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一方で、バイスタンダーの心的負担も明らかになっている。愛知県の救急救命士らの研究チームが、高齢者施設の利用者の心停止に遭遇した職員360人に尋ねた調査では、約9割にストレス反応がみられた。不安や自責の念、後悔、無力感を訴える声が目立った。
■感謝カード
公的な支援も広がり、同庁の21年調査では、全国の消防本部の約4割が心的ストレスのサポートを実施している。救急隊員が救命への協力に対するお礼と、つらくなった時の相談先を記した「感謝カード」を渡す取り組みが大半だが、現場の混乱もあり、全ての救助者に渡せるわけではない。
このため、千葉県市川市のNPO法人「ちば救命・AED普及研究会」は啓発パンフレット「救助を手伝ってくれたあなたへ」を作成。9月上旬、ウェブサイトに無料公開した。
「結果にかかわらず、手を差し伸べていただいたことは誇らしく、素晴らしい」と呼びかけ、救命処置後に不眠や疲労感などの症状があれば「自覚がなくてもストレスを抱えていることがある」と説明。「救助経験者の話を聞く」といった対処法、相談機関の情報も盛り込んだ。
理事長の本間洋輔・千葉市立海浜病院救急科統括部長は「一人で抱え込まず、誰でも簡単に情報にたどりつけるようにしたかった。気持ちを受け止める仕組みがあることが、救命率の向上につながる」と訴える。
災害や事件、事故などで受ける「惨事ストレス」に詳しい畑中美穂・名城大教授(社会心理学)は「助けたいと思って行動した人が心に傷を受けたままだと、救命から遠ざかりかねない。消防・医療機関の連携の動きもあるが、社会全体でサポートしていくには、保健所や自治体なども協力する必要がある」と指摘する。
▼各団体のウェブサイト
・アクアキッズセーフティープロジェクトの「バイスタンダーサポートサイト」
https://bystandercare.wixsite.com/website
・ちば救命・AED普及研究会
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