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（鈴愛）ふあ～。
（田辺）いや そりゃ災難だったね。
結婚して いきなり涼ちゃん酔っ払って 午前様。
ありえないっすよ。
（田辺）おっ 噂をすれば。（チャイム）
涼ちゃん。
（涼次）ご無沙汰してます。
相変わらず お客さんいないですね。
私の顔が怖いからね。（涼次）いやいや。
イケメンの涼ちゃんまた働いてよ。
女のお客 増えんだよ。いや…。
（涼次）鈴愛ちゃん 昨日ごめんね。遅くまで。
これ お詫びにって訳でもないんだけどお昼ごはん 作って持ってきた。
え？田辺さんも どうぞ。
えっ 何？
（麦 めあり 光江）うわ～！
（光江）きれいやなあ！
あの子 千駄ヶ谷監督のとこにいるうちに 料理の腕 上げたなあ。
（麦）元住吉だよ 光江姉ちゃん。
♪～
♪「おはよう 世の中」
♪「夢を連れて 繰り返した」
♪「湯気には生活のメロディ」
♪「鶏の 歌声も」
♪「線路 風の話し声も」
♪「すべてはモノラルのメロディ」
♪「涙零れる音は」
♪「咲いた花がはじく雨音」
♪「悲しみに青空を」
♪「つづく日々の道の先を」
♪「塞ぐ影に」
♪「アイデアを」
♪「雨の音で歌を歌おう」
♪「すべて超えて届け」
♪～
あれも １００円。 これも １００円。
あっちも こっちもあっちも あっちも。
み～んな １００円！
いや 鈴愛ちゃんそれが １００円ショップだから。
でも だったら品物以外のものを１００円で売るっていうのはどうですか？
ん？ どういう事？
う～んと…例えば 例えば例えばですけどＯＬさんやサラリーマンがストレス解消のためにここで 廃棄処分のお皿を割る。１００円。
へえ～。
あとは… あとは 例えばあっ 涼ちゃんが ここで歌う！
夏のサイダーみたいな声でここで歌う！
ギターであの 私に歌ってくれた歌を歌う。
それで １００円を取る。
私に歌を？そんな事がいつの間に…。
あとは… あっ 例えばこれ １００円で売ってもいいよって人が 品物を持ってきてそれを１００円で買ってもいいよって人が買う。
その場を提供するとか。へえ～。
あっ あとね 鏡！
鏡に自分の顔を映すと 自動的に「今日もきれいだね」って言うんです。 イケメンの声で。
これ 絶対売れます！（涼次）ハハハハッ。
ねえねえ 今年 夏に２０００年のプレミアムで二千円札が出るっていうけどあれ どう思う？
えっ それ プレミアムじゃなくてミレニアムじゃ…。
いや 今 それ関係ない。ねっ 考えれば考えるほどどんどん 大納言が楽しくなりませんか？
じゃあ あの辺にショーケースを用意して…。
あっ 最初は１００円で売りたい人が…。
ねえねえ 鈴愛ちゃんそんな簡単じゃないんだよ。え？
そりゃ 光江ちゃんがここで帽子屋やってた頃は何だって できたさ。この店の主だった訳だから。
でも 今ここは 大納言フランチャイズ。チェーンだから。例えば この棚に何をどういう順番に並べるかすら決まってる。
会社としてどういう商品に力を入れて販売するかっていう毎月の販売計画があるんだ。
自分で考えちゃ駄目なのか？
（ミキ）この前渋谷行ってきたんだけど彼… あっ 主人に送ってもらって。（２人）いいな～。
この前 結婚式だったんだよね？（ミキ）そうなの！
呼ばれてないんだけど。（ミキ）えっ ごめん。 フフフッ。
忘れてたでしょ。
（めあり）お姉ちゃんもう無理なんだよ。
何や お父ちゃんの代から続いた店潰せ言うんか？
ねえ これ見て。 今月の売り上げ。３個 ８，６００円。
パソコンは嫌や！目 痛なるから見とない！
そうやって お姉ちゃんは 時代についていけなくなったんだよ。
お姉ちゃんの帽子はもう みんな買わないんだよ。
めあちゃん なんて事 言うの！
麦姉ちゃん ずるい！
ずっと黙ってて全部 私に言わせるつもり！？
でね 光江ちゃん 私 思うんだけど時代も時代で不景気だしこれから １００円ショップって来るんじゃないかなあって。
これね １００円ショップフランチャイズの大納言の申し込み用紙なんだけど。
何や あんたら グルか！？
＜グルでした＞
まだ 別にアイデアあった。
でも 大納言のフランチャイズっていうのはそういうシステムだから。
