米国がイスラエルに甘い理由
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■イスラエルとイスラム主義組織ハマスによる23年10月からの戦闘では、双方に戦争犯罪が指摘される。
■米国はイスラエルと「特別な関係」にあり、バイデン政権も「イスラエルには自衛権がある」と同国を擁護する。
■背景には、米国内で大きな影響力を持つ親イスラエル・ロビーへの配慮がある。だが、民間人の被害拡大を受け、若い世代はパレスチナに同情的になっている。
■ロシアのウクライナ侵略との比較で、米国の対応に「二重基準」との批判がアラブ諸国などから上がる。国際法を守るという観点からも好ましいことではない。
イスラム主義組織ハマスとの戦闘で、イスラエル軍はハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザで本格的地上戦を断行。病院や難民キャンプにもハマスの地下拠点があるとして、激しい攻撃を加え、国際人道法違反との国際的批判を招いた。パレスチナの民間人への被害が拡大する中、イスラエルを擁護し続ける米国にも「二重基準」との批判が飛び火する。それにもかかわらず米国がイスラエルをかばい続ける背景には、強力な圧力団体の存在があるが、若い「Z世代」には反発も広がる。2024年11月5日に実施される米大統領選に、中東情勢はどう影響するのだろうか。
国際的非難
今回の戦闘は、2023年10月7日にハマスがイスラエルを奇襲攻撃し、約1200人を殺害、240人以上を人質にとったのが発端だ。今回、先に手を出したのはハマスだが、その後の批判は、むしろイスラエルに集中する。
イスラエルのネタニヤフ首相は即座に「ハマスをせん滅する」と宣言し、空爆と地上部隊による激しい攻撃を開始した。ハマスによる一部人質の解放を条件にした、7日間の「戦闘休止」を経て、イスラエル軍の攻撃は範囲を広げ、激しさを増した。ガザ当局によれば、12月20日時点で死者は2万人を超えた。その4割は子どもという。ガザは、がれきの山と化し、人口の8割が住まいを追われた。
イスラエルは奇襲を受けた直後から水、食料、燃料、医薬品といった基本的な生活必需品のガザへの搬入を厳しく制限した。ガザ市民は、最低限の食べ物や飲み水の確保にも苦労し、衛生状態が悪化する中、行き場を失った。「生き地獄」(国連幹部)に取り残されたのだ。
この惨状に、中立を基本とする国連幹部や米国の友好国からも「おぞましい状況と甚大な犠牲に動揺している」(国連のグテレス事務総長)、「戦争にもルールがある。イスラエル人もパレスチナ人も、罪のない命の価値は同じだ」(カナダのトルドー首相)と異例の批判が上がった。
イスラエルが11月15日、ガザ北部最大のシファ病院の攻撃に踏み切ると、アラブ諸国を中心にイスラエルの国際人道法違反を非難する声が国際社会全体に広がった。
では、国際人道法はどう定めるのか。
民間人への攻撃はダメ
明治学院大学の東澤靖教授によれば、国際人道法は、戦争の方法や手段を規制するハーグ陸戦条約・規制、戦闘の犠牲者の保護を定めるジュネーブ4条約と第1、第2追加議定書、慣習国際法、赤十字国際委員会(ICRC)がまとめた慣習法―などからなる。
<1>戦闘員・軍事目標と民間人・民用物を区別し、後者を攻撃対象としてはならない<2>攻撃する側は警告や自制などの予防措置を取る一方、防御する側も「人間の盾」を使ってはならない<3>医療施設や医療活動、文化財や礼拝所などへの攻撃は禁止する<4>飢餓の状態に置いたり、無差別兵器を用いたり、人質を取ったりすることは禁止する<5>特に子どもは十分に保護する―などを定める。また、「均衡の原則」は過度の損害をもたらすような軍事行動を禁止する。
ジュネーブ諸条約は、これらへの著しい違反については、加盟国に「戦争犯罪」として自国で捜査、訴追することを求める。国際人道法には明確な罰則規定がなく、これが最大限の措置と言える。しかし、自国の違反を自ら進んで認め、捜査する国はなかなか出ないのが現状だ。
