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（鈴愛）律　起業するんか？うちのシェアオフィス来るんか！？
（律）何かできるような気がするね。
ここで何か作れたら最高だ。
律は　看板に守られて生きとる。看板をなくしたらあかん。
菱松辞めて　お金大丈夫なんか？うるさい！
黙れ。
人の心の中に土足で踏み込んでくんな。
♪～
♪「おはよう　世の中」
♪「夢を連れて　繰り返した」
♪「湯気には生活のメロディ」
♪「鶏の　歌声も」
♪「線路　風の話し声も」
♪「すべてはモノラルのメロディ」
♪「涙零れる音は」
♪「咲いた花がはじく雨音」
♪「悲しみに青空を」
♪「つづく日々の道の先を」
♪「塞ぐ影に」
♪「アイデアを」
♪「雨の音で歌を歌おう」
♪「すべて超えて響け」
♪「つづく日々を奏でる人へ」
♪「すべて超えて届け」
♪～
ただいま！（宇太郎）おお　何や　お前。
（草太）おねえ　どうした？
（晴）鈴愛。
うわ～！
少しでも入院生活が楽しなるようにって買ったんや。
新宿のデパートで。フフッ。
ああ　すてきや～。
ほいでな　宅配便で送ってくれるコーナーでここの住所　書いとって思ったんや。
あれ　これ　直接渡したろかなって。ほいで　電車飛び乗った。
フフッ　あんたらしいな。
ちょっと　着てみようかね？えっ？
（晴）ウフフッ。　ああ　ええなあ！
うん！かわええ。
へえ～。
ちょっと華やかな気持ちになるなあ。なるな。
何や？お邪魔みたいや。
・お～　似合っとる！
（草太）お父ちゃん　やめとき。
おかあちゃんな今度　手術する名北病院名古屋駅から近いのはええんやけど周りビルばっかや。
何も見えん。　風も入らん。
ほうか？
（晴）まあ　病院やでな。贅沢は言えん。
あっ　ほうや！あんた　絵　描いてくれん？
その絵　病院に持ってく。病室に貼る。
ええ？
あっ　分かってまった！あれやろ？
お墓参りの時に行く丘や。フフッ。
（晴）いい風が吹くね。
あんたがクレヨンで絵描いとるの見ると昔を思い出すわ。あんたが小さい時。
お母ちゃん　律が　おらんくなる。
はあ？
怒らせてまった。
課長。　これ　予算削ってみました。ギリギリですが。
おっ。失礼します。
心配したつもりやった。
夢を持って何かをしようとすればみんな　すごいねとかええねって言うけど誰かが言わなかんと思った。「転ばぬ先の杖」や。
今のあんたはあん時の　おかあちゃんと一緒や。
うん？あんたが東京に出る漫画家になるって言った時　私もあんたが心配でしかたがなかった。
あっ…。
あん時も　律君はあんたを応援してくれたんやなかったかね？
ほいで　「一瞬に咲け」っていう漫画出せたやろ。
うん…。
はい。　１万円くらいで。
あっ　じゃあ　バラで。あっ　メッセージ…。
じゃあ　結婚おめでとう。　幸せに。
＜元嫁　より子さんの再婚のお祝いのお花を彼は　おくっております＞
はい。　それで。
（チャイム）
電話したんやけど　話し中で。
うん。　カンちゃんは？
あっ　今　家で宿題の試験やっとる。
４０分のテストや。４０分で戻らなかん。また　勝手な。
律…　ごめん！
おせっかいで変な事ばっかり言って悪かった。
私は無神経や。　口を慎む。
でも　まあ　あれや。ん？
俺は　お前の事をずっとは怒っていられない。
え？
生まれた時から横に寝転がっとるもんに許せんとか　縁を切るなんて言えない。
俺は　鈴愛にはどうしたらいいか分からん。
えっ　どういう意味？
まだ　４０分　大丈夫か？
いや　律　まだ来たばっかや。
さっき　花　注文した。花？
より子にな結婚のお祝いで　おくった。
えっ　より子さん　結婚…。
再婚すんの？お前　今　何で後ずさった？
あ…　思わず。安心しろ。　お前は襲わん。
いくら　さみしくても。
今回の事は　本当にごめんなさい！
私が悪かった。
役に立つ事を言おうとして間違えた。
私は　律を応援したい。
律は　私が漫画家になる時あんなに応援してくれたのに。
でも　まあお前の言う事も一理あんだよな。
正直　自分でも揺らいどる。
俺は飛べん鳥みたいなとこがある。
何てたって　名前も律や。律するの律。
律。　律は　英語で言うと　リズムや。えっ？
軽やかや。　弾む感じや。
どっかで　まだ　会社辞める事もびびってる。
意気地なしや。
そうか…。
俺は　もう　鈴愛のマグマ大使じゃないんすよ。
ダサくて　情けないんすよ。
無理して　元嫁に花とか　おくっちゃってさだっせ。
違う　律。
律は　私のマグマ大使や。
私のマグマ大使は　律だけや。
この先　何があっても。
誰と出会っても。
そう…　か。
頑張るか。
あ…　悪い。
手元に笛ない。いや　吹かなくていいから。
（宇太郎）ほう…　これ　鈴愛が描いたか。
うん。
お前　気が早ないか？まだ入院　再来週やぞ。
何かね　落ち着かん。
晴さん　心配しんでもええぞ。俺が　ついとる。
ん？　私は自分の心配は　しとらん。鈴愛の心配しとる。
あちゃ～！　ハハハハハッ。
晴さん　娘は　しょうがないぞ。もうすぐ４０や。
フフッ　心配させといたって。
子どもの心配するのは親の仕事や。
仕事がなくなると　つまらん。
ほうか。
俺は　鈴愛と違って「こんな事がしたい」がなかった。
でも　「これは嫌だ」は　あった。ん？
不遜に聞こえるかもしれんけどな。
ほやけど　俺は…俺は　こんな事するために生まれてきたんやないと思った。
律。　そういう気持ちは大事にした方がいいと思う。ん？
私は秋風先生に教わった。
自分の気持ちを見つめる事を教わった。
それは　漫画にとっても大事な事やったけど…今は　自分が生きていく上で大事な事やと思っとる。
律に強い気持ちがある。私は　応援する。
おっ　ありがと。
何やその気の抜けたような言い方…。
まずは　これだ。
これを埋めないと俺は一歩前に進めない。うん。
何を作るかだ。
お前　そろそろ帰った方がいいんじゃないの？
ほやな。
おばさんにくれぐれも　よろしくな。
うん。　あっ　絵　描いたった。
入院して手術したらしばらく　外に出られん。
名北病院　街なかにあるんやと。景色もない。　ビルばっか。
あ～　そういえば　和子さんも外　出たがっとったな。
♪「この広い野原いっぱい咲く花を」
何や　それ聴いた事ある。
知らん？和子さんが　よう歌っとった。
野原いっぱいの花を摘んであなたにあげるんやと。
はあ　ロマンチックや。
２番は　夜空に咲く星をみんな　あげるんや。
ほう　欲張りやな。
例えば　野原の風を集めてお母ちゃんに持ってたげればいいな。
あっ　それか　そよ風の扇風機。
そよ風の扇風機とかあったらよくない？
扇風機から　そよ風が出る。
魔法の扇風機や。
あっ　ほんじゃね　律！謝れてよかった。
鈴愛…。
それや。
そよ風の扇風機や！はあ？
そよ風の扇風機を作るんや！
そよ風の扇風機…？