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(祥平)涼次 ごめん。
(涼次)え?
許してくれ…。
[℡](不通音)
(鈴愛)どうしたの?
♪~
♪「おはよう 世の中」
♪「夢を連れて 繰り返した」
♪「湯気には生活のメロディ」
♪「鶏の 歌声も」
♪「線路 風の話し声も」
♪「すべてはモノラルのメロディ」
♪「涙零れる音は」
♪「咲いた花がはじく雨音」
♪「悲しみに青空を」
♪「つづく日々の道の先を」
♪「塞ぐ影に」
♪「アイデアを」
♪「雨の音で歌を歌おう」
♪「すべて超えて届け」
♪~
(ノック)
(ノック)
(麦)祥平さん?
(麦)ああ…。
♪~
ああ…。
(物音)えっ? 祥平さん!
祥平さん!(泣き声)
死ねなかった…。
(麦)え!?
怖くて… 怖くて死ねなかった!
♪~
自殺をする人は1度目は怖くてやめて2度目か3度目に飛ぶっていいます。
(光江)やめてんか 朝から そんな話。
いえ きちんと。
(斑目)はあ… しかし 実際はそんな事になっていたとはねえ。
「名前のない鳥」。俺が監督しちゃ駄目ですか?
許せない。(麦)え?
最初 佐野弓子先生は涼ちゃんに撮らせるつもりだった。
脚本が気に入ったから。この2年涼ちゃんが どんな気持ちで脚本書いてきたかそいで私が大納言で残業して 働いて働いて。
みんな… みんなみんなデビューのためですよ。
涼ちゃんの監督デビューを夢みてきたからです。
あんた 誰に向かって怒っとる?祥平さん まだ来てないえ。
ここにいたら言える自信ないです。
だから今 来る前に怒りをぶちまけました。
何だ 言わないの?だって本当に死なれたら困ります。
涼ちゃんの大事な人だから。
言わないで 鈴愛ちゃん。
えっ…。
今 言ったみたいな事は絶対に祥平さんに言わないで。
分かったよ。
(めあり)祥平さん いらっしゃいました。
どうぞ。
♪~
涼次… すまん。
本当にすまない。
祥平さん 頭上げて下さい。
お前も知ってると思うが…最近 仕事がなくて次の映画の目処もまるで立たなくて…。
許してくれとは言わない。
許されるとも思ってない。
ただ… ただ謝りに来た。
涼次 本当に申し訳ない!
(斑目)あとね あの 現実問題としてもう準備進んでる訳なの。
製作委員会も映画会社も巻き込んで。
まっ さあ 流れるっていうのは映画の世界ではつきものではあるけれどなかなか これだけ大々的に佐野弓子原作 元住吉祥平監督!
自分の意志はお伝えしたはずです。
う~ん…。
監督降りるっていうの。
どうしても降りてこのホン 佐野先生に突っ返してこのホンでやるなら森山涼次を使えって言うからそれ 佐野先生に言ったんだけどまあ 激怒!今 元住吉監督が降りて無名の新人監督と組んだら私の名前に傷がつく!
困るよ… 本当困るよ。
撮影手前で準備とかでもう お金 使っちゃったよ~。
(涼次)祥平さん。ん?
俺の書いた 俺の脚色した「名前のない鳥」。
面白いと思ってもらえたんですか?
ああ… そりゃ もちろん。
ご自分で撮りたいと思われたんですか?
ああ… 思った。
光栄です。
うれしいです。僕は 元住吉祥平に撮りたいと思わせるホンを書けた事が光栄です。
どうぞ 撮って下さい。
(涼次)この作品を世に送り出してやって下さい。
よろしくお願いします。
♪~
<そして 涼ちゃんは壊れた>
(テレビ)♪「目が半開きになってる奴」
♪「それは、 なんでだ?なんでだろう?(なんでだ?)」
♪「なんでだ? なんでだろう?(なんでだ? なんでだ?)」
♪「なんでだろう?(なんでだ?)なんでだろう?(なんでだ?)」
♪「なんでだ? なんでだろう?」
♪「教室のカーテンに」
♪「巻きついて遊んでいる奴なんでだろう?」
(戸の開閉音)
ただいま~。
お帰り~。
気晴らしに 外 出てみれば?
う~ん…。
(藤堂)でも そりゃ 涼ちゃんさん壊れるよね。
失敗したら やり直せばいいって言うじゃない?
でも私 多分 人生にはたった一度しかない ここ! 今!
…って瞬間があるような気がするんだよね。
(裕子)あ… 何か分かる。僕も分かるよ。
うん。 何かになる人は成功した人はそのチャンスを決して見逃さない。
その手につかんだんじゃないかって。
今回がその たった一回だったって事?
分からない。 でも大きなチャンスだった事は確か。
僕は…。ん?
僕は秋風先生のところを裏切って破門された身だから思うんだけど…。
あの時秋風先生のところ追い出されて「月刊アモーレ」なんてエロ雑誌に連載し始めてあ~ もう自分は終わりだなって思ったんだ。
ボクテ…。
でも 僕って ゲイだから。
ほかには 何にも取り柄がなくて。
しがみつくように270ミリ×180ミリの枠線に向かって。
描いて描いて描きまくった。
そしたらまた チャンスは巡ってきた。
うん。
人生ってさ あああの時ああすればよかったとかあれをやっとけばよかったって後悔するっていうでしょ?
そういうの私も鈴愛もないんだよ。
ちゃんと挑戦した。
そして ちゃんとお前じゃ駄目だって漫画の神様に言われた。
お前じゃ駄目…。
そう プライド ズタズタ。 傷つく。へこむ。
でもさそれが生きるって事じゃない?怖いけど 傷つくの怖いけどお前じゃ駄目って言われるの怖いけど欲しいものに手を伸ばすのが生きるって事じゃない?
うん。 すっごく賛成。
だから 挑戦して 挑戦して手が届かなくて駄目だって分かるのに私なんか 9年かかっちゃった。
私は 5年。
でも そいでよかったんだよね。
何もしないよりは全然よかったんだよ。
だって こうしてボクテや鈴愛に会えたし。
あの5年があって 今がある。タフになるよ 人間。
うん。生きれば生きるほど タフになる。
頼もしい…。
鈴愛も焦らずに涼ちゃん支えてあげなよ。
彼が これから どうしていくか分かんないけど。 今は そっと…。
そうだね。
涼ちゃんが挑戦やめても挑戦続けても 私 支えるよ。
(シロウ)あの~ これ。
いや 頼んでないけど。
いや 何か いい話聞こえてきたから サービス!
(藤堂)あ… ありがとうございます。
あっ 私 ちょっと…。
ありがとうございました。
♪~
(裕子)ちょっと失礼。
どうした?
私 多分 妊娠してる。
えっ!?