この状況を改善しようと、2002年に発効したローマ規程により設立されたのが国際刑事裁判所(ICC)だ(注1)。人道に対する犯罪、戦争犯罪、ジェノサイドなどを犯した個人を、国際法に基づき訴追・処罰する。被害の現場になった国や被害にあった人の訴えに基づき、罪を犯した個人をICCが捜査し、裁く。加盟国・地域が現場となった犯罪であれば、容疑者が国籍を有する国がICCに未加盟でも関係ない。
例えば、ICCは2023年3月には、ウクライナから子どもたちをロシアに連れ去る戦争犯罪に加担した疑いがあるとして、プーチン露大統領に逮捕状を出した。ロシアはICCに未加盟だが、ウクライナは加盟国でロシアによる戦争犯罪をICCに訴えていた。
プーチン氏が裁きにかけられる可能性は現実的にはゼロに近い。それでも、プーチン氏が外遊できる国は、ICC非加盟国に限定されるようになった。加盟国にはプーチン氏の逮捕義務があるからだ。
イスラエル、ハマス双方に罪
イスラエル、ハマスはお互いの行動を「戦争犯罪だ」と非難合戦を展開し、〝証拠〟をSNSにアップするなどして、世論にアピールする。
東澤教授は、イスラエル軍の行動のうち、軍事目標以外への砲撃と生活基盤の破壊、医療活動への攻撃、民間人の不法な追放・移送・移動などが戦争犯罪に当たる可能性が高いと指摘する。
ハマスはガザを実効支配していたが主権国家ではなく、約3万人とされるハマスの戦闘員も正規軍ではない。このため、適用される戦争犯罪が、国家間の武力紛争(国際的武力紛争)にかかわるものか、国家と非国家主体との武力紛争(非国際的武力紛争)にかかるものか、専門家の間で意見が分かれる。
東澤教授はいずれの場合でも戦争犯罪は成立し、またハマスにも国家間の戦争犯罪が適用されるとの立場で、「当初の奇襲作戦での民間人殺害や、人質をとったこと、ガザの一般市民を『人間の盾』としていること、軍事目標以外へのミサイル攻撃などが戦争犯罪に当たる可能性がある」と話す。
ガザの面積は365平方キロ。日本でいえば東京23区の6割ほどだ。そこに約230万人がひしめき合って暮らしていた。ハマスの戦闘員に、そのシンパを加えたところで、圧倒的多数は保護されるべき民間人といえる。
ちなみに、イスラエルはICCには未加盟だが、パレスチナ自治政府は加盟地域となっている。ICCは、ガザで発生した事案に対し、管轄権を行使できるとの立場だ。
ICCのカリム・カーン主任検察官は12月3日、イスラエルとパレスチナ自治区ヨルダン川西岸を訪れ、10月7日の奇襲は「最も深刻な国際犯罪にほかならない」とハマスを非難しつつも、「イスラエルの反撃の手法は、武力紛争に関する諸法により精査されてしかるべきだ」との認識を示す声明を発表した(注2)。声明はまた、「イスラエルは武力紛争を規定する法の下で行動しなければならないし、そのことを熟知しているはずだ」と同国をけん制した。カーン氏は捜査を続ける方針だ。
米国の二重基準
国際社会の批判の矛先はイスラエルにとどまらず、最大の支援国で、イスラエルの庇護者をもって任じる米国や欧州主要国にも向く。特に米国は一貫して、「イスラエルには自衛の権利がある」(バイデン米大統領)とイスラエルを擁護する。
ウクライナを侵略したロシアに対しては、欧米はこぞって、他国の領土を侵略してはならないという「法の支配」の原則を破り、一般市民を殺害することで人権や人道主義という普遍的価値観をないがしろにしたと非難し、制裁などを科した。ところが、イスラエルの戦争犯罪が疑われる行動には目をつぶる。
アラブ諸国やグローバル・サウスは、これを「二重基準(ダブル・スタンダード)」と見る。
米国が、国連の場で厳しい目にさらされたのが、10月18日に開かれたガザ情勢に関する安保理会合だ。議長国(当時)ブラジルが調整を尽くし、提出した決議案に対し、米国が唯一、反対票を投じ、拒否権により葬り去ったのだ。
