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粉飾した決算書で銀行をだまし、最大5億円の融資を受けられるようにしたとして、大阪府警は30日、医療機器商社「白井松器械」(大阪市中央区、民事再生手続き中)の元社長・弘野俊彦(62)(大阪府豊中市)、元専務・羽田同徳(68)(同府枚方市)両容疑者を詐欺容疑で逮捕した。捜査関係者への取材でわかった。同社は約25年前から粉飾決算を続け、金融機関からの融資約28億円は未返済という。
捜査関係者によると、両容疑者は共謀し、それぞれ同社の社長と専務だった2022年12月、売上高を水増しし、借入金を少なくして好調な業績を装った決算書を大阪市内の銀行に提出。最大3億円の融資を受けられるようにした上、23年2月には「事業拡大で運転資金が必要」と偽り、限度額を5億円に増額させた疑い。
民事再生手続きの開始申立書などによると、同社の創業は1872年。資本金は3000万円で、病理・解剖用機器の開発や販売などで業績を伸ばしたが、競合他社の参入などで資金繰りが徐々に悪化して経営難に陥った。1999年頃から決算書などの粉飾を始め、複数の取引先金融機関にこれらを提出して融資を引き出していたという。
弘野容疑者は2013年10月に社長に、羽田容疑者は翌11月に専務に就任。コロナ禍で借入金がかさみ、運転資金名目でさらに融資を求めたことで、23年2月以降、財務状況を疑問視した複数の金融機関から一括返済を求められ、不正が発覚した。同社の代理人弁護士によると、負債総額は約32億7000万円で、うち約28億5300万円が10金融機関からの融資金だった。
同社は23年9月、大阪地裁に民事再生手続きを申請し、適用された。今年4月、弘野容疑者は退任、羽田容疑者は辞任した。弘野容疑者は逮捕前の取材に「対応は弁護士に任せている」と話していた。
「引くに引けなくなった」
羽田容疑者は逮捕前、読売新聞の取材に粉飾決算を認めていた。
――いつから粉飾決算で融資を受けていたのか。
20年以上前に当時の社長が始めた。自分は経理係長で、「経営の立て直しのためにつなぎとしてやりなさい」というトップの指示には逆らえなかった。その後、代々の社長に引き継がれた。
――関与は。
主導はしていない。引くに引けなくなったし、やめる決断を下す立場にもなかった。
――弘野容疑者の指示は。
「従来通りに継続して」と言われ、粉飾を続けることだと認識していた。
――詐欺ではないか。
うその数字を見せていたので否定はできない。会社の歴史を終わらせたくないとの思いだった。やめておけばよかったという後悔はある。