加えて、アイドリングストップ機能を搭載したクルマは、専用のバッテリーが必要だ。短時間で大きなエネルギーが必要なクランキングと始動動作を繰り返すため、量販店などで売られている安い標準バッテリーが使えない。専用バッテリーの販売価格は約2万円から。また、エンジンの停止と始動を繰り返すことで、エンジンへの負担が増えるのは事実だ。ガソリン代は節約になるが、メンテナンスコストが上がる可能性はある。
アイドリングストップが普及した省燃費以外の理由
以上のように、専門家でも、アイドリングストップ機能の実質的な燃費効果に疑問を持つ人は少なくない。それでも、国内外の多くのメーカーがアイドリングストップ機能を採用するのには別の理由がある。それは、排気ガス規制と税制措置によるものだ。
日本は2009年に、一定の燃費基準を満たしたクルマの自動車取得税と重量税の減税措置、グリーン化税制を導入している。アイドリングストップ機能自体の歴史は古く、国内でも1970年代の市販車(トヨタ クラウン)に搭載されている。その当時は、制御技術の問題から、普及することはなかったが、グリーン化税制が導入されると、アイドリングストップ機能を搭載したクルマが一気に増えた。
カタログ燃費は「モード燃費」という特定の走行条件で消費した燃料で計算される。カタログ値と実燃費の違いがよく問題になるが、燃費の基準となる走行モードは、現実の市街地走行や高速道路走行を加味して決められる。近年は、都市部の信号渋滞などを想定したストップアンドゴーを繰り返すような走行モードになっている。
モード走行での、決められた停止ではアイドリングストップ機能の効果がでやすい。メーカーとしては燃費基準を満たせば、減税措置や環境性能の証といった付加価値が付けられる。
EUにも、環境性能に応じた税制措置が存在する。そのため、日本と同様にアイドリングストップ車の普及が進んでいる。ただし、EUの場合は燃費基準ではなくCO2の排出量による規制がメインだ。アイドリングストップ機能はCO2削減にも貢献するが、エンジンをディーゼルにしたほうが手っ取り早く大幅にCO2を減らせる。これがEUでディーゼルエンジンの乗用車が普及した理由のひとつである。
北米は日本と同様に燃費基準による税制があるが、アイドリングストップ車の普及は遅れており、中国と並んで、普及の伸びしろがあるといわれている。