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[℡]（晴）ああ　着いた？
（晴）朴葉が入ったで朴葉寿司作って送ろうと思って気が付いたら　いろんなもん入れて訳分からんくなってまった。
おじいちゃんの畑のキャベツとか里芋の煮たのとか五平[℡]も入っとるでね。
（鈴愛）お母ちゃん…。
律…　結婚した？
♪～
♪「おはよう　世の中」
♪「夢を連れて　繰り返した」
♪「湯気には生活のメロディ」
♪「鶏の　歌声も」
♪「線路　風の話し声も」
♪「すべてはモノラルのメロディ」
♪「涙零れる音は」
♪「咲いた花がはじく雨音」
♪「悲しみに青空を」
♪「つづく日々の道の先を」
♪「塞ぐ影に」
♪「アイデアを」
♪「雨の音で歌を歌おう」
♪「すべて超えて届け」
♪～
律…　結婚した？
うん…　結婚したよ。
[℡]いつやったかなあ。先月やったかな。あんたに言うのうっかりしとった。
ふ～ん…。
京都でね　結婚式挙げて。
京大の大学院出て大阪の菱松電機入ったやろ？
[℡]そこの受付の女の子って和子さん言っとったかなあ。
（律）結婚しないか？
[℡]亀がおったやろ？フランソワ？
[℡]うん　その亀が去年死んだらしい。
うん…。
そいで　寂しなってまったかな。
℡お母ちゃん　それ　冗談か？
いや　ほんな事ないて。和子さんも　そう言って…。
まあいいわ。
ごめん。
無理だ。
ほんでも　よかったな　律結婚できて。
あいつは小さい頃から変わりもんで理系オタクやし結婚なんてできんと思っとったわ。
℡ごめん　お母ちゃん。私　ネームの続きやらなかん。ああ…　うん。
いろいろ　ありがと。　食べるわ。
みんなにも　よろしく言って。
うん。
♪～
（すすり泣き）
♪～
℡はい　萩尾です。（秋風）お～　律君　久しぶり。
本名　美濃権太ペンネーム　秋風羽織です。
℡あっ　先生！　お久しぶりです。
いきなり　すまない。
葉書を頂いて…　結婚の知らせの。
℡ああ　先生のところにまで。
いや　よかった。　おめでたい。おめでとう。
ありがとうございます。
それで　わざわざ　お電話を？うれしいです。
いや　おめでとう。おめでたい…　んだがちょっと聞きたい事が。はい？
萩尾さん。
℡いや　あの　あれです。何と言うか…。
親代わりとしてというか興味本位でというか一つ　お伺いしたい。
℡はい。
律君は鈴愛さんではなかったんですか？
先生…。
あっ　ちょっと待っててもらってもいいですか？
℡今　人のいない所からかけ直します。
今　人のいない所に移動している。
（裕子）先生　ハンズフリー聞こえてますから。
（藤堂）先生　直球ですね　質問。
何か　ドキドキするな。
℡
℡お待たせしました。　萩尾です。
先生　僕　鈴愛には振られたんです。
えっ？
「結婚してくれ」と言ったら「無理」と言われました。
無理…。
℡ええ。　無理と言われたら無理だと思いました。「時間頂戴」でもなく「考えさせて」でもなく「無理」です。
違う　律君！[℡]（物音）
あっ　何か落ちました？いやいや　大丈夫。
先生　僕　たまに先生が僕に言ってくれた事思い出します。[℡]（秋風）え？
℡いつか　プテラノドンの見えるあの中庭で。
何を言ったろうか？
人生は　いろんな事があるけどその人が真摯に真面目に生きていけば無駄な事は何もない全ては何かにつながっていくというような事をおっしゃいました。
言いました。
正直　何で僕の人生にこんな悲しい事が起こるんだろうと思いました。
鈴愛に振られて本当に苦しかったです。
僕は　鈴愛のためにあっ　いや　もちろん自分のためなんですけど１９歳の七夕の日に鈴愛の書いた短冊を見つけて鈴愛の夢をかなえようと思いました。
あっ　その短冊は私も知っています。
深い青の。
僕は　きっと幼かったので自分の気持ちに気が付くのに時間がかかりました。
でも　夏虫の駅でもう一度　会えた時に…。
あ…。
僕たちの夢が飛んだ代わりに僕は鈴愛をつかまえたつもりでした。
あっ　すいません。何　言ってるか分かりませんよね。
鈴愛。
結婚しないか？
でも　彼女の答えは　ＮＯでした。
そうでしょうか？
そうなんですよ　先生。
鈴愛の事は　今は遠くから昔からの友人として応援してます。
萩尾さん！　そろそろ始まります！
あ～　先生　すいませんミーティングが…。
あっ　はいはい。忙しいところ　すまなかった。
漫画　楽しみに読んでます。あっ　あと　それと…。
[℡]はい？最近　鈴愛の漫画が発表されてないみたいなんですけど…。
大丈夫です。楽しみにしてて下さい。
来月号の講談館出版「月刊アミー」に発表されます。
（宇太郎）そうか鈴愛も知ってまったか律君の結婚。
えっ　晴さん泣いとる。
あの子が泣いとる。
あの子が泣くと私まで自然に涙が出る。
ハハハハハ…。
♪～
人生とは　一方通行だ。引き返す事はできない。
いくら　鈴愛が律君に「無理だ」と言った意味がそういう意味ではなかったとしてもそこに誤解があったとしてももう遅い。
遅いんですか？
律君は結婚した。
そして　前向きに人生を生きようとしている。彼に今　真実を伝える意味はない。
彼は彼の時間を生きている。
あの…。おお。お話し中すみません。
（ノック）
・（裕子）鈴愛？・（藤堂）鈴愛ちゃん？
・（秋風）楡野　いるか？
１２の８…。
♪～
この辺…。
♪～
ここ…。
♪～