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♪～
（律）ない…。
ない。　ない！
ない！　ない！
（鈴愛）おはよう　律。　早いね。鈴愛！
盗まれた。えっ？
そよ風ファンが盗まれた！
何もかも　根こそぎ　盗まれた。
えっ！？　えっ！
あっ　津曲！
えっ？
♪～
♪「おはよう　世の中」
♪「夢を連れて　繰り返した」
♪「湯気には生活のメロディ」
♪「鶏の　歌声も」
♪「線路　風の話し声も」
♪「すべてはモノラルのメロディ」
♪「涙零れる音は」
♪「咲いた花がはじく雨音」
♪「悲しみに青空を」
♪「つづく日々の道の先を」
♪「塞ぐ影に」
♪「アイデアを」
♪「雨の音で歌を歌おう」
♪「すべて超えて届け」
♪～
あの人　津曲さん息子さんの修次郎君にそよ風ファン　自分で作ったって嘘ついてたんです。
（恵子）ひどいわ　あなたたち。いくら一度　見え張って修次郎の前でホラ吹いたからって…。
パソコンのパスワードヒットエンドランの時から私が変えてなかったのがよくなかった。
変えろよ。ちょっと待って。　あなたたちがあんな大変な思いして開発してるの見てて横から　かすめ取るなんて。そんな事　うちの兄が…するな。　あの人ならする。
えっ。恵子さん。
＜案の定　津曲　そよ風ファンを大手メーカーに持ち込んでいました＞
[℡]
[℡]
（津曲）もしもし　修次郎　どうした？
[℡]お父さん　仕事中？　ごめん。
ん…　大丈夫だぞ。　どうした？
（修次郎）先生に怒られた。[℡]何で。
産休で先生が代わって社会の時間に来た　男の先生が僕のマスク見てインフルエンザかって聞くから違います。[℡]うん。
何か　うつしちゃいけない菌でも持ってんのかって言われてみんな笑って。うん。
でも　僕　お父さん。
マスク外すと胸が苦しくなるんだ。
うん…。
修次郎　マスク取らなくていいぞ。大丈夫だ。
今　どこだ？[℡]学校。
そのまま帰れ。え？
そのまま帰っていいぞ。うちに帰れ。
え？
明日　おとうさん　学校に行って先生に話しとくから。
でも　お父さん。
こういうのは　親に頼っちゃいけないんじゃないの？
自分で　どうにかしなきゃいけないんじゃないの？
違う。　修次郎。お前は　まだ子どもだ。
相手は　頭でっかちの大人だ。
お前が到底太刀打ちできる相手じゃないしそんなものに太刀打ちする必要もない。
おとうさんに任せときなさい。
お父さん　僕は　かっこ悪い。
友達もできない。
友達なんか要らない。
こびるな。　自分でいろ。
無理して　みんなに合わせるな。
お父さんみたいになりたい。
えっ　何　言ってんだ。
強く　正直に自分の意思を持ちたい。
（ドアが開く音）
もしもし　修次郎。
あの　明日おとうさん　学校行くからな。
詳しい事は　また後でな。
うん　それじゃあな。
♪～
まことに申し訳ありません！
実を言いますと　あの…こちらの　そよ風の扇風機今　試させて頂いていたんですけどもその際重大な欠陥が見つかりました。
家庭用のコンセントその電力だと　羽根が動きません。
や…　それ　駄目でしょ。
すいません。
どうして　こんな事したの？お金？
違う違う。修次郎に　いいとこ見せたくて。
ほら　おとうさんの扇風機だよっつって。
本当にごめんなさい。
あの…。
帝都電機は何て？（津曲）えっ？
あの　大手メーカーがどういう反応を示したか知りたい。
あっ　いや　あの…プレゼンまでには至りませんであの　途中で改心して踵を返しました。あそ。
えっ　律。　そよ風ファンは大手メーカーが飛びつくような扇風機じゃないんか？
いや…。プレゼンしたらみんなが寄ってたかって。
