FITが終了した住宅用太陽光発電が取れる選択肢は、売電か自家消費の二つしかない。
自家消費とは、電気を自給自足することとほぼ同義といえる。昼間に発電して余った電気を自宅に設置する蓄電池や電気自動車(EV)にためておき、夜間に消費する仕組みだ。
自家消費することのメリットは、簡単に言うと、売るより使った方が得だということにある。東京電力エナジーパートナーの一般的な電気料金の単価は26円/キロワット時くらいで、現在の太陽光発電の単価は11円/キロワット時。つまり、電力会社から買う電気よりも自宅で発電した電気の方が安いのだ。
政府はFIT終了を「自家消費型のライフスタイルへの転換を図る契機」と位置付ける。ただし現在の蓄電池の相場は80万円から160万円。EVは補助金込みで350万円程度と、いずれも一般家庭には大きな負担だ。
政府は、自家消費のメリットをアピールすることで、蓄電池の需要を喚起し、メーカーの技術革新によるコストダウンを誘導しようとしているのだ。
では、引き続き売電する選択肢はどうか。残念ながら、利用者が得する効果は期待できない。
「買い取ってもいいけど、せいぜい2~3円/キロワット時でしょう。ただで引き取ってもいいくらい」。ある大手電力会社の関係者は、本音をこう打ち明ける。
電気はためられないという性質上、需要と供給を一致させなければ、送配電網に負荷がかかり停電を引き起こす。太陽光発電は天候によって発電量が左右されるため、需要と供給のバランスを保つのが非常に難しい。大手電力会社にとって太陽光発電は“厄介者”だ。
そんな厄介者をFITによる破格の値段で買い取れたのは、電力会社がコストに一定程度の利潤を上乗せして電気料金を設定できる「総括原価方式」があったからだ。