決議案は、ガザ市民の生命にかかわるような人道支援を行うため、戦闘の一時的停止を促していた。日本は「穏当な内容だ」(外務省幹部)と賛成。安保理で唯一のアラブからの国だったアラブ首長国連邦(UAE)も「完璧な文言ではないが、順守されるべき原則を示した」と支持した。
しかし、米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は、「イスラエルの自衛権への言及がない」と約3年ぶりに拒否権を行使したのだ。
自衛権について、東澤教授は「国連憲章51条が定める自衛権は、急迫性などの一定の厳格な条件下でのみ認められるものだ。イスラエルの反撃・攻撃は明らかに均衡を欠き、過剰だ」と指摘する。
ブラジルのダネゼ大使は「人道上の大惨事を前に、安保理が機能不全に陥っていることは、国際社会のためにならない」と名指しを避けつつも、米国を批判。棄権したロシアのネベンジャ大使は「我々は米国の偽善と二重基準を目の当たりにした」と大演説をぶった。
米国もさすがに、まずいと思ったのだろう。11月15日には、「子どもの命を救うような人道支援を目的に、イスラエルとハマスに戦闘休止を求める」という安保理決議案には反対せず、棄権にとどめた。英国、ロシアも棄権に回り、戦闘開始から5週間以上を経て、ようやく国連安保理は関連決議の採択にこぎつけた。
長い争い
グテレス国連事務総長は10月24日、「パレスチナの人々は56年間にわたり、息の詰まるような占領下におかれてきた」と同情を示したが、パレスチナ問題の根は深い。
歴史を振り返れば、聖書でもおなじみのダビデ王がユダヤ人の国を、エルサレムを首都に建国したのは紀元前10世紀のことだ。この国は今から約2000年前にローマ帝国に滅ぼされ、ユダヤ人は中東のほかアフリカ、ロシア、欧州などに離散した。各地で迫害を受けることが多く、いつの日か故郷の地に帰るというのが悲願となった。
それが具体的に動いたのが、20世紀はじめの第1次大戦だ。当時、この一帯を領土としたオスマントルコと戦うにあたり、英国が戦費調達を目的に、「支援してくれれば、いずれパレスチナの地にユダヤ人の国の建設を後押しする」とユダヤ系財閥ロスチャイルド家に約束した。
問題なのは、英国が同様の約束をアラブ人にもしたことだ。さらに、仏露にはこの地の分割も持ちかけた。英国史に汚点を残す、「3枚舌外交」だ。
その後、パレスチナは英国の委任統治領となり、この間、主に東欧からのユダヤ人移民が急増した。第2次大戦を経て、国連総会は1947年にはユダヤ人とアラブ人の二つの国をパレスチナの地に作り、エルサレムは国際管理下に置くという決議を採択した。
しかし、この地に住んでいるパレスチナ人は「なぜ自分たちの土地にユダヤ人の国を作らなければならないのか」と猛反発し、周辺のアラブ諸国も同調した。
1948年5月14日にイスラエルが建国を宣言すると、その翌日、ヨルダン、エジプト、シリアなどアラブ諸国が攻め入った。第1次中東戦争だ。戦争は断続的に73年の第4次まで行われ、イスラエルは占領地域を拡大していった。
ただ、第1次中東戦争の時、今のヨルダン川西岸はヨルダンが、ガザ地区はエジプトが占領した時期があり、パレスチナ人の多くが避難した。それが今のパレスチナ自治区におけるガザ地区とヨルダン川西岸につながった。ヨルダン川西岸には現在、約320万人が暮らす。
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)によれば、イスラエルの建国によって約70万人のパレスチナ人が家や土地を追われ、生計の手段を失った。シリア、ヨルダン、レバノンに逃れ、難民生活が3世代、4世代に及び、この3か国でUNRWAがパレスチナ難民と認定する人は現在約計336万人に上る(注3)。
ホロコーストへの罪の意識