そうとも言えない。どうして？　これ　かっこいいし。
そよ風なんでしょ？　出てくる風。体によさそう。　気持ちいいし。
高い。（３人）えっ。
そよ風ファンの価格どう見積もっても一台　３万円前後。
えっ。えっ？
とにかく　これそよ風を再現するためにモーターをＡＣモーターからＤＣブラシレスモーターにかえました。
この　ＤＣブラシレスモーターものすっごい高い。
ＡＣの１０倍する。よって　単価が上がる。
律…　聞いとらん。
言ったら反対されると思った。
まあ　とにかくこの試作品１台作るまでに僕の退職金イコールスパロウリズムの資金は果てしなく限りなく申し分なく使い果たしました。
マジ？実を言うとクレジットカードで借り入れもしています。
あっ…　あああ～！
岐阜県人は借金に弱いんです。
ざっと試算してみたところこの　一台３万円の扇風機４，０００台売らないと　ペイしない。
４，０００台…。　３万円を４，０００台。
大変…　なのか？　なのよね。そこで　津曲さん今回の事を　修次郎君にチクられたくなければ…。
えっ　脅迫？はい　脅迫です。
ご協力をお願いしたい。いや　えっ　僕に何を…。
僕は　研究開発はできても量産化や販売においては素人です。
鈴愛だって　所詮　チヤホヤ粉とかカメレオン蛇口しか売ってない。
岐阜犬を大ヒットに導いた実績のある　津曲さんのお力を是非　お借りしたい。
ちょっと待って　律君！　兄は一度そよ風ファンを盗もうとしたのよ！
そんな人を信頼していいの？おい。　盗んでないだろ。
結局戻って帰ってきたじゃないかよ。
お前　実の妹　俺の味方しろよ。お兄ちゃんは　昔からずるい。
いつだって冷蔵庫の私のケーキを食べた。
いや　それは　お前が意地汚くずっと残してるからだろうが。
あっ　戻ってきた。大事な話が始まっている気がして。
律　大丈夫か？　本当に大丈夫か！？
津曲さんは　ヒットエンドランが倒産した時にも逃げた。
一度　うどんを食った西はまた食うんじゃないのか！？
えっ　何それ？いや　西というか俺は　どっちかっていうとホセ・メンドーサだ。
ホセ・メンドーサの笑顔。
コークスクリューパンチ。
津曲さんが勇敢なホセ・メンドーサになるかうどんを食う西であるかはこれから　どちらにも転ぶと思う。
でも　津曲さんは修次郎君の事を思えば勇敢なホセ・メンドーサになるんじゃないかと思う。
僕も　そうだから。
翼君？
（恵子）修次郎。
お父さんに会いに…。
修次郎　ごめん。
ここ　本当は　おとうさんのオフィスじゃないんだ。えっ。
おとうさん　お前にずっと言えなかったけどおとうさんの会社は　もう潰れた。
今は　ラーメン作ってる。憩いの場カフェで。
バイトの身だ。お父さん。
おとうさんはな　もう　かっこ悪い。
♪～
お父さんはかっこ悪くなんかない。
ラーメンおいしかったし友達なんかいなくていいって言った。
あんな　かっこいい事言える大人は　いない。
うん　それ　おじさんも賛成。
友達は作るもんじゃない。自然と　できるものだ。
無理する事ないって事です。
「神様に似ている」とても　すてきな曲でした。
ありがとう。
津曲さん。
是非　これからこの　そよ風ファンを量産して販売していくのに協力してほしい。
売ってほしい。
そよ風ファンを大勢の人に届けたいんだ。
津曲さんしかできない。
できない。
おお。
分かりました！　うん。受けて立ちましょう！
確かに　この扇風機は本当にいいですよね。
まあ　とにかく　風に価値がある。
その価値を分かる人がいる。
絶対に売れます。　売りましょう！
お父さん　何か　かっこいい。
修次郎　お前…　マスク。
（恵子）修次郎！