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(鈴愛)今まで私自分のためだけに生きてきました。
自分の夢かなえるために頑張らせてもらってでも これからは人のために生きようって。
(涼次)俺 頑張るよ。頑張って 映画監督になる。これをシナリオにする!
そして 監督デビューするんだ!
監督になる!頑張って 涼ちゃん。
(涼次)<あの日から どれだけたったろう。僕は まだ「名前のない鳥」を書いている。直しに次ぐ… 直し>
<直しに次ぐ… 直し。そして 今日 やっと出来上がらんとしている>
♪~
出来た…。
出来た~!
<今は 2002年初夏。2年がかりでそれは出来上がりました>
♪~
♪「おはよう 世の中」
♪「夢を連れて 繰り返した」
♪「湯気には生活のメロディ」
♪「鶏の 歌声も」
♪「線路 風の話し声も」
♪「すべてはモノラルのメロディ」
♪「涙零れる音は」
♪「咲いた花がはじく雨音」
♪「悲しみに青空を」
♪「つづく日々の道の先を」
♪「塞ぐ影に」
♪「アイデアを」
♪「雨の音で歌を歌おう」
♪「すべて超えて届け」
♪~
ただいま~。お帰り!
疲れた。
大納言さ今日 お客さん いっぱいでね…。
鈴愛ちゃん!ん?
フフッ 出来たんだ 原稿。
フフフッ ウケた?
うん。
あっ 待って! 手 洗うから。
出来たか~!
♪~
ん?あ…。
あっ いや…。あ?
あ…。
涼ちゃん 最初に祥平さんに読ませたいって今 思ったでしょ?
あ…分かった?うん。
かな~って思った 今。
ごめんね 鈴愛ちゃん。
ううん。 誰よりも早くから涼ちゃんが監督になるの心から願ってくれてる人だもん。
待ってるよ祥平さんに見せてあげて。
うん。
でも 私 2番目取った。
うん もちろん!うん。
(藤堂)シナリオ出来たんだ!うん!
(シロウ)は~い お待たせ~!あっ どうも。
あっ 私は いつものようにお水で。いいよ 鈴愛ちゃん!
こんな日ぐらいごちそうさせてよ!
(裕子)そうだよ 鈴愛。この2年 一人で家計支えてめっちゃ節約してきたんだから。お風呂のお湯はペットボトルで水増しして肉は 鶏のムネ肉しか食べないし変装までして別人のふりしてお一人様1パック限りの卵並んだり。
私は 涼ちゃんの成功を勝利を信じてたからです。
ジャパ~ン! ブラボー!
決して負けられない戦いがあそこにある!
この間の 稲本のゴール見た?
<そう その年 日本は日韓ワールドカップに沸いておりました>
(4人)あ~!
(テレビ)「いやねえ シュートが入ればね点は取れますからね」。
(宇太郎)ドゥノン サバモン セボン。それはコミュニケーションの問題だよ!
言ってやれよ それ!コミュニケーション必要だよ 今!
(草太)ハハハハハッ。ハハハハハッ。
ここが ここがポイントや ここ。リズム リズム!リズムとコミュニケーションだよ!ハハッ コミュニケーションの問題で…。(仙吉)ちょっと ちょっと!
そこ見えん! 後半戦始まるわ!(テレビ)「監督 いい顔してるね」。
(晴)かっこええよね あの通訳。和子さんも言っとった。
あっ 何い? あんたらああいうバタくさいのがええ訳?
あれ 怪しないか?ちゃんと訳しとるんか?
おっ 始まった。
<おしゃれ木田原はここぞとばかりに青いTシャツを作りこれは結構売れました。日韓ワールドカップ。その経済効果は 3兆3,000億円ともいわれています。ハーフタイムにはみんながトイレに駆け込んで水が出にくくなったそうです>
あ…。(祥平)集中。
すげえな。 すげえよ これ!いけるよ これ!
えっ 本当ですか?
これなら 原作取れるんじゃない?
佐野弓子もオッケー出すんじゃない?
本当に!?うん。 原作の雰囲気損なわずにうま~く映画の脚本になってるもん。何か名作になる気がしてきた。いやいや…。
あの 斑目さんに相談してみ。はい。
(チャイム)ちょっと…。はい。
(岡田)監督 お願いしますよ~。何か勘違いしてらっしゃるようだけどこっちは アートやってるんじゃないんだから。 ねっ。何か?
