あなたが日常的に使っているコミュニケーション法を駆使して、問題の解決を目指しても、いつの間にか本題から逸れてしまい、解決することはありません。ここがポイントです。「あなたのためを思って」「なんとかわかってもらおう」が通用しないのです。「死にたい」に対して「死んじゃダメ」、「みんなに嫌われている」に対して「誰も嫌っていない」と返信することがNGなのです。

 あるとき、職場で問題を抱え、私に1万字を超えるメールを毎日送ってくる人がいました。そのやり取りの中で気づいたのが、「メールを最後から読む」ことでした。最後に「また連絡します」と書かれていたら、連絡がくるまで返事をしないことを実践してみたのです。当初は自己嫌悪に苦しみましたが、返事をしなくても大丈夫だと知ることができました。

 その理由は、こちらが必要以上にまめに返信すると、「馴れ馴れしい」と「親しみ」の違いを理解できず、相手も苦しんでしまうということです。メールに書かれているのが独り言や愚痴のような、答えようがない内容なら返信しないほうがいいのです。職場では、自分から送信するメールに「何行以内」「冒頭や結びの言い回しを固定する」など定型的なルールを課すことで対応しやすくなります。

 常に敬語を使うなどはお勧めです。送る文字数を限定することで、あなた自信、相手のメールのどの部分に回答するかを考える必要に迫られますから、やり取りがスムーズになるでしょう。

「相談する人がいない」と言われたら
3つの要素に分解して話を聞く

 もう一つのコツが、言葉を額面通り受け取らないことです。みなさんのコミュニケーションがうまくいかないのは、「対応の仕方がまじめすぎる」からです。不謹慎な言い方ですが、コミュニケーションしようとするあまり、精神障害の社員が「見た目ではわからない」「コミュニケーションが難しい」ということを忘れてしまっているのです。

 精神障害には「都合のいい病気」と感じさせるものが少なくありません。私が精神障害の社員に病状を聞くと、「ミスが多く、減らせません」「気がそれやすく、集中し過ぎてしまいます」「覚えにくく、忘れっぽい」など、額面通り受け取っていると、まるで「仕事をしないけれど給料はくれ」と言わんばかりに聞こえてしまうことがあります。

 あなたは精神障害の同僚から「困ったときに相談する人がいない」と言われたらどう答えますか。「同期の〇〇さんは聞いてくれないの?」「〇〇さんなら適任だと思う」そんな受け答えでしょうか。「たった今相談してるじゃないか」と感じる人がいるかもしれません。