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佐賀県唐津市・呼子はイカ料理の町として知られる。実家からほど近いこともあり、帰省の折には、時々食べに行く。透き通った身は、うまみがあり、適度な歯ごたえを楽しめる。天ぷらにしてくれるゲソもまた格別だ。
昨年春も出かけたところ、訪ねた店ではすでに売り切れだった。近年、イカの不漁のニュースも聞く。地元の漁協に尋ねると、今年も水揚げは良くないという。原因は、温暖化による水温上昇などが考えられるが、詳しくは分からないそうだ。観光案内所は、「予約ができる店であれば、予約して出かけた方が安心」という。
震災後、取れる魚が様変わり
国内の魚を巡る状況が大きく変わっている。北海道でブリなどが豊漁になる一方、サケやサンマなどは不漁が続く。
宮城県の石巻港は、日本有数の漁港。世界三大漁場のひとつ、東北の三陸・金華山沖に近く、年間約200種類もの魚が水揚げされる。
「東日本大震災後、この10年ほどで、取れる魚が様変わりしています」。石巻魚市場の佐々木茂樹社長はこう話す。冷水を好むタラ、スルメイカ、秋サケ、サンマが取れにくくなり、暖水を好むタチウオ、ブリ、タイ、マダコがよく取れるようになった。
秋から冬に取れるブランドサバ「金華さば」は、昨シーズンはまったくの不漁だった。12月の1回しか取れなかったという。人気の缶詰にも影響した。養殖の銀サケは、例年お盆前まで出荷されるが、今年は、海水温の上昇の影響で、7月上旬に終了した。春先に餌をあまり食べず、魚体も小さめとなった。
一方、「これまで地元になじみのなかったタチウオは、浸透し始めています」と佐々木社長。地元のスーパーでも切り身で売られるようになったそうだ。
苦戦しているのが加工業者。取れる魚が変われば、対応した技術や施設も必要になる。しかし、震災後の事業計画は、それまでの魚種を想定しており、設備などの借入金を返しながら、新たな機械を導入するのはハードルが高い。
佐々木社長は、「魚食の普及は重要課題と考えています。魚の消費量が減る中、回転ずしなどには期待できるのでは」と話す。
漁獲量は減り、食卓も「魚離れ」
国内の漁獲量は減少している。漁業就労者や漁船の減少など生産体制の
食卓の「魚離れ」も進んでいる。水産物の年間1人当たりの消費量は2001年度の40.2キロ・グラムをピークに減少し、22年度には22キロ・グラムと過去最低となった。11年度には、肉類が魚介類を上回った。
読売新聞家庭欄では24年7月に長期連載 「魚 食べてますか」 をスタートさせ、魚食を巡る実情を探っている。漁場の変化や、魚料理の復権への取り組み、ユニークな鮮魚店など多角的に紹介する。こちらも読んでいただければ!
「環境DNA」調査で生態系を知る試み
魚の生態系を知るため、新たな手法を使った調査も始まっている。海や川などの生物に由来する「環境DNA」を用いた調査だ。東北大学の近藤倫生教授らがプロジェクトを進めている。
水中には、魚のふんなどに混じってDNA(デオキシリボ核酸)という物質が放出されている。海水を採取してDNAを調べると、そこに生息している魚種を特定し、その量を推定することもできる。「画期的な手法と言えます」と近藤教授。魚の調査は、魚を捕まえたり、専門家が魚種を調べたりと大きな労力がかかっていたが、バケツで海水を採取すれよいなど、手間は大きく軽減される。子どもを含めた一般市民も調査に参加できる。採取した水から、専用キットで分析サンプルを作り、送ってもらう。2019年には、研究者や市民、企業の協力で、環境DNAの観測網「ANEMONE(アネモネ)」を設立し、データベースは一般公開している。
今夏、大規模な調査を行う予定で、2017年に実施した同様の大規模調査と比較する。年内には、魚の生息域の変化などがデータに基づいた形で示せるのではという。
「これからは、科学に基づいた漁業が重要になり、環境DNAを用いたビッグデータには大きな可能性があると考えます」と近藤教授。