コート・ダジュール出品する訳じゃないんだからさこれこれ 見て。 ここ ここ。
ちょ… ちょっと監督に なんて口きくんですか?
ん? 誰? この人。いいんだ。 どこですか?
うん ちょっと待ってね今 出すから。
<そのころ 元住吉監督は映画の仕事は全くなくなっていました。2年前の「追憶のかたつむり2」大コケ。興行収入は 製作費を上回る事ができず 大赤字>
ここ ここ。「計量カップ付 おたまたったの760円あると便利ですよ」。この「たったの760円」。
ねっ ここ 大きくて真っ赤な字でエクスクラメーションマーク3つ!
ガ~ンと入れてくれないと!でも 画のバランスが悪く…。
何 言ってんの?画なんか関係ないから!
バランスなんかないから。 ねっ!
今だったら 3つで1,980円の このおたま。
おたまがお買い得だって事が分かれば それでいいの! ねっ。そのためにはさ 赤くて大きくてギザギザな 品のない文字!見た事あるでしょ?
こういうやつ ほら! パ~ッて。ねっ これ入れないと。
それを 私がやるんですか?
は? もういい! 面倒くさい。
そういう事 言うんだったらねほかの人間に頼むわ。 うん。
やりたいやつ ほかにもたくさんいるんだから!
待って下さい 待って下さい!え?
やります。 直します。(岡田)あそ?だったら 明日の朝まで お願い!
うん!ねっ 映画じゃないんだから割り切ってくんないと。
♪~
すごい。 よく こんなふうにお話膨らましたねえ 涼ちゃん。
そのヒロイン鈴愛ちゃんに似てるでしょ?
その 跳ねっ返りなとことか早口なとことか。
早口か?うん。
このヒロイン 早口なんか~。
何か面白い。
これ ちょっと私みたいか。
私がモデル?
自然と そうなった。
自然と?
涼ちゃん これ面白い!
きっと うまくいく。
うん。
♪~
初めまして。あ… どうも。
あっ 手 冷たい。すいません。
(斑目)こちらから伺わなければならないところを。
ううん ううん。 ごめんなさいね押しかけちゃって。
(横田)先生が 奇遇にも元住吉監督の「追憶のかたつむり」のファンでコート・ダジュール賞のトロフィー見たいっておっしゃって。
わっ 見つけた! あれね。
へえ~。
(祥平)コーヒーよかったら。
どうぞ。 置いときます。
早速ですが…。
早速ですが!これ 電話でお話しした「名前のない鳥」を脚色した原稿です。ふ~ん。
(斑目)新進気鋭の若手!森山涼次君が書きました。今日も同席させようと思ったんですがあんまり大勢でっていうのも何かと。
新進気鋭だけどまだ何にもやってないんだよね?
(斑目)あっ ハハッ これは参った!
あの… あの 彼は私の助監督をやってまして大変優秀で熱い男です。
あそ? 元住吉監督が言うなら読んでみるか。
先生が原作を映画化 ドラマ化に渡さない事は業界では有名です。
それは もう重々 分かっております。
私は いいんだけどねえファンさんがねえ。
佐野先生には 熱狂的なファンがたくさん ついておりましてそして 私が言うのもなんですがドラマ化 映画化などしなくても毎回 ベストセラーになる数字を出されます。
もういいじゃない数字は。
あれ… いいかも。
本当ですか?
ちょっと 時間くれる?今 読んじゃう。え!?
読んじゃいたい。あっ 来る時 カフェあったよね?
ちょっと そこで読んでくる。集中した~い。
皆さんは こちらで待っててね。
ねえ… 読んだ。
あれ? あれ みんなは?
あっ あの それぞれ 外に電話。会いませんでしたか?
一目散に帰ってきたから。
あっ でも すぐ戻ると思います。ねえ!
これ すごい! 面白い!
本当に? あの いいですよね!面白いですよね!
私 やる。 これ やる。 映画にする。してほしい!
このホン すごい! 気に入った!
本当ですか? 本当に本当ですか!?
森山… 森山涼次 喜びます!ありがとうございます!
森山涼次さん。
すごい。 この人 才能あるよ。
あ…。
(弓子)ねっ 映画化決定。私が言えば ノーとは言えないの。出版社も。
あの…。(弓子)はい?
俺がそれ撮っちゃ駄目でしょうか?
えっ?
「名前のない鳥」。俺が監督しちゃ駄目でしょうか?