それでも現場(戦場)では、
試行錯誤やボトムアップが行われた!

 でも、ここからが違います。アメリカは破滅一歩手前で踏みとどまったのです。

 まずは、そんな厳格な指揮命令系統の下にありながら、何名かの現場指揮官たちが独自の戦略を生み出し、試行錯誤して成功例をつくり上げました。

 そして、ラムズフェルド更迭後に、イラク駐留アメリカ軍司令官(そして後に中央軍司令官)に任命されたペトレイアス大将が、新しい戦い方と組織をつくり上げました。現場による試行錯誤とボトムアップを中核とした組織です。

 2005年春、人口25万人のタルアファルに部下3500人とともに派遣されたマクマスター大佐は、そこでの戦い方を大きく変革しました。

 反乱勢力にとって重要な補給・訓練拠点だったタルアファルは、まさに「何度掃討作戦を行ってもムダなところ」でした。住民たちはアメリカ軍に非協力的で、住民をも巻きこんだテロ行為を繰り返す反乱勢力を匿いすらしました。ある意味、その理由は簡単でした。アメリカ人が嫌いとか云々でなく、単純に「アメリカ軍に協力したらあとで反乱勢力に殺される」からです。

 住民に紛れ込んだ反乱勢力たちが、必ずアメリカ軍への協力者たち(警察すら)を、あとで襲っていました。すぐ穴蔵(FOB)に戻ってしまうアメリカ軍に協力などできるはずがありません。