『週刊ダイヤモンド』8月4日号の第一特集は「仕事で使える!ゲーム理論入門」です。ゲーム理論は、数学から生まれた経済学分野です。やや取っつきにくいかしれませんが、他にない強みがあります。戦略思考の道具としの応用範囲の広さです。先進企業はすでにこれに目を付け、活用し始めました。大注目の理論、思考法であり、仕事で使える心強い武器なのです。
米中貿易戦争からW杯サッカーまで
戦略思考の技術「ゲーム理論」の力
トランプ米大統領vs習近平中国国家主席、サッカーW杯ロシア大会、米グーグル……ジャンルも事の大小も全く異なるこれらを分析するツールとして、スパッと横串を刺せる“最強”の理論があるのをご存じだろうか。その名こそは「ゲーム理論」という武器に他ならない。
これは遊戯としてのゲームを直接扱うのではなく複数の主体をプレーヤーとし、それらの意思決定の在り方をゲームに見立てて研究したミクロ経済学の一分野。といっても主役を張ることが多く、ノーベル経済学賞受賞の常連である。
そうした見立てゲームの中で、参加プレーヤーが互いに最適な戦略を取り合う状況を探し当てるのがゲーム理論だ。この状況を「ナッシュ均衡」と呼ぶが、これは1994年にノーベル経済学賞を受賞した、最大の功労者ジョン・ナッシュの名にちなんでいる。
ゲーム理論は駆け引きが生じるあらゆる分野に通じる。その応用範囲の広さがこの武器の強みだ。足早に見ていこう。
マーケットを揺さぶる米中の貿易戦争──。激しいプレーヤー同士のせめぎ合い、丁々発止の駆け引きは、まさにゲーム理論の得意とするところだ。
「囚人のジレンマ」というキーワードを耳にしたことがあるだろう。この代表的ゲームは次のようなエッセンスを教える。