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（鈴愛）お母ちゃん！
（田辺）風がね　やわらかくなるんだよ。壁にあてると。
これや！（晴）何や？
（律）は？だからね　扇風機の風を一回　壁にあてるんや！そいで　その風を浴びる。
風が　やわらかくなる。う～ん…。
風　来ないよ。[℡]弱や中じゃ　ちょっとあかん。強にしてみて。　一番　強いやつ。おお。
おお…。
どう？
あれ？　律　今　そこ　どこ？　家？スパロウリズム？
スパロウリズム。
[℡]もしもし？もしもし　律？
本当だ。
いい感じだ。
風っていうほど　強くはないけどそこはかとなく涼しい。
この　ふんわりした包まれる感じがそよ風っぽい。なっ！？
風が　やわらかい。
（宇太郎）何やっとりゃ～す？（草太）知ら～ん。
これは　鈴愛　発明や。
インスピレボリューションや。
ん？
♪～
♪「おはよう　世の中」
♪「夢を連れて　繰り返した」
♪「湯気には生活のメロディ」
♪「鶏の　歌声も」
♪「線路　風の話し声も」
♪「すべてはモノラルのメロディ」
♪「涙零れる音は」
♪「咲いた花がはじく雨音」
♪「悲しみに青空を」
♪「つづく日々の道の先を」
♪「塞ぐ影に」
♪「アイデアを」
♪「雨の音で歌を歌おう」
♪「すべて超えて届け」
♪～
こいだけ入れてやれば夕ごはん作らんで済むやろ。
ほいで　こっちの　きれいな方がまみむめバアバたちへのお土産。
アハハッ　おいしそうや。
草太　包丁さばき　うまなったでな。
こんなもんもな。
お父ちゃん。ん？
お母ちゃんは大丈夫や。鈴愛は分かる。
うん…　そやな。　大丈夫や。
うん。
（ノック）はい　どうぞ！
裕子ちゃん！律君！
どうしたの？　びっくりするよ！
あのね　日本青年館ってとこで看護学会の集会があったの。
すぐ近いでしょ？　ここ。
もしかして　鈴愛いるかな～驚かそうと思って電話もしないで来てしまった。ああ　鈴愛　今日　実家。
あ…　お母さんのお見舞い？
うん。　でも　夕方には戻る。
待ってたら会えるかな。会える　会える。
どうぞ　どうぞ。
ただいま！お～　お疲れ。
いよっ。
ねえ　さっきの話　どうなった？
うん。　今　実験してみた。
鈴愛　ナイスだ。かなりいい感じかもしれん。
おお～。あれ　お前　カンちゃんは？
あっ　岐阜の実家でお土産すごいもらって涼ちゃん方の３おばのところにももらってそれ持って　カンちゃんと行ってカンちゃん　早速拉致されました。
お泊まりだね　あれは。
ふぎょぎょ。　びっくりするわ！
（藤堂）鈴愛ちゃん　久しぶり！ボクテ！
わっ！（２人）うわ～！
何や　２人とも。　盆と正月がいっぺんに来たみたいやな！
（３人）久しぶり～！
ちょっと　鈴愛ちゃんに話があったんだよね？
ん？
僕のさ　「女光源氏によろしく」もう１７年も　やってるじゃない。
ああ…相変わらず　すごい人気だよね。
本屋さんに行くと山積みにされてる。
鈴愛　平積みだ。
でもね…　本当は　もうやめたいの。
もう描き尽くしたし違うもの描きたい。
そうなんだ。　編集さんも分かってくれるんじゃないかな？
だって　ボクテ売れてるし次のものもきっと　みんなが読みたがる。
躊躇する事ないよ。
うん。でさ　新しく描きたいものって…。
「神様のメモ」なんだ。
えっ…。
あの時　僕　デビューに焦って納得してないものを世に出した。
そして　あの　秋風先生の言葉が今でも忘れられないんだ。
（秋風）作品は　生き物だ。
お前は　「神様のメモ」の息の根を止めたんだ。
僕は　「神様のメモ」を殺してしまったのかもしれない。
でも　じゃあ生き返らせようって思ったんだ。
ボクテ　私の事なら　もういいよ。好きな事やって。
こんなに売れて　私なんかの原案にこだわる必要ないよ。
ううん　違うの。　自分のためなの。
あんなふうに漫画と向き合った自分が恥ずかしいの。
でもね　僕　思ったんだ。
じゃあ　やり直せばいい描き直せばいい。
生きてる限りやり直せるんだって。何で早く思い浮かばなかったんだろうって。
鈴愛ちゃん　改めて「神様のメモ」のアイデア僕に下さい。
喜んで。
すっごく　すごく楽しみです。
じゃあ…　イエ～イ！
（一同）イエ～イ。
＜律君は　仮説を立てました。壁に風をぶつけると風がやわらかくなるのは扇風機の風の宿命である　渦がそこで崩れるからではないか？今　それを検証中です＞
（裕子）♪「あさもやの湖に」
♪「水晶の舟をうかべて」
この曲ね　小学校の時骨折して入院して　その時看護婦さんが教えてくれたの。
カセットテープくれた。
へえ～　そうだったんだ。
私の病院ね。ん？
海が見えるの。へえ～　いいね。
うん　気持ちいい。
３階が私の持ち場で廊下に大きな窓があって海が見える。うん。
夜の海は別の顔をのぞかせる。
夜の海って基本　真っ暗じゃない？
うん。
でも　漁船が結構いてねその明かりがまるで蛍の光みたいに瞬いて幻想的なの。
へえ～。
でも　波が静かなほど何か暗黒の闇に吸い込まれそうで怖いんだ。
私たちが　スケート靴履いて滑った想像の海と違う。
あ…。
覚えてる？
覚えてる。
ユーコと私で　海を描いてスケート靴で滑る。
キュッて集中すると沈まなくて海の上を滑れる。
気を抜くと沈んじゃう。
私　鈴愛の声　好きだ。
今にも笑いだしそうな声。
そうなんか？
（裕子）患者さんが私の手を握る。すごく切実に握る。
うん。
私は必要とされてる。
私は居場所を見つけた。　でも…。
うん。
病院は　タフでなければ勤まらない。
生と死の間にある場所。
ユーコ。
鈴愛　私をつなぎ止めてよ。え？
私を生の世界に生きる世界に　つなぎ止めて。
連れ戻して。
♪～
ユーコ。
♪～
（裕子）鈴愛は生きる塊だから私にとって。
君は　私の命だ。
♪～
扇風機は出来る。私たちと一緒に夢を見ませんか？
全然駄目！律を天才って信じとるからかな。
こびるな。　自分でいろ。
僕は鈴愛ちゃんに会えるのがうれしい。
初めまして。何で　そんな恋になるのを遠ざける？
律はあったかい。