築地市場もご多分に漏れず、都が作成した図表2のように、1990年度の取扱量は約75万トンだったが、16年度は約41万トンと半分強に減った。金額も同じ年度の比較で、7550億円から4292億円に減少している。さらに築地から豊洲への移転に伴って、設備投資をする体力のない水産仲卸業者の廃業が相次ぐ。取扱量と取扱金額の減少は今後も避けられない。
にもかかわらず都の試算は、19年度に約79万トン、約6025億円と突如増加。その後も増え続け、23年度には約97万トン、約7467億円と築地のピーク時並みにV字回復するという夢の試算となっている。
なぜか。農水省への認可申請を手掛けた都新市場整備部の大場誠子・市場政策課長は週刊ダイヤモンドの取材に「試算は04年度に策定した『豊洲新市場整備基本計画』の中でまとめたもので、気密性の高い豊洲の構造の特性によって取扱量、金額ともに増えると考えた」と話す。
だが図表2によると、04年当時でも、築地の取扱量は60万トン程度。しかもその後激減しているにもかかわらず、10年以上前の試算をそのまま今年8月に農水省に提出したわけだ。
大場課長は「現状と乖離があるのは理解しているが、それでも都はこの数字の実現に向けて取り組んでいく」と言い切った。走り始めたら止まらない、ダメな公共事業のお手本のような回答だが、農水省もよく、都のインチキにお墨付きを与えたものである。
実は問題はこの3つにとどまらず、そもそも買い出しに来る業者の駐車場が足りないとか、周辺道路の大渋滞の可能性など、開場を間近に控えているとは思えないような課題が噴出している。にもかかわらず都は、これらをまともに解決することなく、ひたすら移転に向けて突き進んでいる。