『隣人、それから。38度線の北』の写真『隣人、それから。38度線の北』より

初沢 先日、関西の朝鮮総連の関係者数名にあの件について聞いたんです。そしたら「いや、スリーパーセル自体はいる可能性はあるんじゃないか!スパイは朝鮮に限らないけど」って結構あっけらかんとしている。「三浦さんの発言についてはどうでしょう」って言ったら「いろんな人がいろんなこと言ってるからね。ははは」くらいの反応。実際、あの発言が原因で、例えば朝鮮学校の子どもたちが危害に遭うようなことにも至ってない。誰があの発言に怒っていたんですか?

三浦 ツイッターや電話攻勢で批判を受けましたが、目立っていたのはしばき隊という組織の方々でしたね。

初沢 ああ、しばき隊。人権派の方々ですね。

三浦 日本人として、言葉の選び方に対する反省はあります。私の言論は、英語では批判を浴びたことはありません。まったく同じことを書いているのですが、批判を浴びるのは日本でだけですから。あの発言は、そもそも現実主義に基づく戦争反対でした。

 ただ、炎上時にはひとつの懸念を感じました。安全保障の議論を封殺される懸念ですね。非難されるのは構わないけれど、封殺できるっていうのは困りますね。

初沢 でも逆に炎上したことでスリーパーセルという言葉が広まっちゃいましたよね。

三浦 ええ。この問題は語りにくくて、今でも公開情報、報道は少ないですね。北朝鮮の一部を取材しても、政府からの情報がなければ工作や組織の全体像がつかめないという権威主義体制ならではの根深さもある。ただ、日本人拉致の目的が、精緻な方言や生活習慣を含めた日本語と日本文化を教えさせることにあったことは明らかにされています。

テロを起こすまでは
テロリストじゃない

初沢 拉致の理由については2002年の小泉首相訪朝時に、金正日総書記自身が言及していました。