アイドリングストップは、もともと燃費効率よりCO2削減が目的
じつは、そもそもアイドリングストップは、燃費を良くする技術というより、環境性能の向上、とくにCO2排出量の削減が本来の目的にある。
1990年代、EUでは酸性雨など深刻な森林破壊が社会問題となり、環境に対するさまざまなムーブメントが起こった。北欧やドイツでは、無駄なアイドリングをやめてCO2の排出を少しでも減らすという動きがあった。当時のアイドリングストップは、手動でエンジンのオン・オフを切り替える運動だった。
CO2削減や温暖化対策として世界的な枠組みとして「気候変動枠組条約(UNFCCC)」がある。有名な京都議定書は、この締約国会議(COP)によって採択された各国のCO2削減目標が決定されている。第一約束期間である2008年から2012年は、それぞれの削減目標(CO2の排出レベル)が合意され結果がでているが、第二約束期間(2013年から2020年)は、詳細の合意が難航している。
日本は京都議定書(COP15)以降、さまざまな取り組みを開始した(エコカー減税、グリーンカー税制などの導入もそのひとつ)が、結局2012年の目標は達成できていない。現在、注力している取り組みは、トラックのアイドリングストップだ。こちらは、装着車の普及というより、後付け装置や支援装置の購入に補助金を支給するというものだ。
バスは、アイドリングストップ機能が普及しており、営業走行以外でもアイドリングの管理は容易だ。しかし、長距離輸送のトラックは、高速道路のサービスエリアやトラックセンターなどで運転手が仮眠をとることが多い。車内の温度管理のため通常はエンジンをかけたままとなる。このアイドリングを減らすため、国交省らは対策機器の購入を補助したり、啓発活動を行っている。
WLTCモード燃費ではアイドリングストップの省燃費効果が薄れる可能性
アイドリングストップ機能が、トータルでの燃料節約やコストダウンにつながるかは条件次第だが、政府やメーカーの思惑もあり乗用車への普及が進んだ。
筆者は、アイドリングストップ機能はトータルでの節約効果が小さいと思っている。しかし、アイドリングストップはCO2削減という目標に対して意義はあるとも思う。ただし、それには駐車中や休憩中に手動でエンジンを停止する(手動のアイドリングストップ)だけで十分だし、その方が効果も高い。
しかもこれから主流となるカタログ燃費の試験走行モード(WLTC)では、アイドリング時間が短くなり、アイドリングストップ機能による燃費向上は大きいものではなくなる可能性もある。前述した、停止前から停止を検知してエンジンを止めるような制御が重要になるだろう。
(ITジャーナリスト・ライター 中尾真二)