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[℡](女)はい もしもし。
[℡](女)もしもし。どちら様でしょうか?
(弓子)切れちゃった。
(涼次)あ… すみません。トイレ迷っちゃって。
(横田)うち 継ぎ足しで継ぎ足しで分かりづらいから。
ねえ 今 電話あったよ。あっ 家だと思います。
ごめんね イブイブに。いえ。
(祥平)どうする? 涼次。
このとおり。 お願い。
♪~
♪「おはよう 世の中」
♪「夢を連れて 繰り返した」
♪「湯気には生活のメロディ」
♪「鶏の 歌声も」
♪「線路 風の話し声も」
♪「すべてはモノラルのメロディ」
♪「涙零れる音は」
♪「咲いた花がはじく雨音」
♪「悲しみに青空を」
♪「つづく日々の道の先を」
♪「塞ぐ影に」
♪「アイデアを」
♪「雨の音で歌を歌おう」
♪「すべて超えて届け」
♪~
(光江)ああ 足の震えが止まらん。止まらんて。 そんなんしても。
あっ お子さん 落ち着きました。
耳下腺部分が腫れて熱を持ってます。
おたふくかぜですね。(麦)おたふくかぜ。
(鈴愛)あ… あの 後遺症が!
あの 耳が…耳が聞こえなくなったりとか!
あの 私… 私が おたふくかぜで片方の耳 聞こえなくなってムンプス難聴に! あの 花野も…花野もそうなったら どうしたら!
嫌です! 絶対に嫌です!おかあさん ちょっと落ち着いて。
鈴愛ちゃん!涼ちゃん…。
(涼次)遅くなってごめん。
<血液検査の結果 カンちゃんはやはり おたふくかぜで2日間 高熱を出しました。3日目には熱は下がりましたが…>
佐野弓子?
あの電話出た おなごはんが佐野弓子かいな?
(小声で)何してはった?
いや だからそういうんじゃなくて…。
ちょっと 祥平さんに呼ばれて。
あんたまだ 祥平さんに会ってたの?
佐野弓子先生が何の用や?
どうしても俺に新刊のホン…ああ ホンっていうのは映画の台本って意味なんだけどそれを書いてほしいって。
前の俺の「名前のない鳥」のホンがすばらしかったからって。
あんた また 映画の世界戻って一文無しのプータローになるつもりかいな!?
いや 違う! それは絶対にない。
俺は だから…。
佐野先生にそうおっしゃって頂くのは本当にうれしいんですが…。
えっ!?
えっ 私… えっ これ君が今度は書いて君が撮ったら いいのにって思ってたのに… ねえ!はい。
(横田)先生 すぐそうやって調子のいい事を…。
あら!いえ。
僕は もう 映画監督にはみじんも未練はありません。
(めあり)え~!? もったいない!めあちゃん!
ごめんなさ~い。
ほやったら 女ができた訳やなかったし。(涼次)うん。
映画の仕事も断ってきたと。うん。
あの子 鈴愛ちゃんとカンちゃん明日 耳の検査や。 しっかりな。
ああ… うん。
鈴愛ちゃんとカンちゃんは僕が守る。
ほんまかいな!
大丈夫ですよ。ちゃんと両耳聞こえています。
♪~
これが怖くてできなかった。
頑張ったね。
よかった…。
本当に よかった。
(晴)あ… うん。
ああ… ああ。
ほうか… そりゃよかった~。
お母ちゃん ごめんね。
[℡]うん? 何が?
お母ちゃん怖かったやろうと思って。
私が左耳聞こえんようになった時。
怖かったっていうか…。
お母ちゃんは よう泣いとった。
ほやったかね?あかんねえ 子どもの前で。
私は大した事やなかった。
何で お母ちゃんがあんなに泣くか分からんかった。
ほうか。 あんたは たくましい。
今度 よう分かった。
花野が片方でも聞こえなくなると思ったら胸が潰れるような気持ちになった。
子どもを持つっていうのはそういう事やな。
ん?
自分より大事なものができてまう。
耳の事は おかあちゃんあんたに申し訳なかった。
お母ちゃん…。
何を言っとる?
私は お母ちゃんにありがとうしかない。
℡お母ちゃんも お父ちゃんもおじいちゃんも おばあちゃんも。
おばあちゃんはあんまり よう覚えとらんけど。
<何ですと?>
草太も みんな 大好きやった。
楡野の家が大好きや。
℡今も そうや。 いい家で育った。
自分が あれだけ いい家族作れるかどうか 自信がない。
大丈夫や。
涼ちゃんもいい人やしおばさんたちも カンちゃんの事心配してくれたやろ?
うん。光江おばさんは足が震えとった。
みんな 花野の本当のおばあちゃんみたいや。
[℡]カンちゃんはバアバがいっぱいおるな。お年玉 いっぱいもらえるな。うん。
誕生日会も遅れてまった。
明日 やっとやる。
♪「ハッピー バースデートゥ ユー」カンちゃ~ん。
♪「ハッピー バースデートゥ ユー」カンちゃ~ん。
♪「ハッピー バースデーディア カンちゃ~ん」
♪「ハッピー バースデートゥ ユー」
おめでとう!
フ~ッ できる?カンちゃん フ~ッて。
あっ!あっ。
やってまった…。
(泣き声)あ~ ごめん ごめん ごめん!カンちゃん!カンちゃん ごめん!
<涼ちゃんは カンちゃんのもみじのような小さな手の感触になんとか 自分の夢を封印しようとしていました>
(田辺)おはよう。おはようございます。
(田辺)冷えるね。
これ…。(田辺)それね 佐野弓子の新刊。面白いよ。 読んだ?ベストセラーになってるね。
あっ いえ…。
♪~
よいしょ!
♪~
チュッ チュッ。
ばあ! フフフッ。
♪~
<こうして カンちゃん赤ちゃんのはちみつのような時間は瞬く間に過ぎ…>
(光江)これが生まれた時。ほんで これが1歳。
ほんで これが2歳!
毎回 ちゃんと誕生日に取ってたんだもんね~。
カンちゃん お誕生日ペンキを手に塗ります!
冷た~い!
ほんで これが3歳です。ほんで 4歳です。
4歳から5歳おっきくなるね~ 手。
ねえ 本当。では 5歳 どうぞ 先生!
5歳!
いよっ 年中さん!はい いきま~す!
(麦 めあり)いっちゃって下さい!
(光江)どうぞ。
(拍手と歓声)上手~!
え…? えっ?
今 何て?
別れて… ほしい。