---------------------------

----H----025-----------
----a-----------------------------
----n-----------------------
----b-u-n-a-o-i--------------
-----------------------------------

---------------------------------------------------------------



＜秋風羽織の漫画には私の思ってる事がみんな描いてある！私は　世界が分かった！私

の中の何かが開いたような気がする＞
（晴）あんた受かったよ　農協！
（律）就職試験合格祝。
（秋風）また　作品の中でお会いしましょう。
これ…　差し入れです。
うっま！
すぐ　ロビーに出て少女を捜してきたまえ。
ああ…　さっきの。
楡野鈴愛です！
秋風羽織です。
萩尾　律です。
なぜ　君が名乗るんだ？
何となく。
♪～
♪「おはよう　世の中」
♪「夢を連れて　繰り返した」
♪「湯気には生活のメロディ」
♪「鶏の　歌声も」
♪「線路　風の話し声も」
♪「すべてはモノラルのメロディ」
♪「涙零れる音は」
♪「咲いた花がはじく雨音」
♪「悲しみに青空を」
♪「つづく日々の道の先を」
♪「塞ぐ影に」
♪「アイデアを」
♪「雨の音で歌を歌おう」
♪「すべて超えて響け」
♪「つづく日々を奏でる人へ」
♪「すべて超えて届け」
♪～
これ　とても　おいしかったです。
あっ　五平□といいます。
炊きたてのごはんを熱いうちに潰して串に　こう…　握ってつけてタレをつけてから炭火で

焼きます。
ほう…　これが五平□。うん　聞いた事はあった。
これは　どちらの？
あっ　うちで。えっ　すごいな。
おいしかったです。売れますよ　これ。
いや　そんなには売れない…。
いやいや　いやいやいや売ったらいいですよ。
えっ　もっと？
あっ　２人とも掛けて。
食べますか？（２人）いえいえ。
クルミが入ってるんですがそれ　一個一個　うちで潰すんです。
こんなんで。クルミ割り器。
ああ　クルミ…　いい仕事してる。
（菱本）どうぞ。ああ　すいません。
ありがとうございます。
あの　先生。先生は　やめて。
秋風さん。
写真撮ってもらってもいいですか？
ああ　どうぞ　どうぞ。
（小杉）では　まいりま～す！はい　五平□！
ありがとうございました写真まで。
（秋風）五平□　ありがとう。
これは　紛れもなく真実の五平□。
♪～
あの…　先生！
私　漫画描いてるんです！
あっ　今日　持ってきてるんです。
えっ…。
あの…一つ　質問してもいいですか？
はい。
あの　このギザギザは　もしかしてスケッチブックを破った？
はい。　最初は　スケッチブックを開いて描いてたんですが描く時に　こう　あたってしまって

邪魔なんで…。
画用紙に鉛筆で漫画が描いてある。
ベタは何で？ベタ？
（秋風）こう…　黒く塗り潰すところ。
あっ　それは筆ペンで。そこだけは奇跡的に合ってる。
漫画はね　インクで描くんだ。
Ｇペンとか　丸ペンとかケント紙とか知らない？
まるペン？
（秋風）律君だっけ？あっ　はい。　律です。
名字は萩尾ですが　どちらでも。
この人　バカなの？え？
だって　これ　トーンスクリーントーンみんな　手で描いてある。
スクリーン…　トーン？
これ　貼るの。　透明なシートに模様がついてて売っててそれ　カッターで切り抜いて貼る

の。
えっ…？
あ～　すいません。うち　田舎でして近所にスクリーントーンを売ってるような所はなくまあ　

本人が手で描くと思ってるんだったらそれでいいかとほっておきました。
あっ　君は少し賢い。
タジオ。タジオ？
（菱本）映画「ベニスに死す」に出てくる美少年です。
美しい少年は全て彼は　タジオと呼びます。
あと　これもう一つ　聞きたいのは漫画って　まず　ネームっつってまず　ストーリー考えて

