橋本健二氏(右)と河野龍太郎氏 Photo by Kazutoshi Sumitomo
「週刊ダイヤモンド」2018年4月7日号の第1特集は「1億総転落 新・階級社会」。7万部のベストセラーとなっている『新・日本の階級社会』(講談社現代新書)の著者である橋本健二・早稲田大学教授と気鋭のエコノミスト、河野龍太郎氏に、日本に階級社会が生まれた背景と階級社会がもたらす「不都合な未来」について徹底議論してもらった。「超人手不足」「就職氷河期世代」「日本人の横並び意識」が格差拡大をどう助長しているのか、社会学と経済学のアプローチで解説する。

【前提】
格差拡大の背景は?
「新・階級社会」の誕生

河野 現在は完全雇用なのに、格差問題がテーマの『新・日本の階級社会』がビジネスマンの多い東京・丸の内界隈で売れているのは象徴的なことだと思いますね。

 完全雇用で人手不足になった後も安倍政権が1億総活躍とか人づくり革命とか言い続けているのも、このまま働いても豊かになれないと思っている人が増えているのが背景にあるのではないかと。

 橋本先生は、格差拡大のスタートラインは、どこだという認識ですか。

橋本 起点は高度経済成長の終焉です。賃金の規模間格差、学歴間格差の拡大から始まり、1980年代からあらゆる格差が拡大してゆく。バブル後半になると、初めは正社員も非正規労働者も求人倍率が上がっていたのですが、正社員が上がらなくなって、非正規ばかりが上がるようになりました。

 87年にフリーターという言葉がはやり、新卒の若者たちが大量に流れ込みました。フリーター第1世代は50歳を超え、氷河期世代も40歳を超えてきたのが今です。