2020年大会は真逆!
外国人よりも輸送力不足がネック

 それまで対応経験のある外国人といえば占領軍の米兵くらいで、外国人旅行者に対応できる設備も態勢も十分ではなかったことから、国鉄と営団はオリンピックに向けて外国人向け案内と接遇に相当の力を入れて準備している。

 国鉄は国立競技場最寄りの信濃町、千駄ヶ谷と、主要ターミナル駅の東京、上野、新宿、渋谷、横浜に外国人向けの案内所を設置、英語を話せる担当者を配置した。そのほか、東京駅の案内所にはフランス語、スペイン語を話せる担当者を集中配置し、必要に応じて各案内所と電話で対応していたという。東京、新宿、横浜の案内所は常設、その他は1964年10月1日から31日までの期間限定の設置であった。

 営団地下鉄でも大会期間中、銀座駅計3ヵ所と、浅草、渋谷、池袋、新宿の各駅1ヵ所に特別案内所を設けて対応することとし、案内要員は選抜した社員を英会話学校に派遣して養成した。一般の駅員に対しても、外国人旅行者の問い合わせに対して不安、不満を与えないように、点呼ごとに15分程度の英会話教育を実施したという。

 駅構内や車内の案内板への英文追加、英文併記のポケット用路線図や、英仏独語の沿線案内パンフレットの配布に加えて、主要駅の放送設備や銀座線の車内放送装置にテープレコーダーを設置して英語の案内放送を行うなど、現代では当たり前のサービスだが、当時は五輪を前に、大わらわで整備した。

 1964年大会の輸送を支えた国鉄と営団は、民営化を経てJR東日本と東京メトロに改組され、両社とも2020年大会のオフィシャルパートナーに名を連ねている。次回の外国人対応はこれまでの経験の積み重ねである程度は対応できるはず。むしろ、1964年大会では無難に乗り切った輸送力不足が、2020年大会では大きな課題になっている。両社がどのような態勢で2020年を迎え、後の時代に何を残すのか、あと2年間の動きに注目したい。