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放送法では、テレビ所有者は受信契約義務を負う。そんな中、先月公表された23年度決算によると、年度末の受信契約総数は4107万件で、19年度末と比べて4年間で100万件以上減少していた。契約対象となるテレビ保有世帯が減っていることや、そもそも日本の総世帯数自体が減少傾向となっていることからすれば、契約総数の減少はやむを得ない面もある。
一方、NHKと契約を結びながら1年以上支払いのない「未収」は昨年度末、166万件で、72万件だった19年度末と比べると倍以上となっている。コロナ禍が要因の一つだが、24年度に入ってからも4、5月の2か月間で1万件増え、167万件となっている。稲葉会長は「営業改革の効果がまだ出ていない」とも指摘する。未契約者や未収者に対してNHKはこれまで、営業スタッフが訪問するなどして契約や支払いを促してきたが、これに要する経費が高すぎるとの批判が根強く、昨年度、外部の専門会社による契約収納活動を終了。できるだけ人手をかけない営業に転換したのだが、それが成果につながっていないというのだ。
昨今の物価高に加え、テレビ離れも追い打ちをかけており、一度NHKに背を向けた未収者を振り向かせるのは容易でない。この点、稲葉会長は「やるべき方法は一つ。NHKの出しているコンテンツをよく知っていただき、『なるほど』と受信料支払いに納得いただけるよう働きかける。それを諦めないことだ」と強調した。NHKのあり方や番組内容に納得がいかないから不払いにつながった人々も多く、確かに会長の言うように“諦めない”姿勢は不可欠だろう。
担当理事を絶望させた20年前の悪夢
ちょうど20年前の04年7月、NHKでは、番組チーフ・プロデューサーによる制作費着服が発覚。その後も不祥事が相次ぐなどして受信料の未収が急増した。当時の海老沢勝二会長の引責辞任にまで至ったが、未収は増える一方で、05年度末決算では359万件にまで達した。悪夢のようにとどまるところを知らぬ未収に、当時の営業担当理事は「絶望感を覚えた」と明かしたが、実はその頃、契約者が支払いを拒んだのは、不祥事そのものより、「隣が支払っていないのに、なぜうちだけ払わねばならないのか」という受信料支払いの不公平感に基づいていた。
そこでNHKは、契約者が不払いに転じやすい営業スタッフの自宅訪問による集金を廃止して口座振替など確実に収納できる仕組みを構築。さらに簡易裁判所を通じた民事督促手続きも導入した。こうした未収抑止策が功を奏し、未収件数は19年度までは順調に減少していただけに、たとえコロナ禍がきっかけだったとしても今の増加傾向を座視するわけにはいかない。稲葉会長も「重大だと思う。もう少し厳密な分析が必要ではないか」と指摘する。
「どうあるべきか本質的な視点を…」と肝に銘ずるなら
かつての不払い急増時には、管理職による不払い者に対する“おわび行脚”も行われており、幹部の中には「当時の苦しみを知らない職員が増えているし、そもそもテレビがあれば契約義務を負う受信料制度を理解していない若手職員もいるのではないか」といぶかる声もある。
ネットが進展した今、テレビを持たない選択をする人も増えており、未収者もそちらに流れる可能性がある。そんな人々に「NHKの番組は優れている」といくら訴えかけても効果がどれほどあるだろうか。このまま未収が増え続ければ、受信料支払いに対する不公平感が再燃する恐れもある。他方、まさに稲葉会長自身が「NHKとしてどうあるべきか本質的な視点を常に忘れないようにしたい」と肝に銘ずるのであれば、未収者増加が意味するものは何か、改めて真剣に考えてみてもいいだろう。
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