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偽造マイナンバーカードを使ったとみられる手口で大阪と東京の地方議員が携帯電話を乗っ取られ、高級腕時計を不正購入されるなどの被害が出ている。公開されていた議員の個人情報が使われた可能性があり、警察が捜査に乗り出した。マイナカードの本人確認が甘い店舗が狙われたとみられ、国は対策を検討している。(梨木美花)
腕時計を購入
大阪府八尾市の松田憲幸市議(43)は4月30日午後、スマートフォンの電波が途切れたことに気づいた。契約するソフトバンクの地元店舗に相談すると、「名古屋市の店舗で機種変更されている」と告げられた。名古屋の店舗に確認したところ、何者かが市議になりすましてマイナカードを提示し、店側はカードの目視のみで本人確認を済ませたという。
その後、機種変更されたスマホを使ったネットショッピングで市議名義のローンが組まれ、225万円のロレックスの腕時計が購入されていたことが判明。腕時計は東京・銀座の店舗で受け取られたという。スマホのキャッシュレス決済でタクシーの乗車料金など約17万円が支払われていた。
大阪府警は、他人になりすまして携帯電話販売店で「スマホをなくした」などと偽り、SIMカードを再発行させてスマホを乗っ取る手口「SIMスワップ」とみて、愛知県警と連携して詳しい経緯を調べている。
東京都の風間
目視のみ
両議員はホームページで自身の生年月日や住所、携帯電話番号などを公表していた。マイナカードには氏名と住所、顔写真が記載されており、こうした個人情報が利用され、顔写真を差し替えて偽造された可能性が高い。だが、両議員によると、いずれの店舗もマイナカードの目視だけで、ICチップを使った本人確認は行っていなかったという。
議員の被害を受け、ソフトバンクの宮川潤一社長は今月9日の記者会見で「マイナカードと合わせて二重の本人確認をする運用が一部店舗で不十分だった」と述べ、偽造カードを使った乗っ取りを防ぐ仕組みを各店舗に順次導入する方針を表明した。
河野デジタル相は本人確認の方法を目視確認からICチップによる確認に切り替えるよう促している。総務省も本人確認の強化策について検討を進める。
SIMスワップを巡っては2022年にインターネットバンキングを使うなどした不正送金被害が78件発生。警察庁と総務省は同年秋、大手携帯電話事業者に本人確認の強化を要請し、被害が急減していた。ITジャーナリストの三上洋さんは「以前は偽造免許証が使われるケースが多かったが、免許証のICチップを読み取って本人確認する手法が広がったため、犯人側が偽造マイナカードに目を付けたのではないか」と分析する。