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「体験格差」という言葉をご存じだろうか。家庭の経済状況などが子どもの様々な体験の幅に影響を及ぼすという意味だ。旅行や自然、芸術などに触れる経験は、家庭に余裕がないと十分な機会が得られない。入試でも社会に出てからも主体性や思考力、表現力が問われる時代には、豊かな体験をしているかどうかがものを言うというわけだ。NPOや企業が支援して普段はできない多様な学習の場を用意し、高校生らが進路について考えるきっかけにしてもらう取り組みが徐々に広がっている。
農業実習で交流した地域に高校生が感謝
「福島で栽培されたお米で、とてもおいしいですよ」。3月上旬、横浜市内の商店街。買い物客でにぎわう通りに設置されたテントで呼び込みをしていたのは、近くの横浜市立横浜総合高校の生徒たち。福島県矢祭町で栽培された米のほか、岩手県の海産物や長野県の菓子、神奈川県内の農家で栽培された野菜やかんきつ類などが並んでいた。いずれも、同校が農業や漁業の実習体験などで交流のある地域の特産品。生徒たちが感謝を込めて販売し、各地の観光PRにもつなげようという「横総大感謝祭」というイベントだ。収益は被災時に役立つ備品の購入に充て、地域の避難所となる横浜市内の小中学校に寄贈する。
横浜総合高校は午前・午後・夜間の3部制定時制高校で、職業教育の一環として実習体験に力を入れている。2018~19年に岩手県釜石市や福島県矢祭町で、希望する生徒が農業などの体験活動を行ったほか、住民から東日本大震災発生後の話も聞いた。新型コロナウイルスの感染拡大以降は、県外での活動が難しくなったため、主に神奈川県内の農家で活動を行ってきた。イチゴや梨の収穫作業などを体験した3年生の女子生徒は「果物を栽培するために何年もかけて苦労して育てていることを初めて知った。農家の人たちとの交流も楽しかった」と話す。テント前で熱心に特産品の説明をしていた1年生の男子生徒は「地元の三浦大根のおいしさや、栽培農家が少なくなっていることを学んだ。飲食業に興味があるので、いい勉強になった」と笑顔を見せた。
今回のイベントは横浜総合高校と、2021年度まで同校の校長を務めた小市聡さんらが設立したNPO法人「体験活動サポート開港場」が企画。小中学校で不登校経験のある生徒や経済的に厳しい家庭の生徒も少なくない状況の中、小市さんは校長時代から農業、漁業などの現場で様々な活動を体験する取り組みを重視してきた。「多様な大人と交流し、充実感を得ることで自己肯定感や社会性を育てたい。お世話になった地域の特産品や観光資源を生徒の手でPRする感謝祭は、活動の集大成になる」と強調する。
この日は、同校の教師や大学生ボランティアが会場運営に携わり、釜石市から訪れた生徒たちも防災の重要性をアピール。横浜市内在住の料理研究家でNPO法人理事の長島由佳さんが特産品の購入者に手作りのおかゆを振る舞うなどして、会場は盛況だった。
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