シナリオみたいなの書いてコマ割りして　アタリつけて鉛筆で下描きしてそのあと　本番な

んですよ。
＜解説しますと　まず　ネーム。大体の下描き。そのあとに　鉛筆で下描き。そのあとに　

ペン入れ＞
＜このようになっております＞
知りませんでした…。
いきなり描くと思っとった。
君　漫画描くの初めて？
あっ　２作目です。まあ　１作目も　こんな感じで。
何も考えないで　いきなり本番。
はい。
＜こういう事です＞
天才？えっ？
あ…　秋風先生　大丈夫ですか？
あの　こいつが規格外すぎて何か　やられてません？
本当に天才かどうかは　この漫画が面白いかどうか…　かと。
タジオ　君は　やっぱり賢い。
東大受けます。タジオじゃないけど。ん？
あっ京大に格下げしたところです。
そう　それは　すばらしい。私は　美大中退だからな。
ところで　君　えっと…　名前は。
あっ　鈴愛です。　楡野鈴愛。
そう　楡野鈴愛さん。
私の弟子になりませんか？
なります。え？
♪～
なぜ　名古屋まで出て　結局　ここでお好み焼きを食べるのだ…。
作戦を立てるのだ。
ソウタ　センキチ　ウタロウ　ハル。
でもさ　お前　本気なの？
はい。　もう決めました。
すげえね。鈴愛って脳みそあんの？
失礼やな。　生まれた時から猿だと思っとるやろ。
あ…　もしくはセンキチ　ソウタ　ウタロウ　ハル。
いきなりじいちゃん行って大丈夫か？
じいちゃんには荷が重すぎないか？
いや　じいちゃんは年だから若干　ボケ気味だ。
冷静な判断ができないかもしれない。
そこを狙う。
このプロジェクトは説得の順番が鍵や。
まあ　でも　最大の難関は晴おばちゃんだよな。
晴おばちゃんが錯乱する事は間違いない。
錯乱！？激怒して錯乱やろ。
ほやな…。
でも　お前も　もう一回ちゃんと考えた方がいいよ。
本当に東京に行けるんか？秋風先生の弟子は　やれるんか？
あの人　明らかに変人や。
律　天才が変人なのは当たり前や！
それより　「いつもポケットにショパン」が出来上がるところを「おしゃべり階段」が出来上が

るところを横で見られるんやぞ。
「アンコールが３回」を描くところを。
「海の天辺」が作られるところを。すごい事や！
夢の世界が作られてくのを見られる！
私は　秋風先生の漫画で世界を知った！
世界が作られるのを見られる！
絶対に行く。　東京に行く！
先生の仕事を見る。
農協で野菜は売らん！
そして　やがて　私は自分の世界を描くんだ！
私は　漫画家になる！
えっ　いつ決まったの？
今　決めました。
何か　お前　すげえな。ん？
もう　アホなんか　天才なんか分からん。
あっ　これさ　ウルトラシーでうちの和子さん使うって手あるんやない？
おっ　それ　ナイスアイデアやな。
ワコ…。ワコ…。
＜私が生きていたら　何番目に説得されたんでしょうね…なんて。　フフッ。でも　鈴愛おば

あちゃんは賛成ですよ。なんとかなりますよ。だって　人生って一度きりしかないんだもん。

そんなに血湧き胸躍る事があったら飛び込んだらいいんですよ。あれ？　血湧き　肉躍る

か…？でも　胸躍るの方が感じよね＞
先生どういうおつもりなんですか？
岐阜行って猿一匹　拾ってくるなんて。
まさか　五平□目当てじゃ…。
ん？　まあ見てなさい。面白い事になりますよ。
＜しかし　鈴愛も人の子。結局　誰にも言いだせないままあの日から１週間が過ぎようとし

ていました。何せ　就職祝のあんなパーティーもやってもらった訳だし＞
＜でも　鈴愛のポケットにはいつも　お守りのように秋風羽織の名刺が入っておりました。

それは　鈴愛の夢の種です。いつでも電話すればそこにつながる＞
（菜生）スズ！
あっ…。（菜生）行こ。
うわ～　ええねえ。
（幸子）やっぱり　既製品と違うやろ？
・ただいま～！帰ってきた。
あっ　おばさん　いらっしゃい。
（晴）これ出来た。
ほら　あんた　着てみて。
うわ～　似合うわあ。
やっぱり　このウエストちょっと絞ってよかったねえ。
うん。　モデルがええもん。フフフフッ。
本当　鈴愛ちゃん　大人になったね。
美人さんやわ。　フフッ。
これで春から農協勤めるね。よかった　晴さん。
一安心や。　うん。あ～　似合うて。
お母ちゃん。
私　農協には勤めん。
ん？
私　農協には行かん。
何　言っとる？
明日にでも　農協行って内定取り消してもらう。
鈴愛は　東京に行く。
はあ？
そいで…。
それで　漫画家になる！
はあ！？