なんだか最近何にも全然やる気が湧かなくなってきていて、毎日虚無な感じで寝て過ごしている。面白いことやワクワクすることが思いつかない。大体全部飽きてしまった。ときどき来る仕事の依頼なども全部断りまくっていて、この連載くらいしかまともにやっている仕事がない。この連載はわりとゆるい感じでやらせてもらっているのでなんとか続いているのだけど。
自分のやれる範囲の面白いことは大体やり尽くしてしまったのではないかという感じがする。いや、そんなのは自分の思い上がりで、世界にはまだまだ面白いことはあるのだろう。だけどそれを探しに行くのも面倒なんだよな。若い頃だったら常によくわからない衝動を持て余していたので面倒がらずに新しいところに突撃して行ったりしていたのだけど、四十路も近くなった今となってはもはやあまりそういう気力がない。
全てに飽きている理由の一つは同じことをやり続けすぎたからかもしれない。
僕が6年前に最初に本を出したときは「働くの面倒臭い」とか「会社を辞めて自由に生きる」みたいなことを主に書いていたんだけど、今はそういうことについて語るのに完全に飽きてしまった。
だけど世間の認識と自分の認識というのは時間差があって、そういう依頼が今でも来ることが多い。やったことの反響というのは数年遅れてやってくるものだから同じことをやり続けていたほうが有利なんだけど、生来の飽きっぽさがあるのでどうもうまくできない。まあ言ってみれば歌手が昔のヒット曲をいつまでも歌うことを要求されるようなもので、それは歌だったらまだいいかもしれないけれど、言葉で既に飽きた自分の意見を繰り返し語るというのをやっていると精神が壊死しそうな感じがする。
結局人間は変わり続けないと飽きてしまうのだ。面倒臭いけど。
周りに目新しいものがなくなってしまったというのは、自分の中の引き出しにいろいろ揃ってしまって、自分の中にあるものだけでいろいろやりくりできるようになってしまった、というのと表裏一体でもあると思う。
最近は音楽や本などでも、全く新しいものを摂取することが減って、ある程度知っているものを聴いたり読んだりすることが多くなった。自分の中のストックが十分にあるのでそれでわりと満足できてしまうのだ。
音楽や本に限らず、人生全般に関して同じことが言える。
今まで結構生きた分だけいろいろなことができるようになっていて、それでなんとかやっていけるようになってしまった。自分に何ができて何ができないかも大体わかってきたし、どういう場所で何をしていれば居心地がいいかも大体わかってしまった。
十代や二十代の頃などは、自分がどういう人間なのか、自分に何ができるかが全くわからなくて、ひたすらもがいてわけがわからないままに全く向いていないことに手を出して失敗したり恥をかいたりということが多かった。あの頃は大変だったなと思う。二度と戻りたくない。
若い頃に年上の人によく言われた言葉がある。
「今が一番いいときだよ」
それを聞くたびに、今こんなにしんどいのに、これが一番いいときなのだったら、この先どんどんしんどくなっていくばかりなのか。じゃあ今死んだほうがいいのでは、と思った。
実際に年を取ってみたら、それが全く嘘だったということがわかった。
十代より二十代のほうが圧倒的に楽だったし、二十代より三十代のほうが断然楽しかった。若い人間に「今が一番いいときだよ」とかいう大人は、そいつが自分自身の人生を楽しめてないだけなのだと思う。
周りにも自分にも不満しか持てなくて拗ねてばかりの十代を過ぎて、社会というよくわからないものに向き合わされてその中で自分が何をしたらいいか分からず迷ってばかりの二十代も越えて、三十代は自分に何ができるかもわかってきてそれなりに居心地のよい場所も見つけた。自分に向いてないことに無理に手を出して失敗して恥をかくことも少なくなった。
それで安定したのかなと思っていたのだけど、自分が安定したことで今度は逆に、新しい刺激が少ないという閉塞感を覚えるようになってしまった。一つの煮詰まりを解決したらまた別の煮詰まりがやってくる。人生って本当に面倒臭いな。
まあ何もやる気がしないというのも一つの段階で、これを突き詰めればまた別の境地が開けてくるのかもしれない。だから今年一年くらいはひたすら寝て過ごしてみようかと思っている。
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家を出て街に遊ぶ。
お金と仕事と家族がなくても、人生は続く。
東京のすみっこに猫2匹と住まう京大卒、元ニートの生き方。
世間で普通とされる暮らし方にうまく嵌まれない。
例えば会社に勤めること、家族を持つこと、近所、親戚付き合いをこなすこと。同じ家に何年も住み続けること。メールや郵便を溜めこまずに処理すること。特定のパートナーと何年も関係を続けること。
睡眠薬なしで毎晩同じ時間に眠って毎朝同じ時間に起きること。
だから既存の生き方や暮らし方は参考にならない。誰も知らない新しいやり方を探さないといけない。自分がその時いる場所によって考えることは変わるから、もっといろんな場所に行っていろんなものを見ないといけない。
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