なぜ日本はここまで「衰退」したのか…多くの人が取り憑かれた「病理の正体」

自己責任論の欺瞞

もし価値が一定で有限ならば、誰かが価値あるものを得ているのは別の誰かから奪っている以外にありえない。善人対しても「我々に気づかせないほど巧妙に、我々の価値を奪っているのでは」という疑念がよぎることになる。

こうした誤った推論により、日本の現状を誰かのせいにする言説が流行した。若者が悪い、高齢者が悪い、男性が悪い、女性が悪い、労働者が悪い、資本家が悪い、政治家が悪い、国民が悪い……。現代では誰もが対立を煽る言葉に右往左往している。

自己責任論という名の、責任回避の詐術に全ての人が疲弊させられてきた。誰もが別の誰かのせいにし、自ら責任を取る人はどこにもいないかのようだ。

まるで日本の戦争責任問題である。

国民は官僚が悪いといい、官僚は軍部が悪いといい、軍部は政治家が悪いといい、政治家は国民が悪いといって元に戻ってしまい、責任の所在が消えてしまう。そのうちに「空気が悪い」「時代が悪い」ということになる。総・無責任体制と表現できるだろう。