「8050問題」が話題になる中で、40~50歳代の長期高齢化した引きこもり状態の人たちの就労支援が急がれている(写真はイメージです)

長期間引きこもる人々を
社会復帰させられるか?

「8050問題」が話題になる中で、40~50歳代の長期高齢化した引きこもり状態の人たちにも寄り添い、就労につなげている支援者がいる。神奈川県海老名市などで高齢者福祉施設や児童施設などを運営している社会福祉法人「中心会」のユニバーサル就労支援事業担当、伊藤早苗氏だ。

 ユニバーサル就労支援とは、「働きたいけど働けずにいる人」を働けるようにサポートする仕組みのことを言う。以前、当連載の記事で紹介した「座間市の断らない相談支援」の連携先の1つだ。

 そもそも伊藤さんが就労支援を始めたのは、大手人材系企業で就職分野の営業マンをしていたとき、病気にかかり、しばらく寝たきり状態の生活を送ったのがきっかけだった。ようやく外に出られるようになったとき、働けないでいる人の支援もできたらいいなと考えた。

「私は営業ができるので、“企業開拓ができますよ”とPRしながら、押しかけるような感じで、役所を訪ねました」

 その後、相談は収益にならないので、企業にスポンサーに付いてもらい、CSR的な事業として持ちかけることを考えた。

 ユニバーサル就労支援という概念を始めた「生活クラブ風の村」の情報をネットで知り、理事長の元を訪ねて「神奈川県で始めたい」と相談した。そこでは「社会福祉法人の責務だと思う」とアドバイスされ、身近にあった社会福祉法人の1つ、中心会に「押しかける感じで」アイデアを提案。同会から施設を拠点として使わせてもらえることになり、2014年4月に中心会の職員に採用され、から活動を始めた。

 同会のユニバーサル就労支援の特徴は、年齢、障害の有無、働けない理由などは一切問わず、働きたいけど働けずにいる人すべてを対象にしていることだ。唯一の条件は、「本人が働きたいと思っているか」ということだけだ。

「風の村は、相談に来た方を法人で雇用することもできる。でも、小さな法人ではできないので、色々な企業を開拓して、理解してもらい、皆で少しずつ分担して受け入れましょうという独自のやり方を最初から想定していました」