「私のやったことがあなたの仕事に影響を与えたとは思いません。何かの誤解ではないですか?」

 実際のところ、こうして反論しても“被害者ぶる人”が主張を引っ込める可能性は低い。 いくらこちらの主張が論理的に正しくて客観的な裏付けがあったとしても、向こうは適当にごまかして、被害を受けたと繰り返し主張するだけだろう。

 では、議論にならないとわかっているのに、なぜ反論するのか。それは「私は与(くみ)しやすい相手ではない」「私に絡むと、痛い目に遭うのはあなたのほうだ」というメッセージを言外に伝えるためだ。

 というのも、“被害者ぶる人”が狙い撃ちするのは、基本的に弱い人だからである。具体的には、大人しくて従順な人、あるいは職場や家庭の人間関係で立場の弱い人がターゲットになりやすい。

 こういうタイプは、責任転嫁の相手としてうってつけ。責任をなすりつけられても、騒ぎ立てるどころか、不和や葛藤をできるだけ避けようとして、寛大な態度で受け止めることもある。“被害者ぶる人”からすれば、 被害者のふりをしたいときに安心して責任転嫁できる相手なのだ。

 “被害者ぶる人”が弱い人を狙う理由は単純だ。相手に反撃する力がなく、好きなだけ被害をでっちあげたり誇張したりすることができるからだ。だから、与しやすい相手を選んで、軽く攻撃して様子を見る。そして、相手が反撃してこなければ、攻撃をさらにエスカレートさせる。

 したがって、“被害者ぶる人”から狙われていると感じたら、泣き寝入りせずにきちんと反撃する姿勢を早い段階で示したほうがいい。反論すれば、「これ以上つけいらせないぞ」という意思表示になる。議論で負かすことが目的なのではなく、向こうに「こいつをターゲットにすると厄介だぞ」と思わせるために反論するのである。