著者の梅原淳氏は、1965年生まれ。三井銀行(現・三井住友銀行)、月刊「鉄道ファン」編集部などを経て、2000年に鉄道ジャーナリストとして独立。鉄道関連の多数の著書がある。国や地方公共団体が設置した委員会などで鉄道に関する調査や提言、また講義・講演やテレビ・ラジオ・新聞などへのコメント活動も行う。

 JRグループには、旅客輸送サービスを提供するJR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR四国、JR九州の6社と、貨物輸送サービスを行うJR貨物がある。

 2017年度の決算を見ると、このJR7社の業績は、上場と非上場で雲泥の差が出ているようだ。

 株式を上場しているJR東日本、JR東海、JR西日本、JR九州は増収増益を果たし、いずれも過去最高益を更新した。

 一方、非上場の残り3社のうち、JR貨物は増収だが減益。JR北海道とJR四国も増収ではあるが、営業利益は赤字だ。

 つまり、少なくとも業績の良くない非上場3社は、何かしらの改革を断行しなければ、30年後に存続しているかどうかも危ういのではないだろうか。

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 梅原氏は、30年後に向けてJR各社が取りうる施策をあらゆる角度から検討している。

 まず考えられるのは赤字路線の廃止だ。あるいは廃止しないまでも、JR本体から切り離し、第三セクターに運営を任せるという方法もある。

 例えばJR北海道に梅原氏が提案するのは、第三セクターへの移譲も含めた大胆な再編。2017年度にグループ最悪の416億円もの営業赤字を出した同社は、いったん解散して4つの新たな鉄道会社に再編するべきというものだ。

 具体的には、札幌市近郊部分および北海道新幹線を持つ「札幌新JR」、旭川、名寄、稚内の各市周辺の「道北新JR」、北見、網走、釧路の各市周辺の「道東新JR」、函館市周辺の「道南新JR」の4社とする。

 ただし、企業として独立採算で運営するのは札幌新JRだけ。それ以外の3社は国や沿線自治体も巻き込んだ第三セクターでの運営に切り替え、営業損失を国税や地方税で補填する。

 梅原氏の提案は、こうしたやや後ろ向きの分割案だけではない。「攻め」の姿勢で業績アップ図るための施策も示している。その一つが「非鉄道事業」への進出だ。