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NHKは、テレビやラジオでの「放送」が本業とされる。ならば番組をどこまでインターネットに提供できるのか? この線引きを明確にする議論が9月から総務省の有識者会議の作業部会で始まる。テレビ保有者が契約義務を負う受信料が財源である以上、業務範囲の枠付けは不可欠だ。ただ、動画のネット視聴が当たり前の今、遅きに失した感は否めない。そもそも欧州では、番組のネット展開とは別次元の問題として、公共放送を支えてきた受信料制度が今も妥当なのか議論が起きている。作業部会が示す方向性は、来年度からの値下げを盛り込んだNHKの経営計画の修正にも影響するだけに行方が注目される。(文化部 旗本浩二)
「デジタルファースト」の潮流
放送法では、NHKのネット活用業務は任意業務(20条2項)とされ、あくまで放送の補完にとどまっている。見逃し視聴や同時配信を含め、テレビ・ラジオの番組を当たり前のようにネットで楽しめるようになった昨今も、これが大原則だ。というのも、同法64条は「協会(日本放送協会=NHK)の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」と規定。財源である受信料は、放送受信機であるテレビにひも付いているからだ。
同時配信や見逃し配信を行う「NHKプラス」も利用者が増えているが、これも放送の視聴機会拡大に向けた補完的サービスとの位置付けだ。過去番組の有料配信に特化した「NHKオンデマンド」も便利だが、こちらは受信料会計とは別の独立採算で処理されている。ほかにもニュースサイト「NEWS WEB」も浸透しており、形式的な位置付けは別として、感覚的には既にかなりネット展開が進んでいる印象だ。
それでもなおNHKは現在、番組配信に関する社会実証を通じ、ネット空間でも役に立つ存在であることを示そうとしている。英国の公共放送BBCも番組のネット配信を強化する「デジタルファースト戦略」を打ち出しており、世界的な潮流にNHKも何とか歩調を合わせたい考えのようだ。
「本来業務」とすべきか、自民党小委が提言
ならば放送法上の大原則を修正すべきなのか? 最近になって動きが起きた。自民党の「放送法の改正に関する小委員会」は8月、NHKのネット活用業務に関して総務省で検討することなどを求める提言書を寺田総務相に提出。ネット活用業務を「本来業務とするべきかどうか」「本来業務とする場合には、その範囲をどう設定するか」などを検討課題としてあげた。これらを受け、同省の有識者会議「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」の作業部会が9月に設置され、具体的に検証していくことになった。
この作業部会での議論をNHKは大いに注目している。今後の中長期的なネット業務展開にかかわってくるからだ。
5か年計画に延長して収支見極めも
事業運営の指針である経営計画(2021~23年度)では、23年度にBS1、BSプレミアムというハイビジョン画質(2K)の衛星放送を1波削減。衛星放送を2K、4K、8Kの3チャンネルとし、1波となった2Kは4Kと同じ番組を同時放送する方向で検討されている。その上で、衛星契約者を対象に受信料(口座振替・クレジットを利用した2か月払いの場合は月額2170円)の値下げを行う。その原資として、支出削減や剰余金を活用するなどして700億円程度を確保。単純計算すると月額300円程度の値下げとなりそうだが、実際はなかなか難しいようだ。
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