なんと、「紀元前から」探し始めて、まだ「たったの51個」…じつは「偶数しか見つかっていない」完全数の、じつに「謎だらけ」性質

完全数はなぜ「完全」なのか

「完全数」という名称は、古代ギリシャの数学者・ピタゴラスが与えたといわれています。聖書のある解説者は、6と28が完全数であることの根拠を、天地創造が6日でなされ、月が地球の周りを28日で1周することにあると考えました。

しかし、聖アウグスチヌスは「神が6日で世界を創ったから6が完全数なのではなく、6が完全数だから、神は世界を6日間で創ったのだ」といっています。

1世紀頃までに、さらに2つの完全数496、8128が見つかっています。

古代ギリシャの数学者・ユークリッドは著書『原論』の中で、

2ⁿ-1が素数のとき、2ⁿ⁻¹(2ⁿ-1)は完全数である

という定理を書いています。実際、n=2のとき、2ⁿ-1=2²-1=3が素数だから、

2ⁿ⁻¹(2ⁿ-1)=2・3=6

です。また、n=3のとき、2ⁿ-1=2³-1=7が素数だから、

2ⁿ⁻¹(2ⁿ-1)=4・7=28

となります。

このユークリッドの定理より、2ⁿ-1の形の素数を見つければ、完全数が見つかることになります。そして面白いことに、2ⁿ-1が素数ならnが素数であることがいえるので、素数nについて、2ⁿ-1が素数である場合を考えればよいことがわかります。

3の次の素数は5で、2⁵-1=31は素数なので、3番目の完全数

2ⁿ⁻¹(2ⁿ-1)=16・31=496

が得られます。次の素数7について、2⁷-1=127も素数なので、4番目の完全数

2ⁿ⁻¹(2ⁿ-1)=64・127=8128

が得られます。

しかし、ある数が素数であるかどうかを判定するのは非常に難しく、5つ目の完全数が見つかったのは1400年ほど後のことです。7の次の素数11に対し2¹¹-1=2047=23・89で素数ではないので、完全数は得られません。次の素数13に対して2¹³-1=8191は素数なので、5番目の完全数

2ⁿ⁻¹(2ⁿ-1)=4096・8191=33550336

が得られます。

立ちはだかる難題

2ⁿ-1の形の数は「メルセンヌ数」とよばれ、これが素数のとき「メルセンヌ素数」とよばれています。メルセンヌは16世紀の神学者で、この形の素数を研究したことにより彼の名がついています。

【写真】マラン・メルセンヌの肖像数学のほか、物理や哲学、音楽理論にも秀でた研究を遺した神学者のマラン・メルセンヌ photo by gettyimages

2ⁿ-1の形の素数が見つかれば完全数が得られるのですが、では、この式ですべての完全数が得られるのでしょうか。

18世紀の数学者・オイラーは

偶数の完全数は2ⁿ⁻¹(2ⁿ-1)(2ⁿ-1は素数)である

ことを示しています。つまり、2ⁿ-1の形の素数を見つければ、偶数の完全数はすべて得られることが、このオイラーの定理によって保証されるのです。

また、完全数の1の位を見ると、すべて6か8になっていますが、これは2ⁿ⁻¹(2ⁿ-1)の形から簡単に示すことができます。偶数の完全数の形はわかっていますが、偶数の完全数が無数に存在しているか、いいかえるとメルセンヌ素数が無数に存在しているかどうかはわかっていません。

では、奇数の完全数はあるのでしょうか。

じつは、奇数の完全数が存在するかどうかはわかっていません。奇数の完全数は1つも見つかっていませんし、その存在についての証明もありません。

ただし、10¹⁵⁰⁰以下の範囲にはないことがわかっています。そして、もし奇数の完全数が存在すれば、同じ素因数を重複して数えたときに素因数の個数が101個以上であることや、最大素因数は10⁸より大きくなることなどがわかっています。

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