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事故や急病など救急現場に居合わせた人を意味する「バイスタンダー」の精神的な負担を軽減する民間の動きが出てきた。「怖かった」「何もできなかった」という不安や後悔のほか、「正しく手当てできたのか」と悩みを抱くことがあるためだ。気持ちに寄り添うことで、救命に安心して関われる仕組みづくりを目指している。(島香奈恵)
〈自転車の高齢者が転倒して頭を打ったところに遭遇した。すぐ意識が戻り、出血もなく、救急搬送されたが、心臓がバクバクした〉
〈倒れた人が手当てを受けているのを初めて見かけたが、何もせず通り過ぎてしまった。モヤモヤする気持ちを抱えたままでいるのがつらい〉
水難事故予防や救命講座に5年前から取り組んできた大阪市のNPO法人「アクアキッズセーフティープロジェクト」に寄せられた声だ。こうした心的ストレスに丁寧に対応することが救命に携わる人を増やすことにつながると考え、同法人は先月、バイスタンダーを対象にオンラインで相談に応じる「バイスタンダーサポートサイト」を開設した。相談は予約制で60分間無料。心理カウンセラーや救助体験者が共感しながら耳を傾ける。
代表理事のすがわらえみさん(42)は大学生の頃、救命講座を受けた後、実際に駅で倒れた男性に出くわした。心臓マッサージなどを試みたが、男性が救急搬送された後から怖くなって手が震えた。思い出すたび、「あれでよかったのか」と不安が募り、熟睡できない日も続いたという。
相談はまだ少ないが、救命講座を開く他の団体から連携の申し出があるといい、「つらくなったら気持ちを吐き出せる場が必要」と語る。
■9割にストレス反応
総務省消防庁の調査によれば、2022年に救急隊員が搬送した心肺停止の傷病者のうち、約7万3000人が市民によって何らかの応急手当てを受けた。1か月後の生存率は、何もされなかった場合に比べ、1・3倍高かった。
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