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(てん)お願いします。
このまま もういっぺん読んでもらえまへんか。
人の気持ちを惑わそうとかお国に 盾つこうとかそんな気ぃは 一切 ございません。
この安兵衛と ほりの別れの場面僕は好きです。
「ともに過ごした時は短くとも堀部の娘 妻として生きられたは果報の極み」。
「この世で叶わずとも あの世にてまた 堀部の娘 妻として生きとうございます」。
「ほり 何も言わず赤い しごき帯を差し出す。安兵衛 それを勢いよくたすき掛けする」。
「一日も早い ご本懐お祈り申しております」。
「あい分かった」。
このあとの出陣 最高です。
「いざ出陣。目指すは怨敵 吉良上野介。雪の中 四十七士で ずっこける」。
何で ここで ずっこけるかなぁ。
かっこいいところなのに。
(笑い声)
(せきばらい)
だが 修正されない限り検閲保留を解く訳にはいきません。
何でです?
「この台本 面白い 好きや」言うてくれはりましたのに。
(工藤)あなたが関わる映画が日の目を見る事はありませんよ。
あなたは 国にとって自由主義的傾向がある要注意人物だ。
もしかしてこの映画に 伊能さん…伊能 栞が関わってるさかい検閲保留になるんですか?
そうなんですか?
♪~
♪「出かける時の忘れ物」
♪「ひょいとつかむ ハンカチのように」
♪「心の中に すべり込む」
♪「いちばん ちいさな魔法」
♪「泣いたり 笑ったり」
♪「今日も歩き出す」
♪「ありがとうと言いたいあなたのために」
♪「ごめんねと言えないあなたのために」
♪「パレードは まわり続けてる」
(トキ)お戻りになりました。
お帰りやす。お帰りやす。お帰りやす。
ただいま戻りました。
皆さん すんませんでした。勝手に 東京行ってしもうて。
(風太)まあ ほれ 座れ。
堪忍な。
で どうやったんや? 検閲は。
皆さん すんません。
ほんなら 言われた28か所全部 書き直さなアカンのか。
そうです。
書き直して再提出せえ言われました。
(キース)オモロイ本やのに もったいないわ。
(アサリ)書き直したないなぁ。
(栞)みんな すまない。
肝心な場面で 検閲が入ったのは恐らく 新世紀キネマに横やりを入れられたからだ。
何やと?新世紀て前に うちらのとこの芸人さん引き抜こうとした会社ですか?
今 日本国内の映画会社を次々に吸収していってる。
伊能フィルムが吸収されてしまったのは皆も知ってのとおりだ。
今度は 北村の映画を潰そうっちゅう事か。
その可能性がある。
だが 手はある。
映画 やれるんか?
今回に限っては手直しが必要だが邪魔さえ入らなければ通ってたはずなんだ。
僕らのやっている事の方向性は間違っていない。
そやな。 そのとおりや。
よっしゃ。みんな こっからが勝負や。
(一同)はい!もういっぺん気張り直しやな。
楓さん 検閲官に言われたところ全部 直して内務省へ送ってくれるか。
(楓)分かりました。
おてんさん 少し いいかな。
へえ。
僕のせいだ。
へ?
内務省に密告があったのは僕が この映画に関わっているからだ。
そして 僕がこの映画に関わっている以上検閲は通らない。そう言われたんじゃないか?
まさか。 そんな事ありまへん。
検閲官の人 この台本 面白いて言うてくれはりました。
直せば大丈夫やて言うてくれはりましたえ。
そうか。へえ。
僕が深読みし過ぎた。
フフッ。すまない。
戻ろうか。へえ。
(万丈目)何や これ。 えらいこっちゃ。
ごりょんさん これ。
何です?ひゃ。
「女太閤の北村てん社長金に ものを言わせ外国ショウに通天閣にと手を伸ばしついには 時局にそぐわぬ下劣なる恋愛映画に乗り出す」。
何です?こんな言いがかりみたいな記事。
こんな記事 忘れましょ。
そうですな。
仕事や 仕事。(風太)おお そのとおりや。
ほら 万丈目はん新しい漫才の台本 できたか?
もちろんですよ!オモロおまっせ。 読みまっか?
おう 持ってきて。(万丈目)へえ!
けれども世間の北村に対する風当たりはどんどん強まり…。
社長 社長! えらい事です!とにかく来て下さい!
ああ…。
・(騒ぐ声)
通天閣を売名に使うのはやめろ~!
(一同)やめろ~!下品な笑いは 即刻中止!
皆さん 落ち着いて下さい!
ほかのお客さんもいらっしゃいますさかい話なら どうぞ 奥で。あんさんが 社長さんですか?
へえ 社長の北村です。
ふ~ん。(風太)アカン アカン! イチ どけ!
おいおい ちょっ ちょっ…すんません すんません。
いや うちは 軍隊の慰問にもぎょうさん行かせてもろてます。
その通天閣も 大阪のためを思て買うたまでです。
そら 見上げたお心がけですけど。
それやったら このご時世政府や軍の指導を無視してまあ 男女のはしたない恋愛を扱うた映画…。
はしたない?どういう事です?
ホンマ いやらしいわぁ。いやらしい?
(風太)ギャーギャー ギャーギャー騒いではしたないのは どっちや こら!
すんまへん いやらしいてどの部分の事です?
うちの台本 お読みになって言うてはりますの?
いっぺん お読みになりますか?
そしたら 分かってもらえると思いますけど。
うちの映画はいやらしくもはしたなくもありまへん!
おい 奥で お話伺おか。
そうですな。 どうぞ こちらへ。
おトキ お通しせえ。へえ。
こちらです。行くで!
ほな 行こ!行こか!行きましょう!
えろう すんまへんでした。お騒がせしました。 どうぞ。
(四郎)何や お客さん ガラガラやったな。
(キース)ああ 俺らも昼席 冷え冷えやったわ。
(リリコ)あの新聞記事出てからあちこちである事ない事いろいろ言われてるからな。
(アサリ)通天閣買うんがそんなアカンの?
いや そやのうてだから あれも その…「北村が通天閣買うたあっぱれ 国民の鑑!」って書かれとったら お客さん満員になっとった思いますよ。
・(アサリ)そういうもんか?・(リリコ)世間なんてそんなもんや。 人の意見に流されるような奴ばっかりや。
・(四郎)せやな。・(アサリ)そういうもんか。
♪~
(藤吉)そうか。それは大変やったな。
愛と自由が好きやいうだけで目の敵にされるやなんて…おかしすぎます。
けど 俺と てんだけはずっと 栞君の味方や。
もちろんです。
でもな…。
自分が北村にいる限り北村の映画は日の目を見る事はない。
そう思てるかもしれんな。
うちが そうはさせまへん。
これまでは いつも 伊能さんに助けてもろてばっかりでした。
そやさかい 今度は うちの番です。
うちが 伊能さん 守ってみせます。
♪~