報告書を分析すると、▽「来院時の心臓エコー所見」とするデータは、来院翌日のもの▽来院日に抗生剤を投与したように読めるが、カルテによると投与は翌日――など、複数の
外部の専門医らは治療経過も疑問視する。いずれの専門医も来院時の検査結果から「男性は細菌感染による敗血症」と推測したが、すぐに行うべき抗生剤投与は翌日昼にずれ込んでいた。
ある救急医は「必要性の低いカテーテル検査が緊急で行われる間、敗血症が見逃され、治療が遅れたことで死亡に至ったのではないか」と指摘した。
遺族に謝罪なし 対応「不誠実」
◇再調査求める動き
遺族は9月の個別説明会で疑問点をぶつけた。病院側は同意書への無断署名疑惑について「あったかもしれず代筆と書くべきだった。説明が
医療事故に詳しい堀康司弁護士は「報告書の事実関係に誤りがあるとすれば、検証の客観性や正確性に疑問が生じる。経過が十分に検討されているようには見えない」とする。
遺族によると、病院側から再検証や報告書の修正の申し出はなかった。「事故と認めてほしいわけでも責任追及をしたいわけでもない。不誠実な対応を受け、どう終結させるべきか、苦しんでいる」と語る。
一連の問題を巡っては被害弁護団も結成され、病院側の調査を不服として第三者による再調査を求める動きも出ている。
病院側はこれまでに、患者の糖尿病を見落とした例、カテーテル治療で脚の血管を損傷した例など死亡3件を医療ミスと認めて謝罪した。この男性を含む他の事例の検証結果も近く公表される見通しだ。