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（鈴愛）信じられない…。
先生と私の名前が並んでる。
（秋風）難航してそのままになっていた「月が屋根に隠れる」。　「月屋根」だ。
いい話だと思っていた。私なりに　ストーリーにしてアレンジして描いてみた。
勝手にすまなかった。
（吾妻）あの…　よろしいですか？
どうぞ。
すいません。
（菱本）楡野さん。　先生はこういう事もあろうと思って危機管理という意味でこれをお描きになっていました。
♪～
♪「おはよう　世の中」
♪「夢を連れて　繰り返した」
♪「湯気には生活のメロディ」
♪「鶏の　歌声も」
♪「線路　風の話し声も」
♪「すべてはモノラルのメロディ」
♪「涙零れる音は」
♪「咲いた花がはじく雨音」
♪「悲しみに青空を」
♪「つづく日々の道の先を」
♪「塞ぐ影に」
♪「アイデアを」
♪「雨の音で歌を歌おう」
♪「すべて超えて届け」
♪～
これは　すばらしい。
確かにお預かりしました。
どうだ？　楡野。
これを出していいか？
すごい…。
これが　プロだ…。
（藤堂）鈴愛ちゃん！
（裕子）とりあえず　目を閉じて寝よう。
（裕子）休もう。
ユーコ…。ん？
先生の原稿　すごかった。
迫力あった。
うん…。
先生は　本物の刀で　人の心を斬る。
先生に斬られたら心から血が流れる。
私は　偽物の刀しかない。
あ…　講談館出版の原稿どうしよう…。
ユーコ？
寝てくれ　鈴愛。
今は　もう何も考えずに休んでくれ。
そうか…　寝ていいんか…。
♪～
鈴愛　頑張ったねえ。
ん？
ペンダコすごい。
フフッ。
♪～
（藤堂）この際ですので上から目線でも何でも言わせて頂きますが…。
鈴愛ちゃんを漫画から解放してあげて下さい。
どういう…　事？ボクテ君？
あの時　僕が　鈴愛ちゃんの「神様のメモ」をパクってここを破門されそして　ユーコちゃんも結婚してここを出ていき鈴愛ちゃんは先生の期待を一人で担おうとしたんじゃないんでしょうか？
鈴愛ちゃんは秋風塾の最後の一人残った弟子だったんです。なんとか　先生に応えようとしてたんです。
そう…　なの？
そればかりではないですけどそれは大きいのではないかと私も思っていました。
＜鈴愛と秋風羽織の「月が屋根に隠れる」は好評を博しました。そして鈴愛は　途中になっていた「いつか君に会える」を最後まで仕上げていました＞
出来た…。
℡
（仙吉）はいはい　楡野ですが。
℡おじいちゃん　私や。おお　どうした？
鈴愛か。　おかあちゃんか？℡ううん。
おとうちゃんか？
あ～今　食堂　ちょうど　お昼中で…。
℡違う　おじいちゃんや。
えっ？　何や　俺か。
℡この時間やったら　おじいちゃん一人で茶の間にいるかと思った。
合っとる。　一人でおったわ。℡何やっとった？
うん？　お昼済んでな。ギターの弦　張り替えとった。
℡かっこええな。何　言っとる。
どうした？
おじいちゃん　鈴愛な思ったほど　才能なかった。
漫画か？℡うん。
そっか。
そんだけか？
まあ　そういう事もあるやろ。
おじいちゃん専門的な事は　よう分からんけど。
あっ　この前の「月が屋根に隠れる」見事やったぞ。
あれは　鈴愛が描けんようになって先生が描いてくれたんや。
[℡]ほうか。
まあ　アイデアは私のアイデアやけどな。
原案　楡野スズメってあったやろ？
うん　自慢や。　自慢の孫や。
フフッ…。
[℡]…で　どうした？
おじいちゃん誰にも言わんといてな。
[℡]言わんよ。
私　ま～　あかんかもしれん。
[℡]そうかあ。漫画家　ま～　あかんか。
うん。
[℡]まあ　しょうがないな。
あっさりしとるなあ。
ほやけど　お前…　１０年？
東京出て　何年や？
℡今　２７やで　９年や。
９年頑張って　本も何冊か出して御の字や。
御の字か…。
ほやけど　おじいちゃん。[℡]うん？
ほやけど　私　漫画やめたらどうやって生きてこう。
まあこっちへ帰ってきてもいいし帰ってくるの嫌やったらそっちで　ほかの事すればいい。
ほかの事…。[℡]何か見つかるやろ。
このご時世　どうやったって生きてけるぞ。
そうなんか？
鈴愛。　おじいちゃん　若い時今のお前よりも若い時に戦争行った。
℡うん…　何となく　知っとった。
日本負けてなあ　びっくりしたわ。℡うん。
ほいでな見つかったら捕虜になる。
殺されてまう。
おじいちゃん　現地の人にかくまってもらってな１０日…　２週間くらいやったかな。
穴蔵みたいな所に隠れて暮らした。
え…？
穴蔵　家にしてなあ太陽の光も見えん。
ず～っと暗いんや。
見つかったら殺されてまうでな。出ていけん。
うん…。
[℡]ほやけどな　太陽の光の加減で一日のうち　１５分だけ光がさすんや。
（仙吉）太陽の傾き具合で。本当に　一日のうち　１５分だけや。
１５分　光がさすだけで人は　それを楽しみに生きていけるんやって思ったんやその時。
♪～
よう分からんか？
おじいちゃんもうまく言えとる気はしんなあ。何せ　初めてしゃべるしな　この話。
おじいちゃん…。
要はな　鈴愛。　どうにでもなるぞ。
大丈夫やって事や。
人間はな　強いぞ。
ほうか。[℡]ああ。ほんで　また鈴愛は殊の外　強いぞ。
ほうか。　知らなんだ。
教えたったわ。　ハハハハッ。
あっ　おじいちゃん弦　張り替えたんやろ？
一曲　歌ってくれ。フフフッ。
♪「命かけてと誓った日から」
♪「すてきな想い出」
♪「残してきたのに」
♪「あの時　同じ花を見て」
♪「美しいといった二人の」
♪「心と心が」
♪「今は　もうかよわない」
♪「あの素晴しい愛をもう一度」
♪「あの素晴しい愛をもう一度」
♪～