多少 窮屈かもしれないけど自分で考えなくて済む。
考えたい！鈴愛ちゃんはね そういうタイプ。
漫画家をやってた時私には真っ白な紙があった。
２７０ミリ×１８０ミリの自由があった。
私は そこに自由に何でも描いてよかった。
それは きっと 秋風羽織の秋風先生のおかげだよ。
（涼次）映画の世界もそうだけど普通は出版社は売らなきゃいけないしいろんな事を言ってくると思うよ。
主人公は こういう人にしろとかこういうネタを書けとか今 はやってるのはこういう事だからとか。
だって 売らないと。仕事だから。 商売だから。
秋風先生は いつも私の心の中からわき上がってくるものを大事にしてくれたんだ。私が何を感じてるのか何を思ってるのか何を描きたいのか。
待ってくれたし 信じてくれた。ド新人の頃から。
それは… やっぱり 秋風先生が出版社とか いろんなものから鈴愛ちゃんを守ったんだよ。
♪～
（ドアベル）（シロウ）いらっしゃいませ。
何か ちょっと おもかげでコーヒー飲みたくなって仕事帰りに こっちに向かう電車に乗ってしまって。
（菱本）ホームシック？フフフッ。
一人で コーヒー飲んだら帰るつもりだったんですけど。
すいません 呼び出したみたいになっちゃって。
ううん 電話くれてありがとう。会えて うれしい。
先生 今日 締め切りで ごめんね。よろしくって。
あ… いえ。
でも涼ちゃんさんの言うとおりね。
先生は あなた方を守ったわ。っていうかそのための秋風塾だった。
まあ 今だから言うけどあなたの「一瞬に咲け」。はい。
中盤になって読者アンケートの結果が思わしくなくなってきた頃。あ… はい。
出版社から ストーリーの変更の打診があったの。
え？イケメンたちに取り囲まれるヒロインのコメディーにしてくれって。
「花男」的な…。でも それ 話めちゃくちゃに。
そう。 だから 秋風はそれは「一瞬に咲け」ではない。
あの物語を そんなふうにしてはいけないって最後まで戦って あなたの「一瞬に咲け」を守ったのよ。
知らなかった…。
ねえ 鈴愛さん。
あなた ティンカーベル出る時言ったわ。え？
漫画を描いて楽しいのは才能のある人だ。飛べない鳥が飛べる鳥を見上げながら下を歩くのは ごめんだ。人生に曇りの日が増える。私は 私の人生を晴らしたい。曇り空を晴らしたい。
私は 私の人生を生きるって。
ああ…。
自分の空を見つけなさいよ。
ひしもっちゃん…。
あなたの空が きっとある。
♪～
私の空は どこだ…？なんつって。
（ブザー）
お呼びで？・どうぞ。
（光江）そこへ。
はい。
（光江）ええ話やな。え？
（光江）涙のうては読めん。
これや。
あ…。
涼次に借りたんや。わては感動した！
ん？握手。 ファンサービス。
握手は別に ええわ。
こんな きれいな話 描いといて何で やめやした？ 漫画。
潮時かなって思ったんです。そういうのって分かるんです。
一緒やな。
うちも 潮時かな思て３月うさぎ やめた。
３月うさぎって 帽子屋。ええ名前やろ。
フフッ はい すてきです。
ほや。「不思議の国のアリス」でな帽子屋と３月うさぎとアリスがお茶するシーンがあるんや。
あ… あの うさぎって３月うさぎっていうんですね。
ほや そっからお父ちゃんが取った。 さすがや！
権蔵さんいうんや。
あっ まあ 名前は あれやけどかっこええやろ？ちっちゃいの うち。生まれて初めての帽子や。
それもお父ちゃんが作ってくれやした。
さっきな 田辺はんから仕入れの事で電話あってな聞いたんえ。
あんた いろいろ おもろい事言うたそうやな。 店のアイデア。
あ… すいません。
フランチャイズっていうのがよく分かってなくて。
いやいやいや。ほんでな これを機会にフランチャイズなんちゅうもんはやめよう思たんや。はい？
大納言なんちゅうけったいな名前も終わりや。
３月うさぎみたいなすてきな名前考えようや。
２人で！え？
明日から あんたが店長や！え？
あんたに あの店任せてみよ思って。
あんたが あの店の… 社長や！
はあ！？
監督デビューするんだ。俺も協力する。
お前の独り立ち。
きっと うまくいく。
いい人は駄目よ。この世界で生き残っていけないよ。
俺じゃ駄目って事ですか？
プライド ズタズタ。 傷つく。へこむ。
許してくれ…。
私 妊娠してる。
Twishort