米国や欧州主要国が「イスラエルには自衛権がある」と繰り返し、寄り添う背景には、ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)に手をこまねいたという負い目があるだろう。ユダヤ人約600万人虐殺の直接的な加害国となったドイツはもとより、自国に強制収容所が点在した東欧諸国、ナチスがユダヤ人から資産を没収し、暴行を加え、どこかへと連行するのを目撃し、中には協力者もいた西欧諸国。米国や英国は「ユダヤ人の強制収容施設で、異常なことが起きている」と類推するに足る情報を得ていた。
しかし、米国も欧州主要国も具体的な救援の手を差し伸べなかった。
例えば、ドイツ国内でユダヤ人迫害が本格化した1938年7月には、米国やドイツ周辺国など32か国の代表などがフランスの保養地エビアンに集まり、ドイツからのユダヤ人難民の扱いについて協議した。しかし、会議を呼びかけた米国も、その他の大半の国も、自国の不況が深刻化することを恐れ、難民の受け入れを増やそうとはしなかった。
強力な圧力団体
エビアン会議での対応や、その翌年、ドイツからの脱出を図るユダヤ人を乗せ、同国を出港したセントルイス号を米国に近づけようとしなかったことにも見られるように、ルーズベルト大統領(民主党、在任期間1933~45年)はユダヤ人に冷たかった。
米国の親イスラエル政策は、その後任のトルーマン大統領(同、同45~53年)から始まったといえる。ホロコーストへの個人的な同情のほか、ユダヤ系の資金や票が選挙のために欲しかったこと、ユダヤ系の親友がいたことなどが理由として挙げられる。
トルーマン氏はイスラエルが1948年に建国を宣言すると、そのわずか11分後に国家として承認。イスラエルと米国の「特別な関係」の萌芽となった。
米ソ冷戦が激化すると、ソ連はエジプトなどアラブ諸国に積極的な軍事支援を行った。これに対し米国は、中東地域で唯一の民主主義国家であるイスラエルとの関係を緊密化した。イスラエルは地域における「米国の戦略的資産」となった。
1979年にはイランで革命が発生し、米国に敵対するようになった。イランが核開発などを推進し、地域で力を増す中、米国にとってイスラエルの重要性は増した。
米国のイスラエルへの肩入れは数字に表れる。イスラエルは米国最大の被援助国で、米議会調査局によれば、1946年から2023年の間の援助総額は実に1587億ドルに上る(注4)。インフレを勘案すれば、この額は倍程度になるとみられる。
イスラエル建国後、米国におけるイスラエル・ロビーも「ホロコーストの歴史を繰り返させない」と活動を活発化させた。米イスラエル広報委員会(AIPAC)などは豊富な資金を背景に全米有数の圧力団体に成長した。民主、共和両党に献金し、親イスラエル議員の誕生とイスラエル寄りの政策立案を後押しする。反イスラエルとみなす候補者を落選させる運動も恐れられるようになった。
米国内のユダヤ系人口は約750万人。イスラエル国外では最もユダヤ系が多いが、米国全体の人口比でみれば2・4%にすぎない。だが、ユダヤ系は教育熱心で、政財界からエンタメ界まで人材を輩出する。バイデン政権の主要閣僚を見ても、ブリンケン国務、イエレン財務両長官がユダヤ系だ。
財界にもユダヤ系は多い。トランプ大統領(当時)が2018年5月、国際的非難の中、駐イスラエル米大使館をテルアビブからエルサレムに移転したのも、大口献金者だったユダヤ系カジノ王の歓心を買うためだったとされる。
さらに有権者の4人に1人とされるキリスト教福音派はパレスチナにユダヤ人国家があることを極めて重視し、親イスラエル政策を後押しする。
米国の若者世代の意識
ユダヤ票は元来、マイノリティーの党とされる民主党の支持基盤だった。慶応大の渡辺靖教授は「古いタイプの政治家であるバイデン氏は直感的にイスラエルに寄り添う」と指摘する。24年11月5日に迫った大統領選を前に、ユダヤ票にそっぽを向かれたくないというのはバイデン氏の政治家としての習い性だろう。
しかし、有権者には変化がみられる。ガザでの民間人被害が拡大するにつれ、ミレニアル世代(1981~96年生まれ)やZ世代(97~2012年生まれ)がパレスチナ人に同情的になっているのだ。
