魚食べてますか? イカが不漁、東北でタチウオ…変わる海の環境と食卓

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編集委員 伊藤剛寛

 佐賀県唐津市・呼子はイカ料理の町として知られる。実家からほど近いこともあり、帰省の折には、時々食べに行く。透き通った身は、うまみがあり、適度な歯ごたえを楽しめる。天ぷらにしてくれるゲソもまた格別だ。

呼子のイカ料理
呼子のイカ料理

 昨年春も出かけたところ、訪ねた店ではすでに売り切れだった。近年、イカの不漁のニュースも聞く。地元の漁協に尋ねると、今年も水揚げは良くないという。原因は、温暖化による水温上昇などが考えられるが、詳しくは分からないそうだ。観光案内所は、「予約ができる店であれば、予約して出かけた方が安心」という。

震災後、取れる魚が様変わり

北海道・羅臼漁港に水揚げされたブリ(2024年7月4日、原中直樹撮影)
北海道・羅臼漁港に水揚げされたブリ(2024年7月4日、原中直樹撮影)

 国内の魚を巡る状況が大きく変わっている。北海道でブリなどが豊漁になる一方、サケやサンマなどは不漁が続く。

 宮城県の石巻港は、日本有数の漁港。世界三大漁場のひとつ、東北の三陸・金華山沖に近く、年間約200種類もの魚が水揚げされる。

 「東日本大震災後、この10年ほどで、取れる魚が様変わりしています」。石巻魚市場の佐々木茂樹社長はこう話す。冷水を好むタラ、スルメイカ、秋サケ、サンマが取れにくくなり、暖水を好むタチウオ、ブリ、タイ、マダコがよく取れるようになった。

石巻魚市場の佐々木茂樹社長
石巻魚市場の佐々木茂樹社長

 秋から冬に取れるブランドサバ「金華さば」は、昨シーズンはまったくの不漁だった。12月の1回しか取れなかったという。人気の缶詰にも影響した。養殖の銀サケは、例年お盆前まで出荷されるが、今年は、海水温の上昇の影響で、7月上旬に終了した。春先に餌をあまり食べず、魚体も小さめとなった。

 一方、「これまで地元になじみのなかったタチウオは、浸透し始めています」と佐々木社長。地元のスーパーでも切り身で売られるようになったそうだ。

 苦戦しているのが加工業者。取れる魚が変われば、対応した技術や施設も必要になる。しかし、震災後の事業計画は、それまでの魚種を想定しており、設備などの借入金を返しながら、新たな機械を導入するのはハードルが高い。

 佐々木社長は、「魚食の普及は重要課題と考えています。魚の消費量が減る中、回転ずしなどには期待できるのでは」と話す。

漁獲量は減り、食卓も「魚離れ」

2023年度水産白書より
2023年度水産白書より

 国内の漁獲量は減少している。漁業就労者や漁船の減少など生産体制の 脆弱(ぜいじゃく) 化、海洋環境の変化や水産資源の減少などが背景にある(2023年度水産白書)。魚種により減少の要因は様々だと考えられているが、気候変動による水温上昇、暖流である黒潮の北上なども魚の生息域に影響を与えているとみられる。

2023年度水産白書より
2023年度水産白書より

 食卓の「魚離れ」も進んでいる。水産物の年間1人当たりの消費量は2001年度の40.2キロ・グラムをピークに減少し、22年度には22キロ・グラムと過去最低となった。11年度には、肉類が魚介類を上回った。

2024年7月11日の読売新聞朝刊
2024年7月11日の読売新聞朝刊

 読売新聞家庭欄では24年7月に長期連載 「魚 食べてますか」 をスタートさせ、魚食を巡る実情を探っている。漁場の変化や、魚料理の復権への取り組み、ユニークな鮮魚店など多角的に紹介する。こちらも読んでいただければ!

「環境DNA」調査で生態系を知る試み

東北大の近藤教授
東北大の近藤教授

 魚の生態系を知るため、新たな手法を使った調査も始まっている。海や川などの生物に由来する「環境DNA」を用いた調査だ。東北大学の近藤倫生教授らがプロジェクトを進めている。

 水中には、魚のふんなどに混じってDNA(デオキシリボ核酸)という物質が放出されている。海水を採取してDNAを調べると、そこに生息している魚種を特定し、その量を推定することもできる。「画期的な手法と言えます」と近藤教授。魚の調査は、魚を捕まえたり、専門家が魚種を調べたりと大きな労力がかかっていたが、バケツで海水を採取すれよいなど、手間は大きく軽減される。子どもを含めた一般市民も調査に参加できる。採取した水から、専用キットで分析サンプルを作り、送ってもらう。2019年には、研究者や市民、企業の協力で、環境DNAの観測網「ANEMONE(アネモネ)」を設立し、データベースは一般公開している。

 今夏、大規模な調査を行う予定で、2017年に実施した同様の大規模調査と比較する。年内には、魚の生息域の変化などがデータに基づいた形で示せるのではという。

 「これからは、科学に基づいた漁業が重要になり、環境DNAを用いたビッグデータには大きな可能性があると考えます」と近藤教授。

ビッグデータ解析で変化のトレンドつかむ

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