(3)一対一にならない

 “被害者ぶる人”とのトラブルで怖いのは、「言った」「言わない」の水掛け論だ。“被害者ぶる人”は、しばしば「あなたの指示のせいで失敗した」「暴言を吐かれた」などと、話をねつ造したり盛ったりするからだ。それに対して「いや、そんな指示を出した覚えはない」「暴言なんて吐いてない」と言っても、埒(らち) が明かない。

 そういう事態を防ぐためには、まず相手と一対一にならないことだ。とくに密室での一対一は避けること。必ず第三者がいるところで話せば、トラブルになったときに真実を知る証人を確保できる。また、第三者がいれば話のねつ造が難しくなるので、抑止力としても働くはずだ。

 ただ、“被害者ぶる人”と一対一にならないように気をつけていても、“被害者ぶる人”は「あのとき少しだけ呼び出された」などと話をつくるおそれがある。 また、たまたま一緒になり、周囲に誰もいないという状況も起こりうる。その瞬間をとらえて「廊下ですれ違いざまに暴言を吐かれた」などとウソをつくかもしれない。

 結果的に「言った」「言わない」の水掛け論になったとき、その場を左右するのは周囲の人たちのジャッジであることが多い。だから、普段から周囲の人たちとコミュニケーションをしっかりとって、信頼関係を築いておくことが大切だ。誠実で信頼できる人物だという評価が固まっていれば、“被害者ぶる人”が被害をでっちあげても、周囲は「あの人がそんなことを言うはずがない」と味方になってくれるはずである。