----M----026-----------------
----a-----------------------------
----n-----------------------
----P-u-k-u--------------
-----------------------------------
---------------------------------------------------------------
日本が戦争に負けて人々の暮らしは 一変しました。
違法にお金を儲けている人もいましたがほとんどの人々が生きることに必死でした。
(重之)靴磨きま~す!
(学)いらっしゃいませ!(重之)靴磨きま~す!
(学)いらっしゃいませ!(タカ)終わりました。 10銭です。
まあまあやな。 ほれ。
足りません。
まあまあや言うたやろ。
半額分の出来やな。そういうこっちゃ。
(笑い声)
吉乃。
お母さん。 これ。(克子)え?
4人で靴磨きして稼いでん。
(福子)靴磨き!?(学)僕もやったんやで。
いつ そんなこと…。
ごめんなさい。 せやけど勉強も ちゃんとやってたから。
(吉乃)タカ姉ちゃんが教えてくれんねん。
せやから受け取って お母さん。
♪~
ごめんね。
何で ごめんねやの。
♪~
♪「丸まってる背中に もらい泣き」
♪「恥じだって一緒に」
♪「あなたとならトゥラッタッタ♪」
♪「飛行機雲ぼんやり眺む」
♪「心ここに在らず」
♪「年間トータル もししたら」
♪「付き合うあたしすごい?」
♪「とぼけてる眉毛に もらい笑い」
♪「照れだってなんだって」
♪「あなたとならトゥラッタッタ♪」
♪「もらい泣き もらい笑い もらい怒り」
♪「もらいっ恥じ どんと来い!」
♪「晴天も曇天も霹靂も」
♪「さあ あなたとトゥラッタッタ♪」
(鈴)克子が 泣いてた?
(萬平)金を稼いでくれるのはありがたいけど子どもたちを働かせるのはつらいんだろうな。そう。
克子が嘆くのは もっともやわ。
なんとかしてよ 萬平さん!
いつまでも ここに居候するつもり?萬平さんは 肩身が狭いとは思わないの?
思ってますけど…。
私たちは 着物を売ってお金を作ってるやない。
お母さんは自分の着物は売らないくせに。
もう嫌 こんな竹の子みたいな生活。
竹の子?竹の子の皮をむくみたいに一枚一枚着ているものが なくなっていく。
なるほど。 それは うまい言い方だ。
お母さんが 自分の着物を売ってるならうまい言い方かもしれんけど。
私の着物は売りません。あんな高価な着物を闇市なんかで。
萬平さんは 何もしないの?
福子と結婚する時 お金の苦労はさせないって言うてたわよね。
させてますよ 貧乏に。
申し訳ありません。
上郡に買い出しに行ってるやない萬平さんは。
ぎゅうぎゅう詰めの列車に乗って。
そんなことは 誰でもできる。
あなたは 発明家なんでしょ。会社がなくなったって何か みんなが欲しがるものを考え出すとか できないの?
簡単に…。私は 萬平さんに聞いてるんです。
考えます。 すいません。
♪~
ここに いらっしゃったんですね。
どうして?
忠彦さんの仕事場は見たことがなかったから。
勝手に入っちゃいけなかったかな。
そんなことないと思うけど。
気にせんといて下さいね。さっき お母さんが言うたこと。
みんなで頑張ればなんとか生きていくことはできます。
萬平さんはもっと先のことを考えて下さい。
そういうわけにもいかないよ。
頂きます。(一同)頂きます。
また すいとん。
(吉乃)もう嫌い。今は そんな好き嫌いは…。
私も うんざり。
早く なんとかしなくちゃ。
私たちが稼いだお金でおいしいもんは買われへんの?
おいしいもんは ほんまに高いのよ。もうちょっと辛抱して。
ええ考えがある。
目閉じて。
何やの。ええから 目閉じて。
心の中で思うのよ。
これは すいとんじゃない。
ちょっと小さめの大福餅。
ええ?信じるんです!
口の中に入れたら 甘くて おいしくてすご~く幸せな気持ちになる。
ほんま?ほんまよ。
うん さあ 目つむったまま食べて!
う~ん! 大福餅や~!
ちゃう。大福餅やない。
すいとんよ。すいとんやね。
甘うない。嫌い。
やっぱり…。
分かりました。
私の着物を売ってもいいわ。
お母さん!
