コミュニケーションでトラブルに
周囲が疲弊し自己嫌悪に陥ることも
「コミュニケーションが難しい」ことは、「普通の会話が通じない」「冗談が通じない」と言い換えることができます。「話が堂々めぐりしたり、本末転倒だったりする」ようなイメージです。あなたが相手に「わかってもらおう」と考えると、いずれ「何でも障害のせいにして逃げている」と敵視してしまうことがあります。
「カサンドラ症候群」という症状があります。これは正式な病名ではありませんが、発達障害者とのコミュニケーションがうまくいかず、思いや気持ちをわかってもらえないことから自信を失ってしまった配偶者に生じる抑うつ・無気力などの症状を表す言葉です。
似たような状況が、精神障害の社員がいる職場で起こっても不思議ではありません。「隣の席の精神障害者との付き合いに困っている。何とかしてほしい」と上司に相談しても、「もっと優しくしてやれ」と理解されず、「何とかしなければ」と自分を追い込んでいるうちに苦痛が生じてきます。症状として自己評価の低下や抑うつなどがありますが、まさに「自分を責めてしまう」「精神的に疲弊しやすい。自己嫌悪に陥る職員も多い」と訴える、前述の大学教授の言葉通りです。
カサンドラ症候群に悩む女性を支援する団体が作成した冊子には「要件を箇条書きにして伝えましょう」「口頭での連絡は避け、メールなどの視覚伝達を」など、対応事例が書かれています。夫婦間でさえ「要件を箇条書きに」「口頭での連絡は避け」とアドバイスされるくらいですから、職場で注意が必要なことは言うまでもありません。
本人からの相談にのっていたはずが、いつの間にか「あなたは私に何をしてくれるの?」という話にすり替わって責められていることもあります。精神障害の社員とのコミュニケーションがこのようになってしまうと、よい状況とは言えません。
では、障害によるコミュニケーションの特異性から、「普通の話が通じない」「本末転倒」「冗談が通じない」「公私混同の概念がない」人とうまく付き合うには、どうしたらいいのでしょうか。それにはコツがあります。
「わかってあげよう」と思わない
メールは最後から読むのがコツ
コツの事例を一つ挙げましょう。メンタル疾患をオープンにして働く人の多くが、自分をわかってもらおうとするあまり、メールの文字情報の量が多くなる傾向があります。とても丁寧に理路整然と書かれているので、必要な情報が網羅されているという利点がありますが、非常識だと感じるほど膨大な量になることもあります。また、IQが高い人やボキャブラリー豊富な人も多く、メールのやり取りが一向に途切れないことがあります。