加齢に伴い、持病を抱えている人も増えてくる。平地では問題なく過ごせていても、山ではそうはいかないこともある。

「糖尿病の方が低血糖を起こし、フラフラの状態でやってきたことがありました。糖尿病があっても登山は楽しめますが、注意が必要です。

 血糖値を下げるために体内のインスリンを増やす薬や注射を使用している場合が多いのですが、その量は日常的な運動量に合わせてあるため、カロリーを大量に消費する登山では、低血糖を起こしてしまう可能性があるからです。

 幸い、ブドウ糖をなめてもらうだけで回復しましたが、糖尿病以外にも、心疾患や脳疾患など持病のある方は、登る前に主治医と相談し、アドバイスをもらうべきですね。日常生活ではコントロールできている病気も、山では悪化する可能性があります」

 高山病にも、中高年は若いころ以上に注意が必要だ。

「頭痛、吐き気、めまいなど、高山病の症状で受診される中高年は本当に多いです。酸素濃度が平地の70%程度しかない高山では、血中酸素濃度が下がり、高山病の危険が増すので、心肺機能が低下している方は特に気を付けていただきたい」

山岳診療の名医が勧める
中高年のための安全登山対策

 中高年の登山者に、齋藤医師が勧める安全対策は5点ある。

(1)登山前にメディカルチェックを受ける

 平地では元気でも、山では思いがけず体調を崩すことがある。また、心臓や脳などの、注意が必要な持病もある。登山に行く前にはぜひ、メディカルチェックを受けよう。

「日本登山医学会の登山者検診ネットワークに参加している医療機関なら、山の医学に詳しい専門医が、健康状態だけでなく、受診者が考えている登山計画の危険度を判定し、山での健康管理に対するアドバイスもしてくれます」。