お~。 これは なかなか ええ着物やな。
いくらで買うてくれますか?うん 150円やな。
150円!?そんな安物やありませんよ。
それ以上出せ言うんやったらいらんがな!
もう乱暴に扱わんといて下さい。
あなたは この着物の価値が全然分かってない!
へえへえ。そのとおりや。 僕に見せてみ。
これは 結城やな。(鈴)そうです。
こんなやつに結城の価値を分かれいう方がむちゃな話や。
何やと こら!何?
世良さん?
(世良)あ…。私です。 福子です!
おお 福ちゃん! 生きとったんか!
だ… 誰?(世良)福ちゃんのお姉さん?
あっ まあ!おお~ ハハ。
立花君!世良さん!
久しぶりやな!君も無事やったか!
世良さんこそよくぞご無事で!
世良さん あの着物高う買うてくれはったんですよ。
ささ お上がり下さい。
世良さんは 今 何をされてるんですか?
せやからそういう言い方は やめてくれよ。
君は 僕より年上なんやから。
熱っ! 熱っ…。世良さんの方が年下?
僕は 相変わらず商売やってるで。世良商事は健在や。
まあ 従業員はおらんしちょっと やり方も変わったけどな。
変わったというと?はっきり言うと闇屋と一緒やな。 アハハ。
闇屋?世良さんが?
違法に ものを仕入れて売りさばく。
金のないやつから安う買いたたいたものを金のあるやつに高う売る。
熱っ! 熱すぎまっせ お母さん。
ごめんなさい。そしたら 悪い人やないですか。
ほんまや。このご時世 ええやつも悪いやつもあるかいな。
せやろ 立花君。はあ…。
ちょっと待って。そしたら 私から買うた着物は…。
3倍の値つけて誰かに売ります。
3倍!?それが商売や。
そんな闇屋みたいなこと。せやから 闇屋やて言うとるやろが。
(鈴)着物を返して下さい。
せやけど 僕は この着物を買うのに300円払たで。
でも それを3倍にして儲けるんでしょ。
不公平です。
あんなあ 今は不公平の時代ですわ。
戦死した人間と 無事で帰ってきた人間。
抑留された人間と 帰国できた人間。
戦犯にされた人間と 免れた人間。
闇で儲けた人間と儲けられへんかった人間。
飢えてる人間と たらふく食うてる人間。
焼け出された人間と 焼け残った人間。
不公平が当たり前やのにそれに文句言うとる時点でもう あかんのです。
・(子どもたち)ただいま~!おっ 子どもらが帰ってきたな。
お母さん 今日は儲かったで。8円20銭や。
僕 靴磨き頑張った。おお 靴磨きか。 偉いな。
よっしゃ。 玄関にある僕の靴磨いてくれたら1円払ったるぞ。
ほんま?(世良)ああ。
ちょっと待ちなさい。うちの子の本職は 靴磨きではありません。
僕は 親切心で言うたんやけどなあ。
う~…私 よう分からんようになってきた。
世良さんがええ人なんか 悪い人なんか。
(鈴)ええ人なわけないやない。(世良)せやから 最前から言うてますやろ。
ええも 悪いもない。あるのは不公平だけやて。
さっきから黙って聞いとるけど 立花君。君は 僕の言うことが分かっとるはずや。
僕は 残念やで。
立花君が不公平の負け組でくすぶってんのが。 なあ。
(世良)ほな 僕は この辺で。
はよ出てこい 発明家の立花君。
(戸の開閉音)
フッ…相変わらず たくましいな 世良さんは。
戦争中もうまく立ち回ってたんでしょうね。
そうだろうな。
せやけど世良さんと萬平さんは違いますから。
分かってる。
でも 世良さんみたいに自信を持って自分はこうだと言える人間になりたい。
そんな人 なかなか いませんよ。
そう 今日ね 配給所で見たんです。
身元を証明するものは?せやから ない言うてるやろ!
なければ 配給はできません。
家も家財道具も皆 焼けてしもたんやて!
せめて はんこだけでも。そんなもん残ってるわけないやろ!
自分を証明するものさえ ないんです。
そんな人が たくさんいます。
はんこ…。
家も何もかも燃えてしもたんやからしかたないんです みんな。
はんこがあればいいのか。
えっ?
じゃあ 作ってやればいいじゃないか。
はんこをですか。
そうだ。自分が何者かを証明する大事なものだ。