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TBSラジオの平日朝のニュース番組「森本毅郎・スタンバイ!」(前6・30)が、11月11日の放送で9000回を迎える。リスナーに愛されて34年。変わりゆく日本、さらに世界を見つめてきた。初回から担当する森本毅郎(85)と遠藤泰子(80)のコンビに、その歩みを振り返ってもらった。(大木隆士)
「3年続けばいいね」と、互いに話していた番組が9000回。「あまり実感ない。結果的に積み重なって……仕事って感じでもないんだなぁ」と森本が言えば、「生活の一部になってます」と遠藤。長年のコンビらしく、息もぴったりに答えた。
番組が始まった1990年はバブル景気の最中だった。その後、日本は“失われた30年”に入り、世界は戦争が絶えない。その中で、特に印象に残っているのは数多くの震災だと口をそろえる。
95年1月17日の阪神大震災、地震が起きた午前5時46分は打ち合わせ中だった。状況が次々と飛び込んでくる。混乱の中、「自前の番組表を書きましたよ」と森本。台本の紙をひっくり返して進行を書き、“陣頭指揮”を執った。未曽有の災害に気持ちは高ぶっても「それを表に出してはいけない、冷静にと心がけました」と振り返る。
「ニュースにまともに向き合う姿勢は変えずに続けてきた」。日替わりでコメンテーターが出演し「ニュースに加え、情報の背景、さらにどういう意味を持つかも解説してもらう。その利便性が番組の生命線だと思う」。
放送のある朝、遠藤は午前4時50分までにはTBSに到着する。「午後9時半就寝、午前3時半起床を律義に守ってきました。ウィークデーは、外で誰かと食事をすることはないです」と言い切る。
森本は5時過ぎに現れ、新聞各紙に目を通す。「夜の間にネットニュースやCNN、スポーツも見ている。いつ寝ているんだろう、私たちの七不思議です」と遠藤が話すと、「僕は上澄みをさらうんですよ。新聞も隅まで読むのではなく、『こことここをいただこうかな』と、わしづかみ方式です」と森本は笑う。
ラジオ番組「永六輔の誰かとどこかで」などを担当していた遠藤は、「スタンバイ!」が始まるまでニュースを本格的に読んだことがなかったという。NHKでキャスターを務めた森本は厳しく、遠藤の読むニュースに向かいの席で「ピッ」と反応することもあった。「何かあったかなって、最初はおびえました」。だが今は森本も全幅の信頼を寄せる。「この人のニュースは日本一。耳にちゃんと残る。仕事に対して謙虚で一生懸命研究している」
孫ほど年の離れたスタッフもいる中で、森本の要求は時に厳しい。けれど「対等、横一線です。言いたいことも言うが、相手からも言ってもらう」。
「森本塾」と遠藤は言う。「『何を怒られているか分からない』と思っても、何年かたってその意味が分かる。そういう塾です」。34年の間に、番組を卒業したスタッフが、それぞれに活躍の場を広げている。「タネが飛んでいって、あちこちに植わり、そこで育ってくれれば」。森本はそう語り、“教え子”たちの活躍を期待している。
来月記念イベント
9000回を記念して11月28日、東京の「練馬文化センター」でイベントが開かれる。番組コメンテーターたちが参加し、ゲストにラジオ界のレジェンド・大沢悠里も招く。
「この番組のリスナーは、ニュースに詳しい。油断も隙もない人たちですから、面白くなければ『なんだよ』となる。心してやらないと」。そう口にしつつ、森本はリスナーとの交流を心待ちにしている。
このほか限定グッズの発売も予定している。詳細は番組ホームページで。