ピュー・リサーチ・センターが23年11月27日から12月3日に実施した調査では、「イスラエルの対ハマス軍事作戦は行き過ぎか」との問いに「そう思う」と答えたのが65歳以上では16%だったのが、18~34歳では38%と倍以上だった。特に、民主党を支持するとした18~34歳では56%が行き過ぎとの認識を示した。
NPR(全米公共ラジオ)とPBSが10月11日に実施した合同世論調査でも、「米政府はイスラエル支持を公言するべきだ」と答えた人はベビーブーム世代(1946~64年生まれ)では83%だったのに、ミレニアル世代とZ世代では48%にとどまった。
民主党はただでさえ、バイデン氏が属する中道派と左派の対立が先鋭化している。渡辺教授は「本選になれば、民主、共和両候補がイスラエル寄りの姿勢を競うことになるだろうが、バイデン大統領といえども、これまでのような無条件のイスラエル支持の姿勢は維持しづらいのではないか」とみる。
背景にあるのは激戦州の動向だ。今年の大統領選ではウィスコンシン、ペンシルベニア、アリゾナといった6州程度の州の投票結果が勝敗を左右することになりそうだが、この中には例えばミシガン州のように全米平均の1・3%よりも、イスラム系人口が多い州がある。イスラム系とZ世代が政権の中東政策に反発し、共和党候補に投票するところまではいかなくとも、棄権するだけで、バイデン氏の再選戦略を狂わせることもあり得る。
イスラエルがガザ南部での作戦を激化させる中、バイデン氏は12月12日には、「イスラエルは無差別爆撃により、国際的な支持を失いつつある」「ネタニヤフ氏は変わらなければならない」と珍しく、公の場でイスラエルに苦言を呈した。バイデン政権が内外のイスラエル批判を意識していることの表れだ。
見えない青写真
米国の悩みは、今回の作戦が終了した後も尾を引くことは必至だ。
仮にイスラエルが「一定の成果を上げた」として、ガザから軍を引いた後、ガザを誰が、どう統治するか―。イスラエルにも、米国にも明確な青写真がないとみられる。ただ、ハマスに代わって誰が統治を担うにせよ、空白状態が生まれるようなことがあれば、ガザがイスラム過激派による新たなテロの温床となる懸念が高まる。
1993年に米国の仲介でまとまったイスラエルとパレスチナの和平合意「オスロ合意」は今回の戦闘により、崩壊した。今後、新たな合意を模索しようにもパレスチナ、イスラエル双方にかつてないレベルで相手への憎悪と不信感が渦巻く。
中東発のテロは経済も脅かす。イエメンの親イラン武装組織フーシは10月、「パレスチナへの連帯」として、イエメン近くの紅海で日本企業が運航する貨物船を拿捕。今後ともイスラエルと関係する船を攻撃対象とすると宣言した。
このような状況下、グローバル・サウスなどによる対米「二重基準」批判にはどのような意味があるのか。東澤教授は「大国が準当事者として、国際人道法を守らないケースもあると示すことにより、世界各地で紛争の火種を抱える当事者に対し、国際人道法の『たが』を外すことにつながりかねない」と懸念する。
世界はモラル・リーダーを欠いたまま、不安定な多極化時代に突入しつつある。
- 注釈
- (注1)https://www.icc-cpi.int/
- (注2)https://www.icc-cpi.int/news/icc-prosecutor-karim-khan-kc-concludes-first-visit-israel-and-state-palestine-icc-prosecutor
- (注3)https://www.unrwa.org/where-we-work/jordan
- (注4)https://sgp.fas.org/crs/mideast/RL33222.pdf
- 主要参考文献
- 立山良司「ユダヤとアメリカ―揺れ動くイスラエル・ロビー」(中公新書)
- ジョン・J・ミアシャイマー、スティーヴン・M・ウォルト「イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策1、2」(講談社)