都新市場整備部の山本諭・環境改善担当課長は週刊ダイヤモンドの取材に「9月の降水量は27日までで282.5ミリと例年より多かったため」と水位超過の原因を説明した。

 台風24号の分を加えた9月の合計降水量は300ミリを超えたが、過去に9月の降水量が400ミリを超えた年もあり、今年の9月だけが記録的に多かったわけではない。近年、想定外のゲリラ豪雨や長雨が頻発していることを考えれば、降水量の平均値にこだわるべき理由もない。

 そしてそもそも、降水量が多ければ水位が基準を超えても良いとは、誰も言っていない。

 山本課長も「いつ水位を低下させるのかという見通しを、われわれが示せるものではない」と認めた。このままでは、小池知事の安全宣言の根拠を欠いたまま、豊洲が開場されることになる。

ただでさえ物流効率が下がる豊洲で
フォークリフトが運べる重量も減少

フォークリフトPhoto by S.O.

 2つ目の問題は、市場内の物流が大幅に制限されることだ。築地では現状、使用されるフォークリフトは2.5トンまで荷物を運べるものが主流だとされるが、豊洲ではほとんどのフォークリフトが1.5トンまでしか運べないものになってしまうのだ。

 築地で実際に荷物の運搬を手掛ける「小揚」と呼ばれる業者の労働組合で委員長を務める小鍋浩一さんによると、かつて築地では2トンまで運べるフォークリフトが使われたこともあったが、時間との勝負である場内で、小揚げの業者はどうしても一度に大量の荷物を運ぼうとする。2トンのフォークリフトでさえ、前部のフォークに乗せる荷物が重すぎて、車両の後部が浮き上がるほどだったため、今ではあまり使われなくなったという。

 それでも豊洲では、1.5トンまでしか運べないフォークリフトを使わざるを得ず、小鍋さんは「一度に運べる荷物の量が減るので、その分作業時間が大幅に延びる。豊洲に新しく合理的な市場を造ったはずなのに、なぜ、そんな非合理的な働き方を強いられるのか」と憤りを隠さない。