九州豪雨後に増えた「無医地区」、過疎に拍車も…浸水で診療所の閉鎖・移転相次ぎ高齢者ら「生活に不安」

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 同県芦北町吉尾地区で唯一の医療機関だった吉尾温泉診療所は豪雨で2メートル以上浸水。運営してきた町は建て替えの可否を検討したが、費用に加え、患者数の減少や医師・看護師不足も足かせとなり、昨年3月に閉所した。

 国の「医療施設等災害復旧費補助金」は激甚災害の場合、公的医療機関への補助率を対象経費の3分の2とし、手厚い支援を設けている。それでも、町の担当者は、地区の人口が豪雨前から2割以上、減少したことを念頭に「住民が減る中で診療報酬は見込めず、断念せざるを得なかった」と苦渋の決断だったと語る。

オンライン診療で心音確認

 八代市の「峯苫医院」は坂本町に診療所を構えていたが、豪雨で被災し、市中心部に移転した。峯苫ゆき子副院長(58)は「医院があった場所は浸水想定が約10メートル。ほかに建てられる場所も、全て何らかの災害の恐れがあった」と明かす。

 こうした中で、峯苫医院は地域を支えようと、坂本町の公民館などに看護師を向かわせ、医師が患者を遠隔で診る「オンライン診療」に取り組んでいる。デジタル聴診器を使って心音を確かめるなどする。

 9月末には3か所を巡回。診察を受けた高齢者(82)は、画面越しに「体調は大丈夫そうですね」と声をかけられ、「よかですよ」と笑顔を見せた。

 住民たちは「先生と話せると安心感がある」と口をそろえる。峯苫副院長は「採算が良くなくても、誰かのためになっているのであれば、できることを続けていきたい」と語る。

 心のケアに取り組む団体もある。坂本町で被災した高齢者らの健康観察を続ける一般社団法人「看護のココロ」代表理事の蓑田由貴・看護師(36)は「自宅にこもりがちになったり、交流が少なくなって笑顔が減ったり、心の状態は予断を許さない。高齢化が進み、加齢に伴う筋力や認知機能の低下も懸念される」と訴える。

 室崎益輝・神戸大名誉教授(防災計画)は「生活再建を果たすうえで、地域医療の充実は一丁目一番地。健康上の悩みや不安にどう応え、暮らしを支えていくのか、行政は知恵を絞るべきだ」と指摘している。

東日本大震災では4000以上の医療施設被災

 2011年の東日本大震災では岩手、宮城、福島3県を中心に4000以上の医療施設が被災。厚生労働省は翌年、医療機関に業務継続計画(BCP)などの作成に努めるよう求める通知を出したが、十分な対策は難しい現状もある。

 1月の能登半島地震では26施設で一時、断水などの被害が出た。水不足や機器の損壊が影響し、石川県では最大7施設で人工透析治療が受けられず、通院患者360人は被災地の外への搬送などを余儀なくされた。

◆無医地区 =半径4キロ以内に50人以上が住んでいるが医療機関を容易に利用できない地域。厚生労働省によると、2022年10月時点で全国に557か所あり、九州・山口・沖縄は約2割(124か所)を占める。

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