「経営安定基金」や国の支援で
なんとか経営を維持してきた
もっとも、三島会社の苦戦は当初から想定されていた事態であった。そのため分割民営化時に用意されたのが「経営安定基金」という事実上の補助制度だ。基金の額はJR北海道6822億円、JR四国2082億円、JR九州3877億円で総額1兆2781億円。この運用益で鉄道事業の赤字を穴埋めするとしたのである。
これは民営化当時の10年国債の平均金利(過去10年間)を参考に算出されたもので、7.3%の利回りで運用することが想定されていた。例えばJR北海道は1988年度に営業収益940億円、営業費用1473億円で営業損失533億円を計上したが、これに対して基金運用益は498億円で、経常利益は12億円の赤字に収まっている。
ところがバブル経済が崩壊し、1990年代後半には10年国債の平均利回りは1%台に低下、さらに2010年代に入ると1%を割り込み、一時マイナス金利を付けるまで停滞することとなった。想定外の低金利が急速に進行したことで、経営安定基金のスキームは崩壊してしまったのだ。
一方でJR北海道の基金運用益を追っていくと、1998年340億円、2008年231億円、2016年236億円と、民営化当初ほどではないものの、低金利時代にもかかわらず相当の利益が出ていることに気づく。2016年の10年国債年平均利回りはマイナス0.031%だから、破格の高金利で運用していたことになる。
実はここにはからくりがあって、実際の金利で運用したら経営破綻してしまうため、政府が経営安定基金の運用益を下支えしている。具体的には、基金の一部を国土交通省が所管する独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)に高金利で貸し付けることで、高利回りの運用を実現しているのだ。
鉄道・運輸機構は国鉄清算事業団の業務を継承しており、JR北海道の全株式を保有する株主でもある。つまり、事実上の親会社から運営補助金を受けて、なんとか経営を維持してきたのがJR北海道の実態である。