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(晴)あんたが どうして13社も受けて落ち続けたか分かる?
左の耳が聞こえないって履歴書に わざわざ書くからや。
鈴愛は知っとった。
就職 何で落ちるか分かっとった。え?
でも 鈴愛は 私は嘘ついて入るのは 絶対嫌やった!
本当の事 書いて入ってやるって思った!
私は 東京へ行く。
漫画家になりたい人なんかいっぱいいる。
そんな競争の世界であんたが やっていける訳がない。
お母ちゃん漫画は競争の世界やない。
夢の世界や。
私は 夢の種を手に入れたんや。
♪~
♪「おはよう 世の中」
♪「夢を連れて 繰り返した」
♪「湯気には生活のメロディ」
♪「鶏の 歌声も」
♪「線路 風の話し声も」
♪「すべてはモノラルのメロディ」
♪「涙零れる音は」
♪「咲いた花がはじく雨音」
♪「悲しみに青空を」
♪「つづく日々の道の先を」
♪「塞ぐ影に」
♪「アイデアを」
♪「雨の音で歌を歌おう」
♪「すべて超えて届け」
♪~
(秋風)食堂だったか。 うまい訳だ。
(菱本)はい。片田舎の何の変哲もない小さな食堂でした。
しかし この味は本物です。私は もう これしか…ん? 何だっけ?五平□。
そう 五平□は これしか食べない。
サントールホールは LCブロック3列の9番しか座らないように…。
そう! 評論家たちは皆こぞって センターに座るがセンターは席が低めに設定されている
ので管楽器が天井に抜けてしまう。
弦楽器と管楽器のバランス直接音と間接音のバランス…。
先生 もう ホールの話はいいです。
先生 この五平□だけでなく楡野鈴愛さんが 本物だと 先生は思っていらっしゃるんです
か?
さあ… どうでしょうね。
さて しかし彼女は上京してきますか?
分かりかねます。強面のお母様がひと言も口を開かれませんでしたので。
人それぞれ気持ちがありますのでね。
それが この世の面白いところ。
(和子)フフフフッ…。
面白かった。
本当に?
スケッチブック破いて鉛筆で描いとる事に驚いたけどちゃ~んと漫画になっとるね。面白か
った。
ほうか…。鈴愛ちゃん すごいと思う。私は才能あると思う。
あと そんなふうに自分の意志がはっきりあるのってすばらしいと思う。え?
普通は もっと みんな臆病やよ。
この町から東京に出ていく女の子なんて いないもん。
心配なんや…。うん。
あの子 耳の事があるやろ。うん…。
中学生の時そこで 事故に遭ったやろ。うん。
自転車乗ってて後ろ 左の方から車来るの聞こえんから気付かんくて。
うん…。(晴)こうやってみんな和子さん知っとってくれて。
(和子)つきあい古いもん。
律君も知っとってくれて。
同じ日に生まれたもん。知らない日がない。
こんな優しいとこをあの子は離れて…。
どうやって生きてく?
ねえ 晴さん。
あ… また 金八先生みたいになったら どうしよう。
ああ… フフッ ええよ。
和子さんの金八先生 聞きたい。
(金八先生のモノマネで)このバカチンが。
(2人)フフフフッ。
私 思うんだけど耳の事があるからより心配なのは分かるけど鈴愛ちゃんには鈴愛ちゃん
の人生があってそいで 律には律の人生があって。
私たちはさ…。
子どもが SOSを出した時しかもう 立ち入っちゃいけないんかなあって。
だって もう あの子ら大人になってまった。
(晴)この前まで子どもやったのになあ…。
<親は立ち止まるばかりで子どもは先に進むばかりでうれしいような切ないような>
(仙吉)私は賛成だ。 行ったらいい。
(草太)えっ そうなの?うん。
この年になるとな 先が分かる。
先は分からんっていうのは最高に贅沢な気がする。
夢は見てるだけで贅沢や。
(宇太郎)かなわなくてもか?ああ。 その時間がいい。
夢みてる時間だけでも元取れるな。
草太は お前は どう思う?
えっ 俺 語らせてもらってもいいの? だったら 語るよ。
<そうです。草太は楡野家においてあの パンチのある姉に存在がかすみあまり自己主
張という事をしない子でした。まっ 言うても もともとおとなし~い 優しい いい子です>
俺は行くべきだと思う。
だってさ だってさじいちゃん 父ちゃん 考えてみて。
あの秋風羽織が タダで住む所も食べるものも提供してくれてそいで デビューまで面倒
見てくれる。姉ちゃんに実力があるかどうかやとは思うけど。
これは大チャンスじゃないの?いい話やないの?
宝くじに当たったようなもんだよ。
俺は…正直 よう分からん。
(まさこ)はい そば入り。マヨネーズ… あっ あったよね。
でも その宝くじ鈴愛ちゃん 自分で引いたよ。
人にもらったもんやない。(3人)ん?
この前の夜何するのかと思ったら秋風先生の名刺 出して…。(宇太郎)名刺…。
(まさこ)うん。 だ~いじに いつもポケットに入れとったらしくて電話しとった。
かわいそうにすぐには出てもらえんくて10分置きに電話して鈴愛ちゃん 手が震えとったよ
。緊張してたんやと思うわ。
♪~
(晴)あれあれ…。
どう? お母ちゃん すごいやろ?これが 鈴愛の左側の世界や。
耳ん中で こびとが踊る!
こんなの作るなんて すごい。
うん。
(襖が開く音)
あっ 何や おったか。
ウーちゃん。ん?
あの子は すごいのかもしれん。ううん?
私は あの子の漫画の事はよく分からんけどあの子 就職 何で落ちるか分かっとったっ
て言った。
そんでも 履歴書に本当の事 書いたって。
まっ 落ちたのがそのせいかどうかは分からんけどな。 本当のところは。
うん。 でも 私にはできん。
私には 不利な事は よう書かん。
私は あの子に負けたって思った。
うん…。
私のせいかな…。
私が あの子に スズメなんて名前付けたもんだから遠くに飛んでってまう…。
そ~んなに遠くには飛べないんやないの?
スズメやもん。
飛行機やないんやから。
♪~
えっ… 本当に?
うん。
お父ちゃんも?うん。 みんなで話した。
おじいちゃんも?うん。 いい話だと思うよ。
俺も賛成。 姉ちゃんの部屋と2つ使えるようになる。
寝室と勉強部屋 分ける。
やった~!
明日ね 農協にお詫びに行こう。あんた 一緒に農協行くんやよ。
うん。 あ…。
おじいちゃん 口利いてくれた…。
大丈夫や。 もう 話はしたから。
ありがと。 ごめんなさい。
そうと決まれば律に電話していい?
律 心配しとる。
何や お姉ちゃん 秋風先生とこに電話するんやなくてまずは 律にいちゃんとこか?
あ… そうか。
あっ でも 秋風先生は別に逃げない!
律にいちゃんも逃げんけどな。
うるせえ。イッタ!
♪~
おい…。
お母ちゃん。晴さん。
あんたは楽しいばっかりでいいね。
おかあちゃんは…おかあちゃんはさみしくてたまらん。
(晴)あんたは もう18かもしれんけどおかあちゃんの中には3つのあんたも5つのあんたも
13歳のあんたも全部いる。
まだ いる。
大人やもう大人やって言われても…。
(泣き声)
♪~
<どんなお説教よりどんなお叱りの言葉よりお母ちゃんの涙は鈴愛の心を突き刺しました
>